「警察崩壊 つくられた”正義”の真実」

 元北海道警察釧路方面本部長の原田宏二さんから頂いた、「警察崩壊 つくられた”正義”の真実」を読みました。
 日弁連は、2013年2月27日に監視カメラ問題を考えるシンポジウムを日弁連会館1701号会議室で開催し、その時に基調報告者、パネリストとして原田さんにお話をして頂きました。
 民間事業者などが、何のためらいもなく監視カメラの画像を警察に任意提供していること、その際に添付される捜査関係事項照会書が、安易に発行されていることなどを指摘され、監視カメラの設置・運用に関する法律の規制が必要と説かれました。警察官として勤め上げた方の提言だけに説得力があります。
 そのご縁で、2週間ほど前に新刊本として頂いたのですが、「これから読みます」というお礼状を出せないまま時間がたってしまい、今さら出せない状況になったので、移動の時間を利用して読破しました。
 「ブログその他でご紹介下さい」というお手紙もあったので、遅くなりましたが、ご案内します。

 原田さんが告発された警察の裏金づくりの問題、無実の人に自白を迫りえん罪を作り出している取り調べの問題、「警察官の犯罪」が絶えない構造の問題などについて、現在進んでいる「警察改革」の問題点と、あるべき改革の方法が記されています。
監視カメラの関係では、捜査関係事項照会書による任意捜査ではなく、令状主義の原則が極めて重要であると再認識しました。
秘密保全法、共通番号法などを通じた警察国家化、監視社会化が問題になっていますが、きちんと勉強して情報をアップデートするために、この本はとてもためになりました。原田さんへこの場をお借りしてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

(私は、以下のところに耳を折りました。)
p27,8 捜査関係事項照会書が、具体的な犯罪容疑がない場合でも使用されているケースが多いこと、多くの私的団体は簡単に応じること。監視カメラ画像も提出されていること(日弁連シンポでのご指摘ですが、著書になると参照できてよいですね。)
p100 警察官採用試験の際の身元調査について(公務員採用試験に際する思想調査は憲法違反であると一般的にはいわれていますが・・・)
p102 警視庁公安部から流出した情報の中に、大手都市銀行が、中東の某国大使館の職員全員の詳細な銀行取引履歴を、公安部に提供した内容が含まれていること。捜査関係事項照会書による入手と見られること(p252。秘密保全法の立法事実とされている情報漏えい事件ですが、違法な情報収集を反省し、再発防止策を採ることが先ではないでしょうか。)
p243 コンピュータ監視法のしくみ(履歴を1か月分保存させることの意味が、捜査関係事項照会書で入手することとセットであることが、言われれば当然かもしれませんが、なるほど、そういうことかと思いました。こんな情報は、令状抜きで提供されるべきではないですね。)