民事訴訟手続協議会

 17:15から、民事訴訟手続協議会が行われました。 
昨年の法曹協議会(福岡地高裁、福岡地高検、福岡県弁護士会、福岡拘置所、福岡刑務所などの法律関係団体の協議会)で、弁護士会員から問題提起がなされた、個人情報保護法の解釈等に関する問題提起を受けた検討結果について協議が行われました。
 民事訴訟手続協議会とは、福岡地裁と福岡県弁護士会が、民事訴訟手続きが円滑に運用されるために、さまざまな論点について意見交換を行う会議です。
 個人情報保護法の施行後、裁判所が民事訴訟で行う証拠調べとしての、調査嘱託、文書送付嘱託という、真相解明に必要な資料の収集手続きに対して、資料を保有している相手方が調査に応じなかったり、弁護士会が行う調査手続きとしての弁護士会照会に対して、相手方が回答を拒絶する事例が増えています。
いずれも、個人情報保護法の誤解に基づく過剰反応が大半を占めていると思われます。
 福岡地裁から前澤判事が、最決平19.12.11(金融機関は、裁判所が出した文書提出命令に対し、顧客が応答義務を負う情報を、自らの守秘義務を理由として拒むことができないとした)の趣旨が、調査嘱託や文書送付嘱託の場合にも及びうることについて緻密なご報告がなされました。
 福岡県弁護士会からは、私が、日弁連情報問題対策委員として、弁護士会照会は、個人情報保護法23条1項1号にいう、「法令に基づく場合」に当然に該当すること、ただし、その場合であっても、不法行為が成立する可能性は否定できないが、原則としては照会に応じる義務があるのであり、例外としてこれを拒否する正当な利益があるかという場面において、照会に応じないでおくべき情報主体の利益と、照会に応じて得られる利益を比較考量し、前者が上回る場合にのみ拒絶が正当化される、という、大阪高判昭51.12.21(前科照会事件控訴審判決)の基準に従うべきことを発表しました。
 また、照会に応じるか否かの現場担当者の判断材料として、弁護士や当事者に対し、回答の対象となっている情報よりもっと秘密にすべき必要性の高いプライバシー情報(これ自体、弁護士の守秘義務が及ぶ情報です)を提出するように求められる事例が散見されるけれども、本末転倒であり、昨年の戸籍法改正の際にも、自治体の担当者から、「仮に弁護士の請求が適切などうか(例えば、その弁護士の依頼者が、本当にヤミ金被害にあっているのか否かという具体的事実関係など)について、添付資料を基に判断せよと現場に求められても、請求の適正性の判断が困難であるし、膨大な事務処理のための能力も時間的余裕もない。」との意見が多数寄せられていることから、現場で判断できる、一般的抽象的な比較考量(例えば、ヤミ金の振込先口座の開設者が、自分が誰なのかを人に知られたくない利益VSヤミ金被害者が、加害者を特定して被害回復を受けたい利益)だけですませるべきこと、それは、判断材料としての証拠資料を十分に持っており、権利の比較という法律判断の専門的知見を有する法律関係の専門機関の自律的判断が尊重されるべきであることから理論的にも正当であることなどを個人の見解として述べました。
 現場の担当者の方々は苦慮されているものと思いますが、日弁連が2006年12月16日に研修で述べたとおり、顧問弁護士が、自らの顧問企業に対し、法の趣旨を徹底し、不当な回答拒絶は、対立当事者の財産権を守るべき権利や、裁判を受ける権利を実質的に侵害し、泣き寝入りを迫る危険があること、そのような相手方の不利益を超えて保護すべき情報主体の利益があるかどうかを謙虚に比較考量すべきであると指導することが求められていると思います。
 顧問弁護士は、企業の社会的責任を全うさせる責務、コンプライアンス遵守に向けた責務があることはもはや否定できないものと思われます。