B型肝炎訴訟で、「国が命の値段に差」

2010年10月12日13:30から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 国は、和解金額について、以下の基準を示しました。
「キャリア:0
 慢性肝炎:500万円
 肝硬変(軽症):1000万円
 肝硬変(重症)・肝ガン・死亡:2500万円」
 これは、薬害C型肝炎訴訟の被害者と大きく差をつけたものです
(C肝はキャリア:1200万円、慢性肝炎2000万円、肝硬変・肝ガン・死亡4000万円)。
 この金額設定に当たって、(1)薬害肝炎訴訟等と比較して、因果関係が不確実であるとか、(2)平成18年最高裁判決の水準をふまえるべきだとしています。
 しかしながら、(1)因果関係が確実であることは、すでに平成18年最高裁判決で明らかになっているのであって、全く理由になりません。
 国の主張は、文字通り読むと「因果関係が不確実な人にも最大2500万円は支払う」かのようにも見えますが、あり得ません。国は、原告らが皆被害者であることは十分承知していながら、賠償額を削ろうと躍起になっているだけです。
 また、(2)平成18年最高裁判決の水準をふまえるべきだとしていますが、最高裁判決は、キャリアに対しても550万円の損害賠償請求を認めているのに、国はこれを0円としており、自ら全く従っていません。
 さらに、国は今回、国の基準でも、最大1.5兆円かかるとか、原告の主張に従うと最大8兆円かかるなどという主張を新たに行いました。
 しかし、その根拠は全く示されていません。
 示せるかどうかは、これから検討するそうです。
 加害者として、あまりにも無責任な態度ではないでしょうか。
 他方で、国は、回しうち被害者が、最大44万人になる可能性があるとも言っています。
 このような数字は、C型肝炎の解決に2兆円かかるといって抵抗した厚生労働官僚の主張と全く同じです。C型肝炎の解決には、実際は300億円しかかかりません。無駄な空港を作るときと同じように、過大な需要予測をして、政治家を脅かし、政治決着をためらわせ、過去長年国民に被害を与え続けてきた先輩官僚をかばい続けるのが、この国の官僚の仕事です。
国は、国民の理解を得る必要があるといって、過大な数字を出して賠償額を削ろうとしています。
 本当に、回しうち被害者がキャリアだけで44万人いるのなら、国は、ただちに国民に、特に44万人の被害者に謝罪すべきであり、その前提で、解決のための説明を国民に対して行うべきです。
 しかし、国は、説明をする予定はなく、国会で質問されたら、そのときにでも説明するかもしれない、と人ごとのような答弁をしました。
被害者の総数についての根拠資料も出さず、ただ、「解決には莫大な財源が必要だ」とだけ言い続ける国の態度に、立ち会った原告の方たちは、まるで自分たちがお荷物であるかのような、いたたまれない思いになっていたそうです。
 国は、いまだに「和解金」の検討をしているだけで、「賠償金」ではないという答弁も行っています。立ち会っている原告には聞かせたくない一幕でした。加害者という自覚もなく和解期日は続いています。

 北海道訴訟原告代表の高橋朋巳さんは、「私たち被害者と面談もしていないのに何が決められるのか。根拠の分からない数字だ。国の態度に進展が感じられない。」と訴えました。
 北海道訴訟原告の清本太一さんは、「この問題の解決で増税をはかるというのであれば、まず厚生労働省の役人が、給料を削れ。」と訴えました。
全国原告団代表の谷口三枝子さんは、「今日の和解のやりとりでは、どちらが加害者か分からないような説明を受けた。思わず立ち上がって意見を言いたくなった。」と述べました。
東京訴訟原告代表の岡田京子さんは、「国は、まず国民に謝罪せよ。ということを言い続けるしかない。国は、真剣に検討しているように感じられない。速やかに真剣な検討をお願いしたい。」と述べました。
 大阪訴訟原告代表の久永信行さんは、「和解期日が近づかないと、政府は関係閣僚が集まらないし、検討をしない。病気で苦しんでいる人をさらに苦しめているだけだ。国民に理解を求める必要があるといっているが、国民にいったい何を説明したのか。財源と認定基準について自分の都合のいいことだけ言って、なぜB型肝炎感染被害者がいるのか、国が何をしたせいで被害が起こっているのかはいっさい説明しない。調査すらしないまま、44万人という数字だけを説明した。」と述べました。