「ドローン」導入に適切な規制を

 本日、「監視カメラ問題の現状」として、法律家団体へ以下の文章を投稿しました。
 「ドローン」などは、便利ですし、成長戦略として期待されているのかもしれませんが(それでも、東京スポーツの下記記事だと、茨城のドローンは中国製らしいので、日本の成長に寄与するのかは不明ですが)、新たな技術開発には、必ず光があれば陰もあります。
 単に「利用者のマナー」に期待するのではなく、事前に明確なルールが作成されておく必要があると思います。また、その内容は、被害を受けるおそれがある一般の市民の側に立脚した視点を入れることが欠かせないと思います。

1 茨城県が「ドローン」、新潟県無人ヘリを導入
 2015年3月31日の産経新聞配信記事によると、以下の通りである。
「県内で多発する不法投棄対策に役立てようと、県は4月から『ドローン』と呼ばれる小型の無人飛行機を導入し、搭載したカメラで上空からの監視を開始する。30日には、県庁前広場で関係者によるデモンストレーションが行われた。
 導入したドローンは、全長35センチ、重さ約1・2キロで、操作地点から700メートル離れた場所まで最長25分間飛行可能。カメラの映像はスマートフォンなどでリアルタイムで確認でき、塀に囲まれた場所も上空から監視することができる。
 環境省によると、10トン以上の不法投棄件数が茨城県は平成23〜25年度3年連続全国ワースト1位。今後は東京オリンピックなどの大型事業に伴う再開発により、さらなる不法投棄の増加が見込まれるという。
 県廃棄物対策課は『監視態勢を強化し、迅速な対応に役立てていきたい』と話している。」
2015年4月1日の東京スポーツWEBでも、このドローンが中国製で、1回で約25分飛行できること、約20万円であることが紹介され、以下のように伝えられている。
「同課は『(ドローン運用は)必ず複数人以上で行い、記録画像には個人情報が入ってくるので外には出さない。また不法行為をその場で発見したとしてもドローンで追っかけるようなことは想定していない』と説明する。」
「操作ミスや機体トラブルで墜落、衝突のリスクは避けられないが、対人、対物等のドローン保険も販売されている。茨城県が監視目的でのドローンを導入する事実は大きく、政府もドローンが運用しやすい法整備を早急に進めている。」
2014年5月20日付読売新聞は「監視カメラ ルール必要」との見だしで以下の通り報道している。
「セコムIS研究所が開発した『小型飛行監視ロボット』。7つのセンサーとカメラを備え、『不審者』を見つけると、地上2〜3メートル付近を旋回しながら対象者を撮影する。・・・監視センターにリアルタイムで送られてくる画像は鮮明で、車のナンバーまではっきり読めた。
 今年度中には実用化の予定で、小松崎恒夫所長は『東京五輪までにさらに小型化し、空から日本の安全を守りたい』と意気込む。」
 2015年4月2日付日経WEBでは、「新潟県無人ヘリ導入へ 被害確認や不明者捜索」との見出しで、以下の記事(共同)が配信されている。
新潟県は災害発生時の被害確認や不明者の捜索などに活用するため、高性能カメラを積んだ無人ヘリコプターを導入する。」
「ヘリは全長約1.6メートルで、夜間も使用できる高感度カメラを搭載。半径10キロ程度での利用を想定している。約375万円で特注した。設定した経路を自動でたどるほか、無線操縦もできる。」
「固定翼機が高速で広い範囲を飛ぶのに対し、ヘリは低空を地形に沿って飛んだり静止したりと小回りがきく。どこでも離着陸でき、航空法上の事前手続きも不要なので、現場近くまで持ち込んで即時飛ばせるという。」
2 メガネ型ウェアラブル端末の販売予定の中止
 AFP=時事の2015年1月16日の配信記事によると、「米グーグル(Google)は15日、眼鏡型インターネット端末「グーグル・グラス(Google Glass)」の販売を中断すると発表し、この技術は将来の消費者製品で活かされると強調した。」
 昨年にも発売予定とされていた眼鏡型携帯端末(ウェアラブル端末)では、鞄の中のスマートフォンなどと連動して、眼鏡に映り込んだ人に顔認証アプリケーションを適用し、インターネット検索と連動してフェイスブック等に公開されている名前、職業などのプロフィールを表示させることも技術的には可能である。
3 顔認証技術の発展・実用化
 2014年4月には、監視カメラシステムメーカーが、複数店舗間において、万引き犯人等の顔認証データを共有し合えるシステムを販売し、実用化されているとの報道が見られた。
 近年の顔認証技術の発展や、デジタルデータの通信・記録媒体の高度化・低廉化は著しい。経済成長を促す技術としての経済界からの注目も高い。
 法的規制がなければ、5年程度のうちに、「監視」、「営業」あるいは「のぞき見」する側から標的とされた市民は、高精度の画像収集・転送と顔認証装置によって、その行動を容易に検索、追跡することが可能な社会になるおそれがある。
4 顔認証データに対する規制
昨年の報告でも言及しているが、2014年2月27日付毎日新聞によると、「雑踏や群衆にビデオカメラを向けると瞬時に特定の人物を見つけ出すことのできる顔認証装置が今年度、全国5都県の警察に導入された。組織犯罪捜査が目的とされるが、目的外使用をチェックする仕組みは未整備で、誰にそのカメラが向けられるのかは『ブラックボックス』の中だ。」とされる。
すでに、2011年3月から警視庁が、民間の事業者が街頭に設置している防犯カメラの画像と、警視庁が所有する顔画像を顔認証装置を用いて機械的に照合する事業を、試験運用している。
 上記のうち、監視カメラで収集された顔画像を、警視庁が顔認識システムで自動照合することは、現行刑事訴訟法で定められた捜査方法ではない。特に、被疑者が含まれている画像である(現行犯的状況)とか、含まれている蓋然性が相当高度である(具体的な犯罪の嫌疑との実質的関連性)などの要件を満たさない、無実の市民の画像を網羅的に任意捜査で収集することは、プライバシー権という憲法で定める基本権を制限するので、強制捜査と位置づけるべきであり、事実上令状主義が及んでいるともいえないので違法である。
警察が自ら設置する街頭防犯カメラに顔認証装置を直接結合することも違憲、違法である。被疑者が含まれている蓋然性により限定されない画像に対する顔認証装置の適用は違法であり、限定されている画像に対する顔認証装置の適用についても、明確なルールが不可欠である。目的外利用として、街頭デモや集会画像に対し、治安目的での活用の危険がある。
 当然ながら、立法により、明文でどのような条件ならどのような捜査方法が許されるのか、あらかじめ定めておくことが不可欠である。
SFのような捜査方法が現実のものになりつつある今、世論に訴え、必要な立法がなされるよう努力し続けなければならない。