国、発症後20年の肝炎被害者を切り捨て

 2011年2月24日13:30から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 国は、原告が、裁判所の和解所見を受け入れる前提条件とした発症後20年を経過した慢性肝炎患者を、差別なく取り扱う一律救済について、これを明確に否定する方針を明らかにしました。
国は、概要、以下のように主張しました。
「発症後20年経過した肝炎患者に対しては、除斥期間の経過により、法的責任は消滅していることを前提とした対応しかできない。
 和解金として、キャリアに対する額(50万円)を基準とすべきである。
 キャリアに対しては、検査費用の公費負担と、検査の際の年額3万円の給付金を予定しているが、肝炎患者に対しては、肝炎対策基本法ですでに抗ウイルス薬の助成をしているので、それ以上の対応はしない。一般対策としてしか取り扱えない。被害者としては取り扱えない。」
 これは、発症後20年経過した肝炎患者に対して、キャリア被害者以下の対応しかしないことを明言したものであり、非常識と言わざるを得ません。
また、国は、謝罪を速やかに行う姿勢は示しませんでした。以下のように述べました。
「謝罪については、基本合意書の時に決めればよいから、今提案したりする必要はない」
訟務検事は、肝炎対策基本法に基づく抗ウイルス薬助成の法的位置づけをよく分かっていない模様で、当初は、「発症後20年経過した肝炎患者も、被害者(だが、責任が消滅している)という前提で和解金を出すのだ。」と説明していましたが、弁護団から、「肝炎対策基本法は、国の責任に基づく被害者であることを前提にしていない一般対策だから、それで十分だというのであれば、被害者とは認めないと言うことではないのか。」と追求されると、「そういうことだ。」と居直りました。
 国は、今回、キャリアに対しては、除斥期間を経過したものだという前提だと言うことを公言しましたが、キャリア被害者に対しては、検査費用実費と、年額3万円の給付金を政策対応として予定しています。そして、向こう30年間で総額200万円〜250万円の受益になると宣伝していました。
 他方、肝炎被害者に対しては、このような被害者対応としての政策対応を全く考慮していません。
 「一般恒久対策をしているからいらない」というアドバイスは、厚生労働省がしたのかもしれませんが、法務省として、キャリア被害者との整合性は十分検討できていないのではないでしょうか。
 国は、父子感染の除外検査として求めている塩基配列検査による鑑別方法、判断基準についてすら資料提出はおろか、説明すらできていませんが、和解条件に関する検討は、和解勧告からすでに1年経過しようとしているのに、ずさんそのものです。
 謝罪する気もなければ、自分の加害行為に向き合って、被害者に誠実に対応しようという気持ちはかけらもありません。心ない国の対応にがっかりします。