ペットの医療過誤訴訟判決

2018年6月29日9:50、福岡地方裁判所で、ペットの医療過誤訴訟の判決が言い渡されました(2016年2月16日提訴)。
被告獣医師は、当時8歳の秋田犬「こっちゃん」が、2014年7月当時、子宮蓄膿症にかかっていたことを否定し、診察時にも子宮蓄膿症ではないことを検査で確認していたと主張していました。
 しかし、判決は、当時、子宮蓄膿症であったにもかかわらず、なすべき検査を尽くさなかったためにこれを見落としたという獣医師の責任を認めました。
そして、こっちゃんを死亡させた被害として、慰謝料40万円と救急治療費15万5952円、ペットの葬儀費用3万8000円の合計59万3952円(及び利息)の支払いを命じました。
飼い主である福岡市内在住の63歳の女性は、「子どもがなく、夫婦二人で我が子のようにかわいがってきた。5時間と離れたこともない。額には納得できないけれども、ようやく責任が認められてよかった。」と話しました。
 民法では、ペットは「モノ」扱いであり、生命が絶たれても、当然に慰謝料(精神的苦痛を埋めるもの)が請求できるとはいえません。長い間、せいぜい3万円程度の慰謝料しか認められませんでした。この10年くらいの間に、30万円以上の慰謝料が認められる事例も出るようになりましたが、それでも、十分とは言えません。
 命ある、かけがえのないペットを失った精神的苦痛として、せめて人のけがと同じくらいの重みが認められてもよいのではないかという問題提起を含めて、慰謝料130万円を請求しました。
 責任を認めたことは正当ですが、明治時代に制定されたままほとんど改訂されない民法の大きな構造(海外では、人と物の間に、動物や遺体から取り出した人体の組織などを中間項目として独立の保護対象とするところが多い)と、ペットの飼い主の心情に生じた大きな隙間を埋めるには、まだまだ時間がかかりそうです。

 当日の日経新聞・読売新聞の夕刊、NHK,KBCの夕方のニュースで取り上げられました。
 翌日の西日本新聞朝日新聞毎日新聞の朝刊で取り上げられました。
 さらに、7/20,27合併号の週刊ポストでも取り上げられました。