安全保障関連法案に反対する九州大学有志の声明

賛同が呼びかけられているのに気づいたので、以下の通り書き込みました。

今、国会で、「非核三原則は、法律がなくても、必ず守る。」と政府が説明しています(8月末現在)。しかし、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」という憲法9条1項は、日本が必ず守ることを世界中に宣言している最も重要な約束です。かりに、現在の情勢がこれを許さないと考える国民が多数になった場合は、憲法を改正して、集団的自衛権の行使を認めることが「法の支配」として、欧米で共通に守られている民主主義国家の根本原理です。日本は、時の政府が、自由自在に権力を行使する「非民主主義国家」に転落しつつあります。左か右か、真ん中かを問わず、民主主義を守るという1点において、絶対に許してはならないと思います。

マイナンバー運用延期を求める声明

 本日、福岡県弁護士会は、下記会長声明を日本年金機構厚生労働省総務省内閣府、衆参両議院議長等に発送しました。弁護士会の意見表明としては、本年7月13日に大阪弁護士会マイナンバー制度の中止等を求める会長声明を出されたものに続く、全国2例目です。

マイナンバー制度の運用延期を求める会長声明

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づき本年10月から12桁のマイナンバーが通知され,来年1月から税・社会保障・災害対策の分野でマイナンバーの利用が始まる予定である。 
しかし,本年5月28日,日本年金機構(以下「年金機構」という。)から,100万人以上もの個人情報が外部に流出したことが判明した。
 漏れた情報は,基礎年金番号,氏名,生年月日,住所であり,流出の原因については,公開アドレスに送られたメールのリンク先ファイルおよび,非公開アドレス宛に送られたウイルス付きのメールであることは判明しているが,全体像はまだ十分には解明されていない。
  マイナンバー制度の安全性に対して国民の多くが不安を抱く結果となったにもかかわらず,政府は,「内閣サイバーセキュリティセンター」の監視対象を独立行政法人等にも拡大すること,地方自治体の間のネットワークの監視体制を新たに整備すること,「特定個人情報保護委員会」の体制を強化すること,情報セキュリティーの専門部署を設けること,「サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針」を策定することを対策として,来年1月から予定通りマイナンバーの運用を実施すると述べている。
  本年6月2日の参議院内閣委員会で田島泰彦参考人は,人的な要素だけでは情報の流出や不正アクセス等の問題が食い止められるわけではないこと,情報集中に起因する問題に対処するには情報の分散化や節度ある情報管理などをシステムの中で多様に組み合わせる工夫が必要であると指摘している。現時点において政府が述べる対策で十分に個人情報の流出が防止でき,国民が安心できるとは到底言い難い。
かつて最高裁は,住民基本台帳ネットワークシステムの合憲性が問われた裁判で,住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はないことをも理由として,合憲の判断を下した。
マイナンバーは,それ自体が厳重な管理が求められる秘匿性の高い情報である。さらに年金事務での利用が予定されているのに,利用する団体による情報管理の物的・人的な体制や能力が脆弱なことが判明してしまった以上,現在マイナンバーの運用が開始されれば,マイナンバーやこれと関連する個人情報が漏えいする具体的な危険があるといわざるをえない。このような状況のまま拙速にマイナンバーを運用することは,違憲となる疑いすら存する。
当会は,限定のない個人情報の統合によるプライバシー権侵害を主な理由としてマイナンバー制度に反対してきた。また,わが国の国家機関がサイバー攻撃をうけ国会議員のメールアドレスなどの情報が漏洩したこと,サイバー攻撃から完全に防御できるシステムはないこと等から,取り返しのつかない情報漏えいの危険が起こりうることを,マイナンバー制度に反対する理由の1つとして指摘してきた。
従って,今回の年金機構からの情報漏えいの原因分析が徹底的になされた上で,明確かつ実効的な再発防止策が立てられ,国民に十分な説明がなされ,その不安が払拭されるまでは,マイナンバー制度の運用を延期するよう強く求める。また,これを機会に,マイナンバー制度にそもそも多大なコストに見合う必要性があるのか,抜本的な再検討を行うことや,マイナンバーの利用拡大の検討ばかりではなく,医療情報とは連結しないなど,国民が安心して生活できるための利用範囲の限定等についての再検討が十分になされるべきである。
2015(平成27)年8月6日
福岡県弁護士会会長 斉 藤 芳 朗 

大崎事件第3次再審申立

 2015年7月8日13:00、鹿児島地方裁判所に、大崎事件の第3次再審申立を行いました。申立書は、車いすで入場した原口アヤ子さんご本人が書記官に渡しました。
 今回の新証拠は、法医学鑑定と心理学鑑定の2つです。
 法医学鑑定は、東京医科大学吉田謙一教授(東京大学名誉教授)の意見書です。
吉田鑑定は、本件死体に死斑・血液就下が認められないことが、急性窒息死とは矛盾すること、すなわち確定判決の事実認定がこれだけでもすでに誤っていることを解明しています。これに加え、本件死体の頚部に圧迫痕跡がないことから、絞殺による窒息死という確定判決の事実認定が矛盾することを解明しています。
 また、淑徳大学大橋靖史教授、青山学院大学大学院高木光太郎教授による心理学鑑定書は、第2次再審第2審において、有罪の根拠とされた親族の供述が非体験供述であることを解明しています。
これらの証拠から、確定判決の事実認定は誤っており、再審が開始されるべきです。
 また、申立直後に、裁判官と弁護団との短時間の面談が行われました。その中で、裁判官からは、本件を時間をおくことなく、通常の刑事事件同様に必要な審理を計画的に行っていく旨のご説明がなされました。
刑事再審事件は、申立がなされてもなかなか審理が始まらないのが通例です。その意味で、裁判所の積極的な姿勢はすばらしいものです。
 弁護団は、吉田謙一教授と、大橋靖史教授、高木光太郎教授の証人尋問を申請しました。これらの尋問が速やかに行われることを強く望みます。
14:00から、報告集会が行われました。
 日弁連人権擁護委員会松尾康利副委員長、鹿児島県弁護士会大脇通孝会長、大崎事件弁護団森雅美団長が、それぞれあいさつをされました。
 続いて、弁護団から事件の概要の説明や決意表明をしました。
 鹿児島大学大学院中島宏教授による再審理論の講演がなされました。新証拠による明白性判断における学会の状況と、判例の現状について話されました。
 また、映画監督の周防正行氏と成城大学指宿信教授との対談で、取り調べの可視化を中心とする刑事司法制度改革の論争の中で、最初は証拠開示や可視化を進めようとしていた流れが後半で変化していった様子が赤裸々に語られました。
 布川事件の桜井昌司氏、足利事件菅家利和氏、志布志事件の藤山忠氏、川畑幸夫氏から、それぞれ応援のメッセージをいただきました。
 日本国民救援会中央本部鈴木猛事務局長、同大崎事件の再審をかちとる首都圏の会中出匡彦副会長から支援者としての決意表明をいただきました。
 最後に、日本国民救援会鹿児島大崎事件再審をめざす会宮地利雄会長から、支援の力強いメッセージをいただきました。
 弁護団は、鑑定人の証人尋問の実現と、その成功のために尽力します。

東京で大崎事件の集会が開かれる

 2015年4月13日17:00から、東京霞ヶ関弁護士会館2階講堂クレオで、「大崎事件第3次再審請求へ向けての集会−再審開始決定を勝ち取るために」が開催されました。138名の参加で、盛況でした。
 日弁連谷萩陽一副会長と、弁護団長の森雅美弁護士から、1日も早く再審開始がなされなければならないとのあいさつをいただきました。
 その後、弁護団の鴨志田佑美事務局長が、第2次再審請求までの総括として、事件の概要を説明しました。確定した有罪事件について、再審請求審のなかで、証拠が開示される例とされない例があり、開示されると、その中に無実の証拠が入っている場合がある。しかし、開示は裁判所の裁量に委ねられているので、法制度化が必要であるなどと述べました。
 弁護団佐藤博史弁護士は、第2次再審請求の到達点と第3次再審請求への展望について述べました。第2次再審で、心理学鑑定が新証拠として価値を認められていること、争点となっていなかったものの供述を理由として有罪とされたので、この供述について心理学鑑定がなされれば、第2次再審の枠組みでも再審開始決定が得られるはずだと述べました。
 淑徳大学の大橋靖史教授は、「供述心理分析の手法と供述の信用性評価」について基調講演され、以下のように述べられました。
 供述心理分析は、内容についての検討ではなく、変遷の特質分析である。殺人と死体遺棄に関する主なトピックをピックアップすると、特定のトピックで特徴的な変遷が起こっている。それが共犯者同士の相互行為調整場面である。 1989年にGriceが「協調の原理」として、「量の公理、質の公理、関連性の公理、作法の公理」を遵守しているか、というモデルを確立した。
 協調の原理から極端な逸脱がないか、相互行為調整の不成立に結びつく混乱の有無を検討した。直前に出席した披露宴のことを思い出して語るところでは十分な「協調の原理」遵守状況があるが、殺害・死体遺棄の共謀を巡る場面では極端な逸脱が繰り返されている。供述者の知的障がいと言うことでは説明できない。非体験供述と考える方が自然である。
また、えん罪被害者として、袴田巌さんのお姉さんの袴田ひで子さんと、足利事件菅家利和さんから、エールをいただきました。
後半に、パネルディスカッションが行われました。
 布川事件の桜井昌司さんは、「心理学鑑定の話を聞いて、取り調べのことを思い出した。現場のことは警察が誘導してくれるが、杉山(共犯者とされた方)との会話はわからなかった。実際は話してないから。調書は警察が教えてくれたとおりのことが書いてある。」「DNAでしか無罪にならないなら、裁判官はいらない。機械をつけとけばいいだけの話だ。きちんと裁判の役割を果たしてほしい。」と、刑事裁判の問題点の本質をユニークに指摘されました。
青山学院大学の高木光太郎教授は、次のように発言されました。
「供述した人の生の供述の方が分析材料として優れている。日本では、分析対象が供述調書という劣化したもので困難を強いられる。本件では、事前に何度も訓練した特殊部隊でなければ遂行できないほど、現場に向かう過程や現場での殺害・死体遺棄に対する相互調整が欠けている。」「捜査側でも、取り調べのやり方を、職人技でない形で考えていこうという考え方が強くなっているのではないか。科学的な取り調べの方法についてお手伝いできることがあればやってみたい。」「録音、録画が出てくると、緻密な分析ができ、信用性のチェックもでき、担保もされる。時間がかかるが、ちゃんとした鑑定がなされ、裁判員裁判に提供されればよい。ただし、分析がないまま画像が流されると、曖昧な印象が強く残る可能性があって、逆にえん罪を生む可能性がある。」
弁護団の木谷明弁護士は以下のように発言されました。
「多くの裁判官は、再審開始決定を書くときには臆病になる。すでに最高裁まで行って確定している判決をくつがえすのは、尻込みしたくなる。一番簡単なのは、何も証拠調べをしないで棄却すること。高裁では、弁護団の言い分をもっともだと考えて証拠調べをしただろう。その結果、ますます弁護団の言い分をもっともだと考えただろう。そこで、ますます臆病になったのではないか。」「事実認定は、裁判官の専権だという意識が強かった。心理学の鑑定も進歩している。隣接科学の知見から、事実認定に役立つものが作られているのだから、謙虚になって、積極的に活用して事実認定を行うべきだ。」「証拠開示に消極的なことは問題がある。再審時点では、関係人に働きかけるなどの開示に伴う問題点が考えにくい。通常審でも全面的証拠開示でよいと思うが、再審段階で無罪の証拠を隠したまま有罪を維持することは許されない。」「原口さんを救えなければ何のための刑事裁判か。何のための再審制度か。」
日本国民救援会の瑞慶覧淳さんは、「再審請求手続きを初めから見ていたものとして、棄却決定は腹立たしい。再審開始決定がでるかでないか、全国でせめぎ合いになっている。DNA鑑定のような明らかな証拠がないと再審開始決定がでない状況ともいわれる。布川事件のように、白鳥決定を生かして決定的証拠がなくても再審開始がなされる必要がある。」「公正な証拠がきちんと提出されるというのが国民にとっても納得が得られるはずだ。全ての事件で証拠開示することを制度として保障すべきだ。」「一貫して否認して戦い続けている原口さんが生きているうちにえん罪が明らかにされなければならない。」とおっしゃいました。
「原口アヤ子さんの再審をかちとる首都圏の会」の松木圓さんから、会が10年前に結成されたこと、このとき、原口アヤ子さんが、第1次再審の特別抗告審のために東京で活動されたことに感銘を受けたこと、ところが、活動半年で棄却されてしまったこと、その後、新聞の発行、現地調査、署名、街頭宣伝などに取り組んでこられたことを報告されました。
 周防正行監督は、「再審事件で証拠を開示する仕組みが作られないのは、えん罪が暴かれることを恐れているからだろう。えん罪事件に対して、再審請求を棄却する方が勇気がいるような状況が必要だ。」と発言されました。
 成城大学の指宿信教授は、「鹿児島大学で教えているときにこの事件と出会った。まだ解決しないことには腹立たしい思いがある。東京でこの集会ができたことをうれしく思っている。私もこの事件のために微力を尽くしたい。」と発言されました。
最後に、日弁連人権擁護委員会の市川正司委員長から「再審についてまさに一進一退のせめぎ合いがなされている。大崎事件では心理学鑑定という先進的な取り組みがなされている。市民の方々が、裁判所に厳しい目を向けていることが大事だと思います。この集会は、そのような活力をいただいたのではないか。日弁連としては、全力で支援していきます。」とのあいさつがなされました。

「ドローン」導入に適切な規制を

 本日、「監視カメラ問題の現状」として、法律家団体へ以下の文章を投稿しました。
 「ドローン」などは、便利ですし、成長戦略として期待されているのかもしれませんが(それでも、東京スポーツの下記記事だと、茨城のドローンは中国製らしいので、日本の成長に寄与するのかは不明ですが)、新たな技術開発には、必ず光があれば陰もあります。
 単に「利用者のマナー」に期待するのではなく、事前に明確なルールが作成されておく必要があると思います。また、その内容は、被害を受けるおそれがある一般の市民の側に立脚した視点を入れることが欠かせないと思います。

1 茨城県が「ドローン」、新潟県無人ヘリを導入
 2015年3月31日の産経新聞配信記事によると、以下の通りである。
「県内で多発する不法投棄対策に役立てようと、県は4月から『ドローン』と呼ばれる小型の無人飛行機を導入し、搭載したカメラで上空からの監視を開始する。30日には、県庁前広場で関係者によるデモンストレーションが行われた。
 導入したドローンは、全長35センチ、重さ約1・2キロで、操作地点から700メートル離れた場所まで最長25分間飛行可能。カメラの映像はスマートフォンなどでリアルタイムで確認でき、塀に囲まれた場所も上空から監視することができる。
 環境省によると、10トン以上の不法投棄件数が茨城県は平成23〜25年度3年連続全国ワースト1位。今後は東京オリンピックなどの大型事業に伴う再開発により、さらなる不法投棄の増加が見込まれるという。
 県廃棄物対策課は『監視態勢を強化し、迅速な対応に役立てていきたい』と話している。」
2015年4月1日の東京スポーツWEBでも、このドローンが中国製で、1回で約25分飛行できること、約20万円であることが紹介され、以下のように伝えられている。
「同課は『(ドローン運用は)必ず複数人以上で行い、記録画像には個人情報が入ってくるので外には出さない。また不法行為をその場で発見したとしてもドローンで追っかけるようなことは想定していない』と説明する。」
「操作ミスや機体トラブルで墜落、衝突のリスクは避けられないが、対人、対物等のドローン保険も販売されている。茨城県が監視目的でのドローンを導入する事実は大きく、政府もドローンが運用しやすい法整備を早急に進めている。」
2014年5月20日付読売新聞は「監視カメラ ルール必要」との見だしで以下の通り報道している。
「セコムIS研究所が開発した『小型飛行監視ロボット』。7つのセンサーとカメラを備え、『不審者』を見つけると、地上2〜3メートル付近を旋回しながら対象者を撮影する。・・・監視センターにリアルタイムで送られてくる画像は鮮明で、車のナンバーまではっきり読めた。
 今年度中には実用化の予定で、小松崎恒夫所長は『東京五輪までにさらに小型化し、空から日本の安全を守りたい』と意気込む。」
 2015年4月2日付日経WEBでは、「新潟県無人ヘリ導入へ 被害確認や不明者捜索」との見出しで、以下の記事(共同)が配信されている。
新潟県は災害発生時の被害確認や不明者の捜索などに活用するため、高性能カメラを積んだ無人ヘリコプターを導入する。」
「ヘリは全長約1.6メートルで、夜間も使用できる高感度カメラを搭載。半径10キロ程度での利用を想定している。約375万円で特注した。設定した経路を自動でたどるほか、無線操縦もできる。」
「固定翼機が高速で広い範囲を飛ぶのに対し、ヘリは低空を地形に沿って飛んだり静止したりと小回りがきく。どこでも離着陸でき、航空法上の事前手続きも不要なので、現場近くまで持ち込んで即時飛ばせるという。」
2 メガネ型ウェアラブル端末の販売予定の中止
 AFP=時事の2015年1月16日の配信記事によると、「米グーグル(Google)は15日、眼鏡型インターネット端末「グーグル・グラス(Google Glass)」の販売を中断すると発表し、この技術は将来の消費者製品で活かされると強調した。」
 昨年にも発売予定とされていた眼鏡型携帯端末(ウェアラブル端末)では、鞄の中のスマートフォンなどと連動して、眼鏡に映り込んだ人に顔認証アプリケーションを適用し、インターネット検索と連動してフェイスブック等に公開されている名前、職業などのプロフィールを表示させることも技術的には可能である。
3 顔認証技術の発展・実用化
 2014年4月には、監視カメラシステムメーカーが、複数店舗間において、万引き犯人等の顔認証データを共有し合えるシステムを販売し、実用化されているとの報道が見られた。
 近年の顔認証技術の発展や、デジタルデータの通信・記録媒体の高度化・低廉化は著しい。経済成長を促す技術としての経済界からの注目も高い。
 法的規制がなければ、5年程度のうちに、「監視」、「営業」あるいは「のぞき見」する側から標的とされた市民は、高精度の画像収集・転送と顔認証装置によって、その行動を容易に検索、追跡することが可能な社会になるおそれがある。
4 顔認証データに対する規制
昨年の報告でも言及しているが、2014年2月27日付毎日新聞によると、「雑踏や群衆にビデオカメラを向けると瞬時に特定の人物を見つけ出すことのできる顔認証装置が今年度、全国5都県の警察に導入された。組織犯罪捜査が目的とされるが、目的外使用をチェックする仕組みは未整備で、誰にそのカメラが向けられるのかは『ブラックボックス』の中だ。」とされる。
すでに、2011年3月から警視庁が、民間の事業者が街頭に設置している防犯カメラの画像と、警視庁が所有する顔画像を顔認証装置を用いて機械的に照合する事業を、試験運用している。
 上記のうち、監視カメラで収集された顔画像を、警視庁が顔認識システムで自動照合することは、現行刑事訴訟法で定められた捜査方法ではない。特に、被疑者が含まれている画像である(現行犯的状況)とか、含まれている蓋然性が相当高度である(具体的な犯罪の嫌疑との実質的関連性)などの要件を満たさない、無実の市民の画像を網羅的に任意捜査で収集することは、プライバシー権という憲法で定める基本権を制限するので、強制捜査と位置づけるべきであり、事実上令状主義が及んでいるともいえないので違法である。
警察が自ら設置する街頭防犯カメラに顔認証装置を直接結合することも違憲、違法である。被疑者が含まれている蓋然性により限定されない画像に対する顔認証装置の適用は違法であり、限定されている画像に対する顔認証装置の適用についても、明確なルールが不可欠である。目的外利用として、街頭デモや集会画像に対し、治安目的での活用の危険がある。
 当然ながら、立法により、明文でどのような条件ならどのような捜査方法が許されるのか、あらかじめ定めておくことが不可欠である。
SFのような捜査方法が現実のものになりつつある今、世論に訴え、必要な立法がなされるよう努力し続けなければならない。

B型肝炎訴訟基本合意と和解

 2015年3月27日9:30、厚生労働大臣と、全国原告団弁護団との間で基本合意書(その2)を締結しました。
 大臣の署名、押印済みの基本合意書3通を厚労省の担当者が持参し、田中義信全国原告団代表と、佐藤哲之全国弁護団代表が署名・押印しました。
その主な内容は、肝硬変以上の病態を発症してから20年経過した被害者に対する和解金の額を以下のように定めるとともに、一定類型の肝がんの再発事例については、発症時を再発時とみなすというものです。
 肝硬変(軽度) 現に治療中でないもの 300万円
         現に治療中のもの   600万円
 肝硬変(重度)、肝がん、死亡      900万円
 9:45,札幌地裁で和解期日が開かれ、この基本合意書(その2)の締結によっても、除斥期間の適用を争って判決を求める場合の主張立証を制約しないことを相互に確認しました。
 なお、この和解期日で、札幌の原告590番さんが多中心性肝がんとして、3600万円の満額で和解しました。
 この方のプロフィールは、以下の通りです。
H2 肝がん発症
H6 再発
H18 再発
H24.3 提訴
H26 再発
 国は、H2の初発から20年以上経過して提訴したとして除斥期間の適用を主張し、弁護団はH18を起算点とすべきだと主張しました。
 裁判所は、多中心性肝がん(肝内転移でない肝がん)なので、H18を起算点とする前提で除斥期間の対象にならないとして和解をすすめました。
H2に発症し、H24に提訴した肝がん被害者であっても、除斥期間の対象とならない場合があることが確認されたこと、その基準に従って、現実に和解が成立したことは画期的と言ってよいと思います。
 その他の金額については、どうしても早期の和解を希望される方のための和解額であり、除斥期間の適用を争う原告が拘束されるものではありません。
弁護団は、ひきつづき、除斥期間の適用のない、差のない解決を目指して活動を続けます。

B型肝炎追加提訴と110番のご案内

本日13:00、福岡地裁B型肝炎訴訟の追加提訴をしました。概要は下記の
通りです。

今年に入ってから、提訴原告数が少なくなっています。
電話相談も少なくなっています。
2008年5月から、福岡地裁で、また全国10地裁で協力し合って、被害者認定基
準の確立を求めた裁判が行われていたことを知らない方も多くなってい ます。
2010年3月12日に札幌地裁で和解勧告が行われ、2010年3月26日に
福岡地裁でも和解勧告が出されてから、もうすぐ5年になります。

そこで、普段は職員が対応している電話相談に、弁護士が直接相談を受けるB型
肝炎110番を行うことにしました。
裁判を考えている方は、ぜひご相談下さい。

2015年3月14日10:00〜16:00 092−883−3345(B
型肝炎電話相談窓口、姪浜法律事務所内弁護団事務局)


B型肝炎訴訟追加提訴  2015.3.2  九州弁護団

< 九州訴訟追加提訴の概要 >
 1 原告、被害者
  *福岡地裁 原告38名(被害者38名)
 キャリア(600万円)5名、
 慢性肝炎(1250万円)24名、
 肝硬変軽度(2500万円)3名、
 肝ガン(3600万円)6名、
  *熊本地裁 原告13名(被害者13名)
  *鹿児島地裁 原告5名(被害者5名)
  → 九州全体で原告56名(被害者56名)が提訴
 2 原告居住地など(福岡地裁分)
   福岡県27名、佐賀県1名、長崎県6名、大分県0名、熊本県0名、宮崎
県3名、
  山口県0名、神奈川県1名
   30代から70代までの男女
  <熊本地裁分>熊本県、東京都
  <鹿児島地裁分>鹿児島県
 3 原告数
 福岡地裁における原告は、1675名(被害者数1485名)へ。
熊本  173(153)
 鹿児島 177(155)
 那覇  143(131)
 九州訴訟原告は、2167名(被害者数1924名)へ。

4 現在の和解者数
 福岡地裁 1209名(被害者1053名)
 熊本地裁  107名(被害者92名)
 鹿児島地裁 117名(被害者105名)
 那覇地裁  104名(被害者94名)
 九州全体 1537名(被害者1344名)

* B型肝炎訴訟電話相談窓口
  092−883−3345(姪浜法律事務所内弁護団事務局)
  平日9:00〜12:00,13:00〜17:00
* 次の予定
3/14 10:00〜16:00 B型肝炎110番(上記番号)
 3/16 11:00 福岡地裁口頭弁論、和解