パブリックコメント(顔認証ゲート先行導入について)

2017年8月3日、日本弁護士連合会情報問題対策委員会の有志9名で、下記の内容のパブリックコメントを提出しました。
 顔認証システムを、希望する日本人が帰国する際に、入国審査で利用して、職員の省力化を図ると言うことに関する省令改正に関連する意見です。
 希望しない人が勝手に使用されなければ問題はないといえますが、その任意性が守られるための運用上の条件があること、また希望する利用者が不測の濫用被害を受けないための名文規定が必要であるということがその骨子になります。


1 顔認証ゲートを利用しない者に不利益を課さないこと
 顔認証ゲートを利用した日本人旅行者の帰国手続の簡便化は、同ゲートの利用が任意であることが適切に告知されたうえで、同ゲートを積極的に利用したい者のみがあらかじめ同意して参加する限り、プライバシー権侵害の問題を生じないと思われる。
 顔認証ゲートの利用が任意であると言うためには、それを利用しないことを選択することで不利益を受けることがないようにする必要がある。
 それゆえ、たとえば、現状おおむねスムーズに行われている入国審査について、入国審査官の配置を減らした結果、顔認証ゲートを利用しない日本人旅行者の入国手続が著しく遅延し、顔認証ゲートを利用しない場合には事実上の不利益を受けるような事態に至ってはならない。
このことが、任意の利用と言える状況を確保するために最低限必要である。

2 装置の精度について、情報が公開されるべきこと
 空港の出入国審査を迅速化するための顔認証装置の実証実験の結果、2012年の実験では精度が低かったためいったん導入が見送られたが、2014年の実験で十分な精度が得られたため導入される予定という。
 顔認証装置の精度については、低ければ誤認が生じやすいが、高ければ高度な監視に応用でき、プライバシー権侵害につながりうる。
 したがって、今後も、顔認証装置の精度については、適宜、適切な情報公開が行われていくべきである。

3 省令による目的外利用・第三者提供禁止規定の明記
 パスポート申請者が持参した顔画像データ(顔写真)から生成される顔認証データが、指紋同様の精度を獲得する場合、単なる顔画像データ(顔写真)であっても、本人識別のための高度のプライバシー性を持ちうる。
 したがって、監視等他の目的で利用されないためには、顔認証データ及び顔画像データの目的外利用や第三者提供がなされないよう、省令において明確に定められるべきである。
                                以 上」