B型肝炎訴訟で、国が被害者を切り捨て

2010年9月1日10:30から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 国は、裁判所から和解案の全体像を早急に出すよう求められたことを受け、上申書を持参しました。
 しかし、その内容は、被害者を切り捨て、救済額を明示しない不当なものでした。
まず、最高裁でも償いを求められたキャリアに対する救済を否定しました。
 その理由は、予防接種等から20年以上たっているからという除斥期間(時効のような制度)があるからだと言っています。
 しかし、先行訴訟が起こされた後、20年以上国が徹底して自分の責任逃れに終始し、そのため、被害者は、自分のB型肝炎感染が国のせいだと言うことが分からないまま時間が経過しました。ここで、国が除斥期間を主張することは、「ゴネ得」「逃げ得」以外の何者でもありません。
 次に、賠償額については、具体的に示しませんでした。
最高裁判決をふまえた合理的な水準」と言っていますが、最高裁判決は、キャリアの被害者と、慢性肝炎の被害者の共通被害である、持続感染したことに対する慰謝料を500万円と認定しているだけです。それをふまえて慢性肝炎、肝硬変・肝ガン、死亡被害者に対してどういう賠償額を提示するのかは最後まで明らかになりませんでした。
 さらに、予防接種を打ったかどうかについては、母子手帳がない場合は、予防接種台帳か、接種痕と医師の意見書の組み合わせなどの証拠が必要だと言ってきました。
 しかし、予防接種台帳がほとんど残っていないことは国も承知のことであり、接種痕が残るのは、多数の予防接種の中で、わずかに種痘とBCGだけであり、しかも、これを受けていても、本人の体質によっては消えてしまうこともあります。
 偶然消えてしまった人を切り捨てるという、不合理なもので、とうてい誠実な案とは言えません。
 国は、非公開の和解協議の場で、「インターネット調査の結果、40代以上のかたの8割、40才未満の方の4割ないし5割に接種痕がある」「打っていても消えることはあるが、消えた人は証拠がないことになる」「死亡した人の場合は確認できないと言われればそれはそうだが、考えていなかった」など、加害者の代表として誠実に対応しているとはとうてい考えがたい発言を繰り返しました。
 全国原告団代表の谷口三枝子さんは、「キャリアの方も同じ苦しみ、つらい思いを持っている。これから発症する可能性もある。家族も苦しむことになる。キャリアの切り捨ては断じて許されない。」と訴えました。また、「接種痕を求める基準がでるとは思いもよらなかった。いっそのこと、焼きごてで烙印を押してもらえれば良かった。60年前の証拠で烙印を求められるとは思っていなかった。」と国の不合理な主張を批判しました。
次回9月15日は、14:00から弁論、14:30から和解協議となり、次回までに、原告は、今日までに示された国の考えに対する意見を提出し、国は、説明できるもの、提出できるものを提出することとなりました。