B型肝炎訴訟で、国はキャリアについて再考せず

2010年11月12日15:00から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 前回、10月26日の和解期日において、裁判長から、無症候性キャリアに対して国から一時金が出されないことが和解を進めていく上での最大のネックであるとの見解を示した上で、国に無症候性キャリアに対する一時金についての再考を促しました。国は、検討すると言って持ち帰りました。
しかし、今回、国は、キャリアの一時金については、回答できないと居直りました。しかも、次回11月24日の和解期日で回答できるかどうかもいえないと開き直りました。
 細川厚生労働大臣も、仙谷官房長官も、年内解決を目指すと言っていますが、全く早期解決の姿勢は示されていません。
 国の態度は極めて不当です。
仙谷官房長官に及んでは、2010年11月1日の衆議院予算委員会において、自民党田村憲久議員の質問に対し、「予防注射自身は我々も全員と言っていいほど受けているわけでありますから」と回答し、日本人の誰もが予防接種を打っていることを当然のことと受け止めていることを明らかにしています。
 しかし、国は、裁判所では、「母子手帳や注射痕がなかったら、本当に打っているかどうかあいまいだ」として、母子手帳や注射痕がない原告だけでなく、これらの資料がある原告に対してまで、損害賠償額を低くするための根拠としています。
 死亡した被害者が、注射痕の証拠を今から出せない問題についても、「今検討しているところ」だそうです。
国は、財源論を前提としての賠償額の値切りという結論ありきで、本気で問題だとは思っていない争点を繰り返し繰り返し主張することで、体調が悪い原告らが闘い疲れるのを待っているようです。
 肝硬変・肝ガンなど、極めて健康状態が厳しい被害者がたくさんいます。
 被害者が、何度も何度も東京で抗議行動をとらなければならない、しかも、それでも政府は全く人ごととして、真剣に自分の加害責任に向き合おうとしないというのは、極めて不誠実です。
 和解勧告から8ヶ月、このような状況ではとうてい年内解決は実現できません。
 原告団は、11月16日に東京で抗議行動を行います。

 以下、記者会見における発言です。
北海道原告清本副代表:私は軽症の肝硬変と分類されている。国の資料だと、食事制限はなく、生活に支障はないと言われている。でも、私は、食事制限を受けた時期もあるし、今の私たちの労働の現場で、支障がない被害者はいない。私たちの声を聞こうとせず、私たちの被害を勝手に決めないでほしい。
 谷口原告団代表:年内解決を望む私たちの気持ちを踏みにじりました。民主党が政権を取ったら、この問題を解決するという言葉を聞きました。今となってはむなしいばかりです。財源問題を理由にして、被害者を切り捨てています。国を挙げて対策をとらなければならない、一日も早く謝罪と償いをしなければならないのに、ひどい話です。先の原告に17年間裁判をさせ、最高裁判決の後も全く何もせず、国は何をしているのでしょうか。
東京原告団岡田代表:年内の基本合意を目指すと言っているが、こんなに進展がないのに、何を根拠に言っていらっしゃるのか。私たちは、納得のいく和解をしたい。誠実に対応して頂きたい。

 なお、以下の和解期日が指定されました。1月以降の期日は、裁判長から、「年内に基本合意が成立しても、具体的な和解手続きが必要ですので、」として指定されたものであり、年内解決が困難だという意味合いは全くありません。
 12/7 15:00〜17:00
 1/18 15:00〜17:00、2/15 15:00〜17:00、3/18 15:00〜17:00