国が発症後20年の肝炎患者を救済する姿勢しめさず

 2011年2月15日15:00、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 原告側は、本日付けで、和解所見に対する意見を述べ、また、今後の和解協議の進め方に関する意見を述べました。
 これに対し、国側は、1月31日に上申書を提出して、和解所見を受諾したことを説明し、また、本日付で、「今後の和解協議の進め方に関する国の考え方について」と題する文書を提出しました。
国は、発症後20年を経過した慢性肝炎患者に対する対応については、裁判所の和解期日での協議を行い、裁判所の所見を求める方針を明らかにしました。
 しかし、原告側は、除斥期間に関しては、ハンセン病国賠訴訟においても、法務省の抵抗がきわめて強く、小泉首相が2001年5月11日の熊本地裁判決(違憲判決)を、「異例の控訴断念」した際にも、「除斥期間(の適用を排除した熊本地裁判決)については納得しているわけではない」と留保する政府声明を出しながら、5月23日に事実上全員救済を行う政治決断を行い、6月22日にハンセン病補償法を制定、7月23日に基本合意を締結しました。
 除斥期間は、民法724条が存在することから、司法上の和解でこれを乗り越える合意をすることは、現在の法務省では全く期待できないため、これは司法による解決機能の限界と言わざるを得ません。
 小泉首相と同じように、政治決断で解決されるべき課題です。
 従って、原告側は、裁判所の所見を求めず、政治決断を求める方針を明らかにしました。
 薬害肝炎訴訟でも、2007年12月23日に福田首相が「全員一律で救済する議員立法を決めた。」と政治決断を行い、2008年1月11日に薬害肝炎救済法を制定し、1月15日に基本合意を締結しました。
 薬害肝炎救済法には前文があり、「感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図ることとし、この法律を制定する。」と明記されています。
 薬害肝炎の解決にも尽力したという菅首相であれば、司法の限界を超えるための首相の政治決断の重要性は十分承知されていることでしょう。一刻も早く決断をされるよう期待します。

以下、記者会見における原告のコメントです。
谷口三枝子全国原告団代表
 国は長い間回しうちをして、長い間責任を認めませんでした。長い間苦しんだ被害者は、長い時間がたったからと言うことで、法律で切り捨てられ、寒空のもとに放置される。大臣は、私たちの話も聞かずに、何が決められるのか。
一日も早く政治決断をして、ひとり残さず救済して欲しい。
1日も早い菅首相の政治決断を求めて、力の限り最後の戦いを続けていきたい。
高橋朋巳北海道原告団代表
 今日の和解協議は、何の進展もなく、ただ日が過ぎるだけ。国自体、謝罪をしようとしない。しかるべき、いつのことでしょうか。私たちは苦渋の選択をして、早期解決のため、全国の被害者を一日も早く救っていただきたいので、裁判所の所見に従う意思表示をしました。国はさっぱり、積極的な行動がない。私たちがしびれを切らすのを待っているとしか思えない。私が願うのは、予防接種、使い回しの事実、真実を、間違ったことを国民の皆様にお詫びしていただくために、謝罪をしていただきたい。そういうこともしないで、なぜ先が見えることを考えられるのでしょうか。
予防注射で恩恵を被った方、病気にならなかった方がたくさんいます。その人たちに、私たちを救うようにということで増税まで考えています。嘘の固まりです。国は、いつまで嘘をつくのでしょうか。真実を語らない限り改善はしないと思います。出だしが間違っている。私たちは疲れました。でも、この国の態度を許すわけにはいきません。
高橋元一北海道原告団副代表
 昨年3月に和解勧告、国が和解のテーブルに着いたのが5月、ただ、テーブルに着くだけで2ヶ月かかった。今回も、裁判所の所見から、受け入れまで1ヶ月かかった。これが誠意ある対応なのか。国は、我々国民・原告をどう理解しているのか。国の考えが全く分かりません。注射器の使い回しは、昭和23年には厚生省は分かっていた。それをずっと放置してきて、WHOの勧告も無視した。40年間、何もしないで国は無視してきた。除斥期間20年という法律を盾に、それ以前の方は救わない。40年放置して、救わないでいいというのがこの国のやり方。このことに関して、国は40年間放っておいたことを説明してもらいたい。謝罪のことをどう考えているのか。細川厚労大臣は、しかるべき時って言ってますけど、いい加減な言葉で、国民に分かるような話し方で我々原告・国民に対応して欲しい。
清本太一北海道原告団副代表
 国は広く国民の理解と協力を得るということを強調していた。本当にそう思っているのであれば、大臣がすぐに原告と会って謝罪し、すべての国民に、危険を去らしたことを謝罪すべきだ。国は、集団予防接種での40万人のB型肝炎の感染者がいるかもしれないと言っている以上、すぐに謝罪すべきだ。今後の和解協議の進め方についてペーパーをもらいましたけど、本当に私たちを救済する気があるか疑問だ。
菅首相に、政治決断をして、謝罪や解決のリーダーシップをとってもらいたい。
山本広島原告団代表
 除斥に関する具体的な話は全くなかった。菅政権は、すべて解決を裁判所に丸投げしている。万が一、肝炎が除斥で切り捨てられるようなことがあれば、正義に反する。
窪山寛九州原告
 今日は、いい報告ができることを楽しみにしてこの場に参加した。しかし、いい報告ができず、沈痛な思いです。ここに並んでいるみんなは重篤です。私たちは、予防注射が悪いと言っているのではありません。予防注射の時に針・筒を使い回したのが悪いと言っているのです。除斥について、国があくまでも裁判所を仲介にしていきたいというのはおかしい。自分の責任は、自分で対応すべきだ。間違ったときは、速やかに救済すべきだ。菅政権には、国民の命を大事にして欲しい。和解に向かって、20年の除斥を切り捨てないようにしていただきたい。
広島原告19番さん(肝炎発症後20年経過している原告)
 なぜ、長く苦しんだものが救済を受けられないのでしょうか。私たちは、インターフェロン核酸アナログ剤もなく、強ミノという肝庇護薬を飲み、体を休めて何とか病気をやり過ごしてきた。これからまだ肝硬変・肝ガンになっていく、私たちは救済されないのか。私たちは、自分がなぜB型肝炎になったのか分からずに病気と闘い、差別偏見とも闘ってきた。どうして国は分かってもらえないのか。私たちの声を直接に聞いてもらえないのか。同じこの病気を持った人たちの支えで戦っている。同じ病気なのに、区切りをされるのはつらくて納得できません。私は、初めて札幌の和解期日に参加させていただきました。でも、何の感動もありませんでした。みなさん、この病気を知って欲しいと思います。治療と偏見で苦しんできた人たちに光を当てて下さい。どうか皆さん理解して下さい。お願い致します。