「行政及び民間等で利用される顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」について

 日本弁護士連合会は、表記の意見書を本年9月16日に承認し、翌日関係機関に発送しました。https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2021/210916.html
  日弁連は、2012年1月19日に「監視カメラに関する法的規制に関する意見書」で監視カメラに関する法律による規制の必要性、とりわけ官民を問わず、顔画像から生成されたデータベースとの自動照合による個人識別機能(顔認証システム)を使用することの禁止を提言しました。2016年9月15日には、「顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」を公表し、警察が顔認証システムを実用化したことに対して、重大組織犯罪の捜査等に限定するなどの内容の法律を制定して、コントロールする必要があると提言しました。
 しかし、その後も、コンサートチケットの転売防止目的や、店舗の万引き防止目的での導入が民間で普及し、行政機関においても活用され始めています。
 指紋の1000倍という認証精度を持つようになった顔認証データによる効率的な監視は、ひとたび誤れば特定人の過去から将来までの行動検索を可能とし、著しいプライバシー侵害となり得ます。
 少なくとも、警察以外の行政機関も、民間等でも、その利用には明文の法律による要件や基準の事前明示が必要であることを提言しました。また、①現在も活用が広がっている警察による顔認証捜査や、②顔認証システムの利用を前提とした、個人番号カードの健康保険証としての利用の中止、③個人番号カードを健康保険証、運転免許証等とひも付けることにより、さらに顔認証システムの利用範囲を拡大させることの中止を提言しました。
 JR東日本による、指名手配犯、「不審者」等に対する顔認証システム運用の報道と相まって、社会の関心が高まっています。
 欧米の民主主義国家と、「人権」や「法の支配」の価値観を共有し、国際協調を計れるよう、民主主義国家であればどんな国でも必ずなされている、市民に対する人権侵害を伴う行政機関(特に警察)の権力行使は、主権者の代表者が慎重に議論して決めた「法律」に従って行われるべきだというルール(=法治国家。その法内容が、人権制限が必要最小限度になる内実を備えていることを求める概念が「法の支配」)を守ることが必要です。
 行政機関が、自分の裁量で、自由自在に科学技術を行使して国民の監視ができる国家は、到底民主主義国家とはいえません。