マングースと防犯カメラ

 2012年2月2日付の西日本新聞朝刊に、「マングース北上」「薩摩川内で確認、本土2カ所目」「生息域が拡大?駆除振り出しに」との見出しで、本土では根絶できたと思われていた害獣のマングースの生息が確認され、駆除が振り出しに戻ったと報道されています(過去の同新聞のキーワードでも以下の解説が付いていました)。
 マングースは、当初は、人間に害をなすハブを駆除する「益獣」となることを期待され、人間の勝手な都合で本来生息していない生態系に放たれた生き物です。
 私も、奄美大島でハブとマングースのショーを見たことがありますが、「過去にマングースからかみ殺された経験のない、うぶなハブ」は、「毎日毎日、嫌と言うほどショーでハブをかみ殺しているマングース」にびっくりするほどあっけなくかみ殺され、あっという間にショーは終了しました。
 この局面だけを見ると、いかにもマングースを野に放つと、ハブが駆除されそうに思います。
 しかし、その後のマングースの糞の分析結果から、マングースは、自然状態ではハブを襲わないで、こともあろうか、特別天然記念物ヤンバルクイナアマミノクロウサギなどを襲って生活していることが分かっています。よく考えてみたら、たとえ数%でも、逆襲にあって死ぬかもしれない危険なハブを狙い続けるほど、マングースも無鉄砲ではなかったようです。
 「保安官だと思って野に放ったら、実は強盗だった」ので、現在は逆に駆除される立場にいるわけです。
 街頭防犯カメラも、まさに同じです。
 「カメラで検挙された」と言う事例を聞くと、反射的に「防犯カメラは有効に決まっている」と感じてしまいます。
 しかし、カメラで犯罪が減ることはなく、犯罪の場所が移動するだけだった(地理的移転)ということが、平成22年の警察庁のJR川崎駅前の実験で判明しています(設置地区で減った分の10%は、周辺地区への増加として現れたため、周辺地区からすればカメラのせいで犯罪が増えたことになり、トータルの効果としては、警察庁としても「悪影響」しかなかったとまとめました。「警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会・最終とりまとめ」http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki8/7th_siryou_2.pdf)。
 「犯罪を減らせる」という科学的根拠のない思いこみだけで、町並みをカメラだらけにしても、カメラのおかげで犯罪が減るという期待は実現せず、単に、外での行動が誰でも顔情報を用いた検索機能で検索可能と言う自由のない社会(誰もが平田容疑者を検索できる社会)が実現するおそれがあります。
税金を投入して町中にくまなく防犯カメラを設置したあとに、「効果がなかった」から、撤去し続けなければならないのでは残念です。警察庁自身が効果がなかったと発表している今、本当にカメラが有益なものかどうか、科学的根拠に基づいて考えましょう。

マングース
 環境省によると、マングースは毒蛇ハブの駆除名目で1910年にインドから沖縄に持ち込まれ、奄美大島にも早いものは49年に米軍が持ち込んだ。奄美大島では79年以降に定着したとされる。マングースは中東からジャワ島まで広く分布、成獣は体長35センチ前後。肉食で生態系に悪影響を及ぼす「特定外来生物」に指定されている。自然界でハブを襲うことはなく、沖縄ではヤンバルクイナ奄美大島ではアマミノクロウサギなどの希少動物を捕食している。」