総務省へのパブリック・コメント

 今日締め切りだった、総務省へのパブリックコメントを、9名の弁護士有志(いずれも日弁連情報問題対策委員会委員)で提出しました。
 届いているか確認したところ、担当者の方は「厳しいご意見・・・なんでしょうね。」とおっしゃっていました。
 以下の内容です。

意見書
             
                           2009年7月28日
総務省総合通信基盤局
電気通信事業部消費者行政課 御中


「利用者視点をふまえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言に関し、別紙の通り意見を提出します。
(別紙)
第1 意見の要旨
 1 事実の調査が不十分であるため、誤りがある。また、サービス提供者に不利益
な事実が記載されていない。
 多角的な検討が可能となるよう、慎重に再調査がなされるべきである。
2 検討内容が妥当性を欠いている。
  (1) 道路周辺映像サービスのメリットについて、収集・利用におけるメリット
(地方行政サービスへの利用)が、公表のメリットにすり替えられており、明らかな誤りである。
  (2) 個人情報保護法に違反している。
    個人情報保護法18条1項、23条2項に違反している。
    電気通信事業個人情報保護ガイドラインに違反している。
  (3) プライバシー権侵害の検討が不十分である。
  (4) 肖像権侵害の程度は、従来の裁判例では、全く前例の存在しない未曾有の
大量・網羅的な肖像等の収集及び世界中への公表であり、比較衡量上、これを上回るメリットが存在するとはとうてい言えない。
 従って、民事上違法である。
  (5) プライバシー保護、個人情報保護のための第三者機関が必要不可欠である。
地図検索システムと連動させ、公表することを前提として、公道などの公
共の場所において一定数以上の多数の人物の肖像や家屋等を網羅的に撮影しようとするものは、事前に第三者機関の承認を求めることとし、このような申請を受けた第三者機関は、プライバシー影響評価手続きを実施し、制約されるプライバシー権の大きさよりも、撮影・公表行為の公益性の方が大きいことを事前に調査することとすべきである。
 総務省自身があたかも公正な第三者であるかのように判断することは妥当でない。
 3 提言を公表するための手続きにおいて、「サービス提供者」及び「利用者」と
いう推進側の意見に偏し、「利用される名もない多くの市民」の意見を聞かないのは偏っていて、公正中立性に反している。

第2 意見
1 調査の不十分さについて
 (1) ロケーションビューについて
 第一次提言(案)(以下、「提言案」という)2ページのロケーションビューの項では、同サービスが、「平成19年10月より、法人へのデータベースの提供と実験としての会員制ウェブサイトでの一般公開という2通りの形式でサービスを提供してきた」と記載され、その後もこれを前提とした検討がなされている。
 しかしながら、同サービスは、開始後一般に利用が公開されていた。これが会員制となったのは、2008年末からのことであるから、前提事実が異なっている。
 検討対象となっているサービスの概要自体が事実と異なっているような調査は明らかに不十分である。従って、そのような不十分な調査に基づく提言案には説得力が欠けている。十分な調査が尽くされるべきである。
(2) 欧州委員会について
 提言案6ページでは、欧州委員会の項目において、検討中との説明しか付されていない。
 しかしながら、2008年5月には、EUデータ保護監察官(EU Data Protection Supervisor)が、ストリートビューサービスが、EUデータ保護指令に反する可能性があるとの見解(Google StreetView Might Breach EU Laws)を公表した。
 グーグル社や、WGにとっては不都合な事実かも知れないが、これを記載しないのは公正さを疑われる。
2 検討内容が妥当性を欠く点について
  (1) 道路周辺映像サービスのメリットについて
 提言案8ページでは、道路周辺映像サービスのメリットとして4点を挙げている。
 しかしながら、これらの中には、明らかに適切でないものが含まれている。
 ?の「インフラの施設管理(マンホール、電線、電柱の管理)」と、?「消防救急・防災その他地方行政サービス(水道、道路管理、下水道管理)については、映像を公開することなく達成できるメリットである。
 すなわち、これらは、ロケーションビュー社が、わが国の自治体から個別に委託を受け、上記の行政目的のために自治体中の画像を収集し、自治体に提供し、その提供を受けた自治体が、これらの行政目的のために使用したという実績をもとにした説明がなされていると考えられる。
 収集・利用目的のすべてについて正当性があるかどうか不明だが、これを認めたとしても、このような行政目的の達成のためには、画像を収集し、自治体が取得すること、それを自治体が内部において利用することで十分である。
 ところが、ロケーションビュー社は、これらの画像を、個別の市民の同意なしに、勝手にインターネット上で公開してしまった。これは、自治体の行政目的達成とは全く無関係であり、何ら行政目的に貢献する余地がない。むしろ、自治体から委託を受けた目的外の個人情報の漏洩、もしくは故意による流出と見るべき問題である。
このような、行政目的と無関係のプライバシー情報の漏洩を、あたかも正当な行政目的での利用であるかのように整理している当該箇所は、デメリットをメリットと錯覚させる記載であり、明らかに不相当である。
 直ちに訂正されるべきである。
 なお、その他のメリットは、わずかなものに過ぎず、制約されるプライバシー権との比較衡量上優越するものとはとうてい評価できない。
 また、提言案16ページにおいても、公開の目的・意義としてこれらの地方行政のための利用が掲げられているが、公開とは全く無関係であり、何らメリットと評価し得ないことが肝に銘じられるべきである。
(2) 個人情報保護法との関係について
   ア 「個人情報」該当性について
 個人情報保護法においては、個人情報の、収集、管理、利用、提供等の各場面において、個人情報を適正に取り扱うことが求められている。
 インターネット地図情報サービスにおいても、これらの各過程ごとの検討が不可欠である。
 ところが、提言案においては、冒頭において「道路周辺映像サービスにおいて公開されているものは、」という言葉から唐突に検討が始まっており、公開される前の、画像の収集過程の検討がすっぽりと欠落している。
 公開の過程で顔をぼかすとしても、収集の過程においては、解像度の高いレンズで識別可能な顔の情報を収集しているのである。この場合、後で利用の場面においてぼかしを入れるからと言って、最初の収集の場面においてさかのぼって個人情報でなかったことになるはずがない。
 そもそも個人情報の収集過程が適正かどうか(個人情報保護法17条)の検討がなされるべきであるのに、これを無視するのは明らかに相当性を欠く。
 そして、本件において、収集されている人物の画像等が識別可能であって、個人情報に該当することは否定のしようのないことである。
 これを原則として該当しないというのは、明らかに間違っている。
イ 「個人情報データベース等」該当性について
 提言案は、これを否定しているが、相当ではない。
 たとえば、住所について、○○丁目○○番○○号まで入力して検索をし、特定の個人の居宅を検索することが容易になされるサービスが存在する。
 このような場合、特定の個人情報である、居宅情報が検索されうるのであるから、「個人情報データベース等」に該当すると言うべきである。
ウ 18条1項違反
上記の通り、本件において取得されている肖像等は、個人情報である。
個人情報保護法は、個人情報を取得した場合に、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、または公表することを義務づけている(18条1項)。
しかるに、本件において、グーグル社は、個人情報を取得した場合における、利用目的の公表を十分に行っているといえるかについては、撮影・公表時点においてプライバシーポリシーにすら書き込まれていないのであるから履行されていない。従って、個人情報保護法18条1項に反している。
株式会社ロケーションビューについても、プライバシーポリシーにおいて、当該事業に使用する旨の告知を定めたのは、画像公開がなされた2007年10月よりあとの2007年12月18日であり、公開行為より撮影行為の方がさらに先行していることを考えると、当初の撮影部分については、速やかな公表とはなっていないものと考えられる。従って、その部分に関しては、少なくとも個人情報保護法18条1項に反している。
ウォークスルービデオシステムについても、現時点においても、撮影・公表行為をプライバシーポリシーに記載していないから、個人情報保護法18条1項に違反している。
   エ 23条2項違反
また、個人情報保護法は、本人の同意なく個人データを第三者提供する行為につき、一定の条件をもとに認めている(ただし、プライバシー情報に関しては、形式的にこの手続きを履行していたとしても、不法行為が成立する)。
それは、本人の求めに応じて個人データの第三者提供を停止する手続き(オプトアウト)が保障されていることであり、具体的には、(ア)第三者提供すること、(イ)第三者に提供される個人データの種類、(ウ)提供の手段または方法、(エ)本人の求めに応じて第三者提供を停止すること、の4点をあらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知りうる状態に置く場合である(個人情報保護法23条2項)。
本件では、グーグル社は、さまざまな画像情報を自社のホームページ上で公表することや、その公表行為を停止することができることについて、事前に広報を行わないまま、データの収集と公表を行っている。
従って、個人情報保護法23条2項に違反している。
また、株式会社ロケーションビューについても、ホームページ上での公表行為を第三者提供ととらえていないためか、公開を停止することを容易に知りうる状態に置いていないことはもとより、画像の削除請求に対してすら説得の上で事実上拒否している。
従って、個人情報保護法23条2項に違反している疑いがある。
さらに、ウォークスルービデオシステムも、同様に公開を停止することを容易に知りうる状態に置いていない上、画像の削除請求に応じていないので、個人情報保護法23条2項に違反している疑いがある。
 オ オプトアウトの限界
しかも、仮にこれらの点が今後仮に改善されたとしても、情報主体が公表行為の停止を求めることが困難な場合が考えられ、その実効性は十分とは言えない。
例えば、インターネットを利用しない高齢者その他の情報弱者は、自らの画像が公表されていることにすら気づかない可能性が大きく、停止請求権を行使することが困難である。また、インターネットを利用するものであっても、地図上に公表されている画像につき、地域ごとの撮影日時が知らされなければ、自分の画像が写りこんでいないか、十分にチェックして停止請求権を行使することは著しく困難である。
さらには、いったん公開されたデータにつき、利用者が自分の独自の方法で利用する仕組みを完成してしまった場合(例えば、不動産会社が、自社の営業目的で画像を包括的に2次利用した場合など)、誰に対してどのような停止請求を行うべきなのか、その手がかりすらつかめない仕組みになっている。
このような、情報主体がデータの取扱につきコントロールすることが極めて困難なほど広範な第三者提供がなされる行為が、単純にオプトアウトの手続きをしさえすれば適法といえるかには疑問もある。
カ 電気通信事業個人情報保護ガイドライン
 提言案に指摘されているとおり、電気通信事業個人情報保護ガイドラインが遵守されるべきである。
 その中で、6条1項に、「利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱わないこと」という項目がある。ストリートビューサービスや、ロケーションビューサービスは、明らかにこれに反している。
 先に指摘したロケーションビュー社の、自治体からの委託に基づき取得した自治体中の映像を、いったん自治体に納入し、自治体がそれに基づいて地方行政のために利用したものと同じ情報を、地方行政目的の達成と無関係に、インターネット上に公開していることは、6条1項違反であることが明らかである。
 ストリートビューサービスも、「遠隔地の町並みを散歩してみる」という便益のためであれば、個々人の要望や姿態が写り込んでいる必要はなく、公表される必要もないから、必要な範囲を超えて個人情報を取り扱っており、6条1項違反である。
 利用目的の通知・公表(8条1項)、プライバシーポリシーの公表と遵守(14条)、公開に本人の同意を得るかまたはオプトアウトの要件を満たすこと(15条2項)については、すでに指摘したとおり違反している。
  (3) プライバシー権侵害の検討について
提言案16ページにおいて、プライバシー権侵害の検討が行われているが、この箇所においては、サービスに関連する、どのようなプライバシー情報を検討の対象にするのかが不明確なまま突然検討が開始されている上、検討の途中でぼかしを入れるなどの修正策を自ら提示しているため、結局、現在のサービスにおいてプライバシー権侵害の程度がどの程度のものであるか、あるいはそのため、比較衡量上違法なのか適法なのか、という結論が示されていない。
また、数万人の顔情報、あるいは数万の住居情報を一気に収集するという場面のプライバシー侵害の程度の検討、これをさらに世界中にインターネットを通じて一気に公表するという場面におけるプライバシー侵害の程度の検討が慎重に行われるべきである。
 本来、提言案においてもっとも詳細に検討がなされるべき当該箇所は、極めて簡潔であり、検討の途中から修正提案を自ら行う形態となっており、冷静な第三者として公正中立に検討を行った形跡は見あたらない。
 慎重に検討すれば、少なくとも収集過程において違法である疑いがあること、及び公表の場面において違法であることが指摘されるはずである。
  (4) 肖像権侵害の検討について
 提言案18ページにおいて、「関係裁判例によれば、公道上において普通の服装・態度でいる人間の姿を撮影・公開することは受忍限度内として肖像権侵害が否定されることが多い・・・肖像権侵害を肯定した事例においては、特定の個人に焦点を当ててその容貌を大写ししていることなどの事情が重視されており、公共の場の情景を流して撮影したに過ぎないような場合には肖像権侵害は否定されるという方向性を示唆しているものがある。」として、これのみを唯一の基準として検討を開始している。
 そして、意図的に人の容貌を収集しているわけでもなく、意図的に人の容貌を公開しているわけではないからといって、受忍限度を超える肖像権侵害はないという。
 しかしながら、これらの判断は、その基準自体も、またあてはめ方も妥当性を欠いている。
 本件における画像の収集行為は、数万人というおびただしい人物の肖像と、数万という住居情報を、網羅的に対象にしている点において、未曾有のプライバシー侵害行為である。
 提言案が前提としている裁判例は、一人の女性をとらえた事件の肖像権侵害を前提としたものであり、かつ、たった一人の女性の肖像権侵害によって、インターネット上の公開という行為を、違法と判断したものである。
 本件のように、おびただしい数万人の肖像を根こそぎ、網羅的に収集し、一気に世界中にインターネットを通じて公開する行為は、従来の裁判例では前例の全く存在しない行為である。
 しかも、情報収集の対象となっている人物や地域については、一般人の感覚からしてとられたくないと考えられる場所(住宅街その他の、人が密かに撮影され、その情報を公開されることに不安・不快の念を覚える場所)を排除しない、根こそぎの網羅的なものである。
 それ自体が、サービスの目的達成のために必要不可欠とは考えられず、また、サービスの有益性と比較して、これら肖像権の侵害を甘受しなければならない事情を見いだすことは困難である。
 従って、このような網羅的・大量の肖像等の情報を本人の同意無く世界中に公開することは違法であり、かつ、そのような違法な行為を行う前提として、ぼかしのない人の肖像等を網羅的に収集する行為も、メリットとのバランスを欠く行為として違法と言うべきである。
  (5) 第三者機関の設置について
   ア 第三者機関の必要性
提言案22ページには、海外で設置されているプライバシー問題を専門に取り扱う機関を設けることは困難であるとされている。
 しかしながら、プライバシー保護と他の対立利益を考量する利益衡量の必要性自体は、何人といえども否定できないところであろう。現状においては、高度の技術革新の結果、従来では想像もできなかったほど大規模な個人情報の収集、保存、利用(インターネットを通じた公表を含む)が可能となっている。
 たとえばおびただしい数の人の肖像や、おびただしい数の家屋の情報を収集するような行為は、現在においては極めて容易である。しかしながら、これらの行為が、真に収集対象となっているもののプライバシー権を上回る必要性があるかどうかについての検討がなされているとは限らない。そのような利益衡量の欠如が、本件の問題の核心と思料されるのである。
 利益衡量をも含めた個人情報保護法に違反する疑いのある行為を調査し、監督、是正命令などを出すことのできる第三者機関が必要であることは、日本弁護士連合会が再三にわたって指摘した問題点である。
アメリカと日本以外のほとんどの先進国(EU加盟国、カナダ、オーストラリア、スイスなど)において設置されている、個人情報保護に関する第三者機関(データコミッショナー、データ保護監察官など)による、個人情報保護の違法・不当な利用に対する実効的監督が欠けている点は、個人情報保護法、個人情報保護条例の改正により解決されるべきである。
また、本件のように、地図検索システムと連動することを前提とし、公道などの公共の場所において大量の人の肖像や家屋情報を収集する場合においては、制約されるプライバシー権を上回る収集の公的必要性が存在するかどうか、事前に検討されるべきである。
従って、個人情報保護法、個人情報保護条例に、地図検索システムと連動することを前提とし、公道などの公共の場所において一定数以上の多数の人物の肖像や家屋を撮影する場合には、事前に第三者機関の承認を求めることとし、このような申請を受けた第三者機関は、プライバシー影響評価手続きを実施し、制約されるプライバシー権の大きさよりも、撮影行為の公益性の方が大きいことを事前に調査すべきである。
プライバシーに対する影響が大きい行為について、事前に導入の是非を調査する手続きは、EUでは第三者機関が事実上運用において確保している。
また、プライバシー影響評価という独立した手続きを定めている国として、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、香港が存在し、わが国同様第三者機関の存在しないアメリカにおいても、電子政府法でPIA(Privacy Impact Assessment=プライバシー影響評価)が採用されている。
三者機関の設置・運用が必要であることは言うまでもないが、少なくともこのような利益衡量のための審査手続きが確保されるべきである。
イ 総務省が判断すべき問題ではないこと
なお、提言案22ページには、「プライバシー等について効果的な助言・勧告をする機能を持つことも考え方としてあり得る。」との記載があるが、対応する主語が存在しない。
 かりに、この提言案をまとめる総務省自身が、プライバシー等の助言勧告をする意欲を示しているというのであれば、失当である。
 アメリカと日本以外において、なぜプライバシー保護機関が行政から中立なのかという点についての検討が適切に行われるべきである。
 それは、行政の都合によって、プライバシー侵害の認定が恣意的に流される危険性があるからこそ、独立性、中立性が必要なのである。
 わが国においては、国の優先課題としての産業育成、産業界との癒着、行政効率その他の政策目的のために、多くの人々の生命・健康・人生が奪われてきた。これに対する国の責任が裁判所によって断罪された事例は数え切れないくらい存在する(水俣病、スモン、HIV、薬害肝炎、予防接種禍、B型肝炎など)。
 当該事務を取り扱う主務官庁が、人権侵害の有無を判定しても、人権は救済され得ない。むしろ、人権と対立する国の政策を優先させ、行政機関が人権を自ら侵害してきたというのが正しい歴史である。
 本件は、未曾有のプライバシー侵害事件であるが、インターネット上の情報通信技術という、産業育成のためにこれから開かれる技術を取り扱うため、行政官庁においては、当該産業育成に重点を置きすぎる危険があり、本提言案は、まさにそれが現実化しているものといえる。今後の当該産業界との癒着も懸念される。
 司法のような公正中立な機関に判断をゆだねることが望ましいが、機動性に欠けるため、準司法的機関として、第三者機関を設置することが必要不可欠である。
 EU等の諸外国においても、第三者機関の長には、プライバシー、個人情報保護に関する専門家としての研究者や裁判官等が就任しており、その判断は社会で高く評価されている。
 行政機関が、自ら司法判断者のように振る舞うことは極めて危険である。
 そもそも、このWGの構成を考えると、行政機関の判断としても、その前提としての適正手続きや公正中立性の観念が欠如している。
2 利用される市民の意見が聞かれていないことについて
 提言案3ページでは、「2.国内の反応」との表題のもと、ストリートビューサービスに対する批判的な意見を発した地方議会の意見書等が紹介されているが、これらはいずれも「道路周辺映像サービスへの反応」とするにとどまっており、なぜこのような批判的な意見が集まっているのかに対する慎重な検討がなされている気配がない。
 そもそも、この提言案をまとめたとされる「インターネット地図情報サービスWG」には、地方議会等から批判の的となっている当該サービスを実施している主体であるグーグル株式会社の担当者や、同種サービスを提供している電気通信事業者等が参加している。
 仮に、総務省がこれらのサービスに含まれる問題点を指摘する多数の地方議会等の意見に耳を傾け、慎重にこれを検討しようとするのであれば、そもそも当事者をメンバーに加えられるはずがない。このような行為は、問題点の検討を行うに際しての公正中立性に反していることは明らかである。当事者の判断を持って、当事者の行為の適否を決する見解を総務省が対外的に公表することは、行政の公正中立性に反し違法の疑いがある。
 このWGで、批判的な見解のものの意見を聴取したり、慎重に検討していないことは明らかであり、少なくともそのように疑われる手続きで結論が出されるべきではない。
以 上