秘密保護法と共謀罪を考えるシンポ

 2014年5月31日14:00から、天神ビル9号会議室で、福岡県弁護士会主催のシンポジウム「その会話で逮捕されます!−秘密保護法と共謀罪を考える−」が開催されました。

 三浦邦俊福岡県弁護士会会長のあいさつで、秘密の範囲が大きく広がっている、しかも厳罰が処せられる、という秘密保護法の問題点の大枠が示されるとともに、公安警察の活動領域が広がる危険性にも言及されました。
 基調報告「秘密保護法・共謀罪に対する弁護士会の取り組み」で、近藤恭典弁護士から、この間の弁護士会の活動が報告されました。共謀罪の問題点や、過去3回の廃案の経過、日弁連共謀罪対策本部を設置したことなどが報告され、共謀罪についても、秘密保護法反対運動の実績と反省を活かすため、法案提出よりも前に、問題点が議論されることをめざすと指摘されました。

 基調講演「あるべき情報公開と秘密保護法」で、清水勉弁護士が以下のように述べられました。
 秘密保護法には立法事実がない。第1条の目的規定では、何が目的か不明で、各条文の解釈基準としても機能しない。公的情報の管理について、あるべき姿は客観的な管理ルールを作ることと、守ること、それをチェックすることにつきるのに、この法律は穴があって(漏えいのみを問題にして改ざんや消滅を無視)人を監視する適性評価ではあるべき対策ともいえない。「特定有害活動」「テロリズム」がいずれもあいまいで、このような概念で処罰の対象にすることはご都合主義だ。
 秘密が増えれば増えるほど仕事がしやすくなると思っている人たちがいるが、情報が共有化できず、仕事は増えてやりにくくなる。秘密指定は最小限にしなければならない。指定期間も最小化しなければならない。秘密が増えると管理がしにくくなり、漏えいのリスクが高くなり、防止のためのコストも高くなる。

続いて行われたパネルディスカッションで、九州大学豊崎七絵准教授は、「特定秘密保護法が適用された場合の刑事訴訟における問題点(外形立証など)」について以下のように報告されました。
 特定秘密保護法には、共謀、独立教唆、煽動が処罰される。特に共謀や独立教唆は会話だけで成立する。密告者やスパイが奨励され(26条の必要的減刑免除)、電話や会話のやりとりの盗聴が進むおそれがある。このことは、市民運動への切り崩しに悪用されかねない。
 捜査が始まると、逮捕・勾留状、捜索差し押さえ令状には秘密の中身は記載されず、被疑者・弁護人はその提供を受けないまま防御・弁護に当たらなければならない。
 起訴状が明確でなければ起訴自体が無効である。
 外形立証とは、検察官が、漏えいされた情報の内容を明らかにせず、秘密文書の作成方法や指定の手続きなどを立証することで、その情報の秘匿の必要性(実質的秘密性)を立証したことにできる方法で、この場合被告人・弁護人は、秘密の内容が明らかでないまま、実質的秘密性に関する反証を求められることになる。これは、被告人が秘密の内容を知らない場合、憲法31条の適正手続保障に反する。被告人が秘密の内容を知っている場合、憲法37条の公開裁判を受ける権利、憲法82条の公開原則に抵触する可能性がある。
 秘密の内容を知ろうとする被告人・弁護人の活動自体が、特定取得行為や漏えいの教唆などとして捜査、処罰の対象となりうる。そうならないための理論化が必要である。
 自民党憲法改正草案9条の2、5項「国防軍に審判所を置く」という規定と、76条2項で特別裁判所の禁止規定が存置されている点が気になる。
 学会では、行政盗聴の問題点なども検討されている。

パネリストの西日本新聞東京支社の坂本信博記者は、以下のような意見を述べられました。
政府が秘密保全法制を検討してきた経過の文書を情報公開請求したら、ほとんどが黒塗りだったり、存在しなかったりだ。個人情報保護法の施行で行政情報が出にくくなった。よりいっそう情報が出なくなるのではないか。秘密保護法の審議の頃の首相会見時に、質問者の指名がなされていて、幹事社以外は見解の近いメディアが当てられがちに思える。取材がしにくくなるとしたら問題だ。
2013年11月8日の衆議院国家安全保障特別委員会で、尖閣諸島周辺で、有事でも平時でもない「グレーゾーン」と呼ばれる事態が起きた場合、自衛隊が収集した現地の情勢などが特定秘密の対象となるかという質問に対し、担当者は、「該当する可能性はある」と回答している。これでは、質問者が指摘しているように、大本営発表の再来にならないか。
 共謀罪集団的自衛権なども、現政権が目指す国の形に向けた動きとして警戒していきたい。

 約110名が参加しました。
 パネルディスカッションの途中で、清水弁護士から、沖縄密約事件当時の地元新聞社の対応に関する質問が出て、参加していた当時の関係者からコメントをいただくなど興味深いやりとりが多く、居眠りをする人は見当たりませんでした。17:00まで、席を立つ人もほとんどおられず、白熱したシンポジウムだったと思います。
 弁護士会は、今後も秘密保護法の廃止をめざして戦い続けていきます。