県庁へのパブリック・コメントの提出

 福岡県が、防犯カメラの運用要項を定め、3月2日までパブリック・コメントを募集していると言うことを2月27日に人から聞いて、何とかしなければと思い、データを県庁のホームページからダウンロードして、所定の書式に打ち込んで、パブリック・コメントを提出することにしました。
 パブリック・コメントというのは、主に国の省庁が、新しい法案や制度を検討して意見を出す際に、内部の検討会での一応の結論や方向性を公表し、一般市民の意見を求める手続きのことです。
 現在、新しい法案が次々に準備され、次々にパブリック・コメントの募集と締め切りがくるため、日弁連はこれへの対応に四苦八苦しています。
 福岡県がパブリック・コメントを求めることがあるというのは知らなかったのですが、せっかくなので、資料を県庁に持参して、意見を述べてきました。
 福岡県の防犯カメラ運用要項は、防犯カメラが役に立つという前提で、その設置を促進しようというものです。
 しかしながら、役に立つ根拠としてあげられていたのは、県民アンケートの結果だけであり、「みんながそう思っているから」役に立つというのは、非科学的で、客観性が欠如しているという批判をしました。
 全国に400万台の監視カメラがあるイギリスでも、全体としては、ほとんど犯罪は減っていないという内務省の調査結果が示されています。
 また、商店街や、民間の店舗等が、警察の要請さえあれば次々にフリーハンドで画像を提供してよいかのような規定だったので、令状主義の観点からもっと慎重でなければならないと指摘しました。
 担当者3名には40分も時間をかけてもらいました。私のことは九弁連シンポなどの関係で知っておられたようで、冒頭に「お待ちしておりました。」と言われました。
 全体の印象としては、防犯カメラをつけようという動機にされている、小中学生が通学中に犯罪に巻き込まれる不安ということについては、マスコミがあおりすぎなのではないか、本当に不安で不安で仕方がないと思っているわけではないという感触でした。ただし、憲法刑事訴訟法が、捜査の必要性を重視して、警察を信頼している制度ではないことについては、警察を信頼して、どんどん活動をしてもらったらいいのではないか、いったい何が悪いのだろうか、という感触でした。
 志布志事件や富山のえん罪事件なども話したり、戦前に拷問が合法だったことなども話しましたが、得心はできないという感じでした。
 令状主義や、公権力への警戒が近代民主国家の前提だということ(でなければ、3権を分立させる必要もない)は、いまはとても分かりにくい話になっているなあと思います。
 憲法が、何のためにあるのか、誰のためにあるのか、なぜその根幹を守らなければならないのか、という部分が、全く根付いていないように思います。これは、少なくとも、良識のある法律の研究者と弁護士が、今後フル回転して議論を巻き起こしていくべき課題だと思います。