ペットの医療過誤提訴

2016年2月16日14:00、福岡地方裁判所に、ペットの医療過誤訴訟を提起しました。
 原告(福岡市内在住の60代の女性)は、秋田犬(メス、当時8歳、愛称は「こっちゃん」)を家族同様に育てて、市内の動物病院に通院させてきました。
こっちゃんは、2014年5月、6月に出血があり、受診しましたが、特に異常はないと言われました。
 7月18日にも出血があったため通院させたところ、「エコー検査の結果、異常はないが、繰り返すようなら手術も検討する、その場合は10万円未満である」とだけいわれて帰りました。
7月28日、こっちゃんが嘔吐し、腹痛がある様子だったので電話をしましたが、連絡が取れず、7月29日未明、救急動物病院を受診させたところ、子宮蓄膿症、細菌性腹膜炎との診断で卵巣・子宮摘出術を受けました。急いで救命措置を受けましたが、その甲斐なく死亡しました。
死亡した結果から振り返って考えると、7月18日の時点で、子宮蓄膿症を発症していたので、検査で見落とさずに手術がなされていれば死亡していませんでした。
 また、5月のエコーでは、液体貯留が描出されており、その位置関係等から子宮内液体貯留を意味していました。そのため、出血所見と合わせて考えると、子宮蓄膿症と判断でき、適切に手術がなされていれば死亡していませんでした。
こっちゃんは、血統書付きの秋田犬で入賞歴もあり、町内のアイドル犬としてフリーペーパーに掲載され、ペットモデルクラブにも所属していました。
 子どものいない原告にとって、こっちゃんは子ども同然であり、常に生活の中心であり、笑顔と元気の源でした。
 原告は、2ヶ月ほど引きこもり状態になりました。救急病院で、おなかの激痛にうめきながら、原告の腕の中で息絶えた最後の姿が目に焼き付いて、胸が張り裂けそうな悲しみに襲われました。
 健康で一日でも長生きしてほしい、それだけを願い、動物病院に8年間通い続けました。
家族同然であった生命を奪われた被害及びその精神的苦痛として130万円、その他治療代等を含め180万円を請求しています。
 民法では、ペットは「モノ」扱いであり、生命が絶たれても、当然に慰謝料(精神的苦痛を埋めるもの)が請求できるとはいえません。長い間、せいぜい3万円程度の慰謝料しか認められませんでした。この10年くらいの間に、30万円以上の慰謝料が認められる事例も出るようになりましたが、それでも、十分とは言えません。例えば、交通事故で人がけがをしたときには、慰謝料だけで100万円以上支払われることもよくあります(通院5ヶ月を要した場合、判決なら原則として105万円)。
 命ある、かけがえのないペットを失った精神的苦痛として、せめて人のけがと同じくらいの重みが認められてもよいのではないかという問題提起を含んだ裁判です。