精神保健当番弁護士と医師の過剰反応

 精神保健当番弁護士で、聴き取りを行った際、主治医の過剰反応に会いました。
 精神保健当番弁護士というのは、精神科に、本人の意に反して入院させられている患者さんの相談に応じて、退院請求や処遇改善を求める援助を行うための相談を行う仕組みです。
 もともと、要請の後すぐに病院に電話をしたところ、職員の方から、「主治医からも聴き取りをしたいのなら、主治医と都合を合わせてほしい」と言われていました。しかし、何度電話しても「診察中で、いつ終わるか分からない」といわれ、アポイントが取れませんでした。
 そうこうしているうちに、少し時間がたってしまったので、アポイントはついに取れないまま、主治医がいる時間に調査に行きました。
 本人からの聴き取りを終えた後に、「事前に伝えていたとおり、主治医の先生から話をお聞きしたい」といったところ、またまた「今診察中で、いつ終わるか分からない」といわれました。少しは待っていたのですが、全く何の保障もないので、らちがあかないと思い、「院長と面会したい。この病院はこの制度のことを知らないのか、それとも知っていて協力を拒否する方針なのかを質したい。」というと、まもなく主治医が現れました。
 すると、結局、「患者の情報を第三者に教えていいかどうか分からなかったから、応答しなかった。」といい、これまでのアポイントへの対応と、当日の訪問への対応の真相を明らかにしました。
 私は、なぜそう直接質問しなかったのだろうかと内心あきれながら、個人情報保護の原則の第一歩目は、本人がそのような情報の利用に同意するか、という点にあり、本件は本人が弁護士に対する説明を積極的に求めているのだから、当然に同意しており、個人情報保護法違反や、守秘義務違反も生じるはずがないことを説明しました。
 この医師は、聴き取りを行われることが初めてであり、とまどっていたという要素もあったようでした。
 弁護士の公的な調査でもこのような過剰反応があるので、一般的にはたいへんな混乱があるのではないかと思われました。
 また、医師・患者の関係が、変なパターナリズム(父親が子どもを守ってやるように、子どもには何も情報を与えずに、子どもにためになることを、父親が決めてやると行った、家父長制的保護主義)を引きずっているのだなあ、と思い、どっと疲れる調査でした。