唐津市が、防犯カメラの画像提供覚書調印

今朝の西日本新聞朝刊に、「防犯カメラの画像提供 唐津市 警察署と異例の覚書」と題して、以下の記事が書かれています。
 記事によれば、唐津市は、市民の情報を警察に提供することを完全な善であり、全く問題がないことのように受け止めているように見えます。
 しかしながら、市民のプライバシーを保護することも、自治体の義務として求められています。このような考え方があれば、警察への情報提供についても、警察の乱用を防止するための慎重な手続きが確保されることが望ましいと言えます。現に、EU諸国であれば、単に警察から求められたと言うだけの理由で自治体が情報を提供することは違法になる可能性が高いでしょう(裁判所の令状に基づいて提供するなどの適正な手続きにより、プライバシー侵害よりも捜査の必要性の方が上回ることを十分チェックする必要がある)。
 自治体も、住民との関係では公権力なのであり、みずから積極的に情報を警察に集中することが善とは言えません。むしろ提供に対しての警戒心、自制心を持って、自らチェックしようとつとめることが必要です。
しかし、このような場合、捜査を秘密に行う必要性から、警察が、具体的な犯罪の嫌疑等に関する説明を、自治体(商店街も同じ)に行うことは考えられません。むしろ、逆の意味でのプライバシー侵害(被疑者側)があり得るからです。
 結局、このような場合、資料提供を求めることができ、しかも人権の調整を図ることは、裁判所がもっとも適しています。
 唐津市の対応は、野放図な市民情報の提供が懸念されます。
 以下、記事を引用します。

 ”佐賀県唐津市唐津署は2日、同市が設置している防犯カメラの画像データの提供に関する覚書に調印した。事件や事故があった際の捜査協力が目的。市が定めた管理運用要綱に基づき運用するが、市民のプライバシー侵害につながることを懸念する声もある。
 同市によると、市所有の防犯カメラはJR唐津駅や同駅駐輪場、フェリーターミナルなど14施設に計53台。これまで同署から画像データ提供の依頼はなかったという。
 覚書に合わせ、市が1月26日に定めた「防犯カメラの管理及び運用に関する要綱」は、(1)防犯カメラが設置されていることをカメラの近くに明示する(2)画像の保存期間は1カ月以内とする(3)画像提供は捜査機関から求められたときに限る‐ことなどを規定している。
 岩瀬常幸署長は「迅速な捜査につながり、犯罪抑止も期待できる」と話し、坂井俊之市長は「警察の捜査に協力することで、安全安心の町づくりを進めたい」と述べた。
 防犯カメラの法的問題に詳しい武藤糾明弁護士(福岡市)は「自治体と警察が画像データの提供で覚書を交わすのは全国的に珍しい」とした上で、「カメラに監視される住民のことを考えていない。市民のプライバシーを守る意識が欠けている」と指摘している。”