福岡県弁護士会憲法講座

 午後2時から、天神121ビルにおいて、福岡県弁護士会主催の憲法講座が開かれました。
 「女性と憲法」というテーマ設定のためか、女性の参加者が多く見られ、いつもよりも参加者の年齢が若めでした。
 私自身は、護憲派ですが、ディベートのため、「改憲側」として議論をしました。
 レジュメは主に以下の内容です。
 私自身は、このような考え方には反対ですが、それなりに説得力があると思われる方も多かったようです。
 現在の自民党の改正試案には明示されていませんが、いつ復活するか分かりません。
 ポイントは、社会規範の低下という社会の問題は存在するが、それは憲法のせいではないこと、現状改善の施策として、問題の原因を分析しないまま、ムードに任せて憲法に八つ当たりをすることは非科学的であり、結局国民が被害を受けるだけだ、という点にあります。
 国民の被害とは、他の憲法の論点とも関連しますが、個人よりも社会や国家を優先するべきだという国の利益に合致した国民づくりに走ってしまうと言うことです。
 憲法13条の個人主義とは、個人の命よりも国家の方が大事だから、いったん有事になったら国のために命を犠牲にすることをいとうな、という全体主義を否定することに眼目があり、決して、自分のことだけを優先して、他人を犠牲にしろ、という考え方ではありません。従って、仮に誤解があるとすれば憲法の誤解をただして、正しい憲法の中身を教えればすむだけの話であり、間違っていない憲法を変えてしまえば、間違ったことになるだけです。
1 <現状分析>
・ 社会規範の低下(社会道徳の低下、教育現場の混乱)
子どもが、大人が、社会の目を気にしない(電車・バスでの行動)。
   学校の先生が子どもの友達になってしまった。
   子どもを叱ってくれる大人、地域共同体がなくなった。
   家庭でのしつけも不十分である。
  →少なくとも、家族という単位での社会秩序の回復から始めなければならない。
・ 家族の現状(凶悪犯罪の多発、社会道徳の低下)
子による親殺し事件、親による子殺し事件が頻発している。
父親が不在である。いても威厳がない。
   働き手を尊重する家庭でなければならない。
   女性や子どもが守られる家庭でもなければならない。
・ 扶養、相続(社会道徳の低下)
   高齢の親を扶養しなければならないという意識が崩壊している。
相続のあり方が悪平等であり、全く面倒を見ない子どもと、親身に面倒を見る子どもが平等に相続する。
 ・ 少子化対策(社会道徳の低下)
   少子化には、個人の利益を優先する考え方にも問題がある。
   国が家庭を保護するという姿勢も示しておく必要がある。
   食育や、よい生活の仕方の再構築を国がバックアップする必要がある。
2 <憲法制定過程>
・ 徹底的な個人主義に準じるものとしての家族の位置づけ。
 ・ GHQは、家族、コミュニティー、共同体を壊したかった。
3 <改善策>
・ 行きすぎた個人主義をいさめ、歯止めをかけるために、国民に、家庭を保護する責務を課すべきである。
 ・ 国が家庭を保護することも明示すべきである。
4 改憲側の結論
 顕在化している社会問題を解決するために、社会の基礎としての家族・家庭の重要性を再認識し、家族における相互扶助、家庭教育等の家族・家庭が果たしてきた機能を再構築する必要がある。そのためには、前文や各条項において、家族・家庭の尊重及び保護を明記することが必要である。
衆議院憲法調査会「最終報告」2005.4.15)