グーグルマップからの情報流出について

 今日の朝刊で、グーグルマップからの情報流出が報道されていました。
 福岡の市立中学校で、昨年と今年の4月に、別の2名の教師が家庭訪問用に作成した、ネット上に保存できるオリジナルの地図に生徒の情報を書き込んだところ、登録の際に「限定公開(非公開)」を選ばなかったため、登録情報、つまり自分の受け持つクラスの生徒の名前と自宅などの情報が公表されたと言うことです。
 さっそく、グーグルマップにアクセスしてみたところ、確かに、「マイマップ」という機能があり、自分で好きな地点を登録して、書き込みができるようです。
 作成した自分の地図に名前を付けることができ、その下に「プライバシー設定」という項目があり、「一般公開 -- 検索結果や自分のプロフィールにこの地図が表示されます。URL (アドレス) を知らなくても、検索結果などから地図にアクセスできます。」という項目と、「限定公開 (URL で共有)」という項目があります。
 プライバシー設定の横には、「詳細」というリンクがあり、そこをクリックすると、公開と非公開が選択できるという説明がなされていますが、逆に言えば、そこをクリックしないと、インターネットに詳しくない人は、十分意味が理解できないまま、公開を選択してしまう危険があります。
 もちろん、グーグルマップやマイマップの仕組みを十分に理解しないまま公開した人の落ち度が大きいわけですが、「一般公開」の記載事項を読んだだけで、はたして全員がその意味を理解できるでしょうか。少なくとも、グーグルの説明は、自分が登録した情報が世界中に発信されてしまうのかどうかと言う、個人情報の流出の瀬戸際の重大な選択を迫っているということを感じさせない、さりげない注意のしかたと言わざるを得ません。
 私は医療過誤訴訟を担当していますが、製薬メーカーの能書(使用上の注意書き)の厳密さに比べると、本当に、利用者に対して「気をつけて下さい」という気持ちがあるのか大いに疑問です。
 広くインターネットに詳しくない人にも利用してもらおうという戦略である以上、詳しくない人にも分かりやすい説明が求められます。うがった見方をすれば、うっかり流出することも、ある程度のパーセンテージで期待しているかのような、「不注意な注意書き」です。
 グーグルのストリートビューは、日本のプライバシー権に関する裁判例を慎重に検討したとはとうてい思えない見切り発車ですが、マップの方も、個人情報とかプライバシーに対する理解が希薄だと言わざるを得ません。
 グーグルの主張する利便性の前に沈黙してあきらめることなく、プライバシーの観点が欠如していること、利用者に対する配慮が不十分であることの問題点を指摘していかなければならないと思います。