北海道新聞社説「肝炎和解案 先に財源ありきは違う」

 北海道新聞の社説が出ていました(以下に引用します)。
 長妻厚生労働大臣も、国会で、「財源ありきではない」と答弁していました。
 長妻厚生労働大臣が冷遇されているのは、解決へ向けた政府の姿勢が後退していることを示しているのではないでしょうか。
 細川厚生労働大臣菅首相は、「財源ありき」なのでしょうか。
 なお、西日本新聞の社説も、「B型肝炎和解案 財源ばかり言い募っては」として、同趣旨でした。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/203417
 また、琉球新報も、「B型肝炎訴訟 国は被害救済に手を尽くせ」という社説でした。国に解決へ向けて努力を求める内容です。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-168785-storytopic-11.html

北海道新聞の社説:
「肝炎和解案 先に財源ありきは違う(10月14日)

 B型肝炎北海道訴訟の和解協議で、被告の国側が補償金の具体額を示した。

 原告の患者・感染者が求めているのはC型肝炎患者対象の薬害肝炎救済法と同水準の補償だが、提示額はこれを大きく下回った。

 これまでも救済範囲などをめぐり原告と国側の意見は対立している。そこから見えるのは、原告の主張を受け入れれば、補償金は膨大な額になるとの国側の腰の引けた対応だ。

 国は今回、原告以外の患者を含めた補償金総額を試算し、国の案では2兆円、原告の主張通りだと8・2兆円が必要とした。

 これは原告へのけん制と言うほかない。財源について全く考慮しないわけにはいかないとしても、最初に財源ありきは筋違いである。

 被害者をしっかり救済することを最優先に考えるべきだ。

 国側が示した補償金は病状などに応じ500万〜2500万円だ。一方、原告側は救済法に沿い、1200万〜4千万円を求めている。

 B型肝炎問題の本質は、集団予防接種での注射器の使い回しでウイルスに感染する恐れがあることが早い時期に知られていたにもかかわらず、国が適切な措置を講じなかったために被害を招いたことである。

 薬害C型肝炎では非加熱の血液製剤の使用を国が漫然と認め続けたため、汚染された血液製剤の投与で感染が広がった。

 いずれも国が本来講じなければならない対策を怠ったことに原因がある。なぜ、補償金を薬害C型肝炎並みに設定しないのか。

 国はその理由を「B型肝炎は接種と感染との因果関係に相当程度の不確実性が伴う」としているが、原告の不信感を増大させるだけで、納得できる説明になっていない。

 桜井充財務副大臣は補償金について「予算を削減するか、増税を考えなくてはならないかもしれない」と述べた。この訴訟が国の財政を圧迫すると言わんばかりの発言だ。

 国に加害責任があることを認識していないのではないか。

 未発症のキャリアーの人たちを救済の対象から除外したことも問題だ。発症への恐怖や社会的差別など、計り知れない精神的苦痛を抱えていることを忘れないでほしい。

 接種の証明法について、国側は今回も母子手帳のほか、自治体の接種台帳や接種痕での確認を示した。

 しかし、道内だけでも台帳を一定期間保管している自治体は半数にとどまる。接種痕も人によっては消えている場合がある。すでに亡くなった人は確認のしようがない。

 国はこの問題を本当に解決する気があるのかと問いたい。」