住基ネット長崎講演

 18:30から、長崎市内で、「いやバイ住基ネット」という市民団体のお招きで、住基ネットの問題点と、大阪高裁判決の意義について講演しました。
 私は、最近は、住基ネットや監視社会の講演を頼まれることが多いのですが、必ず憲法改正の問題点を取り上げることにしています。
 それは、住基ネットも、国民が主人公の国から、国家が主人公の国に変える仕組みの一つだからです。
 民主主義が行われている近代国家では、国民が主人公で、国家は、その幸福を達成するためのしもべにすぎないので、国家が国民の幸福をそっちのけで税金の無駄遣いをし、談合をして、関連業者と一緒に懐を肥やしたりしないよう、主人公である国民が、権力を監視する制度がとられています。
 住基ネットは、逆に、国家が国民の上に立って、主人公として振る舞い、国民を監視し、国家の意に添わない国民をあぶり出す仕組みとしか考えられません。
 東京都は、教員に対し、日の丸君が代を強制する意向を明白にし、この、「意に添わない」教師を懲戒し、その考え方を改めるよう生活を脅かしてまで強制しています。すでに、公権力の一部である自治体の中に、国民より上に立って、国民の嫌がる行動を強制するところが出てきているわけです。
 ただし、このような東京都の処分に対しては、一部の裁判所は、憲法違反で無効だと判断しています。
 憲法を改正すれば、裁判所がこのような判決を書くことはほとんど期待できなくなるでしょう。
 それは、自民党が作成している「新憲法草案」は、国民よりも、公益(その最たるものは、国家の利益に他ならないでしょう)を尊重する国家を目指すことを明らかにしているからです(憲法13条の改正)。
 自民党の予定通りに憲法改正がなされれば、裁判所も、国民よりも国家の意向を尊重せざるを得なくなり、ほとんど、国家や自治体の行為を違法とすることはなくなってしまうでしょう。
 大阪高裁判決は、国民が主人公であることを認めた、その意味では当たり前の判決ですが、たいへん貴重な判決であり、まさに現行憲法の賜物と言うべき、世界に誇れる名判決なのです。
 憲法13条が改正されると二度と見ることができない、絶滅寸前の名判決なのです。