毎日新聞の社説「肝炎対策基本法 B型肝炎も早期救済を」

今朝の毎日新聞(全国版)の社説で、肝炎対策基本法に関連した、B型肝炎の早期救済を求める意見が出されていました。
 「肝炎対策基本法が成立すると、全国B型肝炎訴訟は役目を終わるのですか?」という質問を受けることがあります。
 でも、それは違います。
 肝炎対策基本法は、治療費助成を目的とした法律です。対象は、国に法的責任を追及できる患者さんと、政治的責任しか追及できない患者さんを区別することなくウイルス性肝炎患者さん全体に適用されます。
 しかし、そのほかに、国に法的責任を追及できる患者さんたちの個別救済の課題があります。
 薬害C型肝炎の被害者である患者さんたちは、2008年の救済法と、その後の和解で解決していますが、予防接種禍B型肝炎の被害者である原告さんたちは、2008年の最高裁判決があるにもかかわらず、救済を受けていません。
 基本法が成立すれば、なおさらB型肝炎訴訟の早期解決の課題がクローズアップされる関係にあります。
 今朝の毎日新聞の社説は、このようなB型肝炎訴訟の個別救済の必要性が指摘され、さらに、基本法におけるB型肝炎対策(抗ウイルス薬が含められるべきこと)の課題を浮き彫りにするもので、たいへんすばらしいものです。
 このような理解が広がっていくことが、B型肝炎の被害者の早期解決への重要な手がかりになると思いますので、以下、引用いたします。

社説:肝炎対策基本法 B型肝炎も早期救済を
 子どものころに受けた予防接種でB型肝炎ウイルスに感染し、数十年後に突然発症する。慢性肝炎は肝硬変、さらに肝がんになることがある。自らの感染を知らずに出産時に子どもに感染させた人も少なくない。それがB型肝炎の悲劇である。
 感染者は全国に約140万人とされるが、その半数が予防接種など医療行為が原因といわれている。2割程度ではないかとの説もあるが、いずれにせよ数十万人規模の感染者が存在する。このうち通院して検査・治療を受けている人は7万〜8万人。注射器の使い回しは88年まで行われており、それまでに予防接種を受けた経験があれば誰が感染していてもおかしくないのだ。
 現在10地裁で計351人の感染者や遺族が国を相手に損害賠償請求訴訟を起こしている。94年までは予防接種は法律で義務づけられていた。それで感染したのだから国に責任があると主張するのは当然である。06年には最高裁が北海道の感染者5人に勝訴判決を出した。しかし、救済されたのはこの5人だけで、膨大な数の感染者はその後も置き去りにされたままだ。予防接種による感染だったと証明する事実認定のハードルが高いためである。
 同じウイルス性肝炎でも、血液製剤などが原因の薬害C型肝炎の場合は、08年に被害者救済法が成立し、高額なインターフェロン(IFN)治療の医療費助成も始まった。民主党マニフェストでIFN治療の自己負担の上限を月1万円にすることを盛り込み、今国会ではすべてのウイルス性肝炎を対象にした対策基本法を成立させる予定だ。国の責任を明記し、患者の経済負担軽減などを盛り込むことが検討されている。これまで放置されてきたB型肝炎も忘れないよう念を押しておきたい。
 段階的に症状が進むC型に対して、B型は自覚症状がないまま進行して突然発症する。定期的に医療機関へ通い、検査と抗ウイルス薬による治療を長年受けることになる。症状が進んで仕事を失い、経済的に困窮している人も少なくない。現実的な認定基準によって救済対象を広げるべきではないか。財源もないのに弱者に予算をばらまいているという民主党政権への批判も聞かれるが、抗ウイルス薬はIFNほど高額ではない。感染者数に比べて予算規模はそれほど大きくならないはずだ。
 そもそも国が責任を認めずに問題を先送りしてきた結果、感染者が拡大し医療費や生活支援などの経済負担も増大してきたのだ。早期検査・早期治療を実施することによって長期的にはコストを抑えることにつながる。有効な治療薬の開発とともに対策基本法に盛り込むべきだ。