B型肝炎訴訟、札幌地裁で4名が和解

t-muto2011-09-16

 2011年9月16日14:00から、札幌地裁でB型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 全国B型肝炎訴訟で初めて、北海道訴訟の原告のうち、代表の高橋朋巳さん、副代表の高橋元一さんを含む4名の和解が成立しました。
 本年6月28日に、被害者認定の枠組みと和解金額等の仕組みについて、全国原告団弁護団と、厚生労働大臣との間で合意をしていましたが、その後、北海道訴訟では5名分の資料を提出し、今回初めて具体的にその中から4名が被害者と認定され、和解金が支払われることが確認されたものです。
 今回の和解協議で、国は和解協議期日を2ヶ月ごとに開きたいと言いましたが、被害者に対する早期の和解を進めるよう求め、次回は11月11日15:00になりました(この日は口頭弁論が開かれ、その後和解協議)。
現在、全国11の地方裁判所で、992名の原告(918名の被害者)が全国で国の責任を追及しています。
 被害者の中には肝ガンで余命を宣告されている重篤な被害者もたくさんいます。「命あるうちに」国の謝罪と償いと受けられるよう、和解手続きは迅速に進めていかなければなりません。
 また、基本合意後の電話相談件数は1万件程度であり、そのうち提訴の可能性があるため資料を送付したものはその一部にすぎません。国は、今後数年間で40万人の被害者が全員提訴するという前提で、被害者救済のために増税が必要だと主張しています。しかし、実際にそのような過大な試算をすることには全く根拠がありません。
 B型肝炎訴訟を、増税の口実に利用することは絶対に許されません。

 原告の方々は、記者会見で以下のように述べました。
谷口三枝子全国原告団代表: ようやくここまでたどりつくことができました。
すべての被害者が命あるうちに迅速に救済してほしいと思います。認定手続きに携わる職員の数をもっと増やしてもらいたいと思います。野田内閣で誠心誠意対応してもらえると信じています。
 発症後20年立った人の救済も立法で解決してほしいと思います。
 あまりに救済が遅かったために救済できなかった人、自分が被害者と気づいていない人もたくさんいらっしゃると思います。小宮山厚生労働大臣原告団との協議の場を1日も早く設けていただきたいと思います。
高橋朋巳北海道原告団代表: 本日、和解が成立して非常にうれしいと思います。今日まで支えて励まして下さった方々、報道関係の方々に感謝申し上げます。
 救済と待ち望んでいる被害者が大勢います。これからはもっともっとスピーディーに厚生労働省は和解を進めてほしいと思います。
 1000人ほどの原告を、どのくらいの速度で救済するつもりなのでしょうか。被害者が声を上げ続けないと動いていかないと思います。戦いはまだ終わっていません。
高橋元一北海道原告団副代表: 3年間戦ってきましたけれども、30回ほど東京行動しました。家を空けると、母の介護を女房に任せっきりで、負担とストレスをかけたと思っています。感謝しています。認定を受けましたけれども、認定を受けたからと言って病気が治るわけではありません。悪い状態で数値が落ち着いています。これから進行します。肝臓移植になると数千万円かかります。若い人たちは、病気が悪化して入院すると、働けない、給料ももらえなくなります。加害者は国です。恒久対策、生活支援、医療費助成、このような制度を確立してほしいと思います。全国の原告を、年内に少なくとも半分、年度末には全員救済してほしいと思います。国は早急に認定作業を進めていただきたいと思います。
清本太一北海道原告団副代表: 3年間この問題に携わってきて、今日ようやく和解が成立してほっとしています。やっと過去の被害回復がスタートしたんだな、という気持ちです。私は肝硬変ですが、慢性肝炎の時に検査をしなかったために気づきませんでした。キャリアの方々が、早く治療を受けて肝硬変に進まないように、キャリアの救済を含め、国には尽力してほしい。スピードが速くなければ、救済の意味がなくなってしまう。長きにわたりご支援いただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。
 
 また、記者会見で以下のやりとりがありました。
Q:(弁護団へ)今日の和解の評価は?
A(佐藤代表):基本合意で個別被害回復の枠組みができました。国の試算でも40万人を超える被害者が被害回復を受ける道筋はできました。これから各地で個別和解が進んでいくことになります。これは、これまでの戦いの成果と確認できます。ただ、個別和解は迅速に行われる必要があります。何年もかかるようだと意味がないので、速やかに和解を進める体制をつくっていただきたい。
 また、枠組みはできましたが、被害回復を受けられる方はかなり限定される。それは、国が長い間被害を放置してきたからだ。数十万人も被害者がいることを自分で認めておいて、他の疾病と同じような社会福祉のレベルでしか対応しないというのは、被害を放置することになる。そのため、治療費助成を含めた恒久対策が必要になる。これが実現されないと、一人も漏らさず救済するということにならない。
 国はこの問題の解決のために3.2兆円かかると言った。仮にそんなにかからなかった場合には、残った分をすべてのウイルス性肝炎患者の恒久対策にあてる覚悟を持って臨んでもらいたい。
 薬害肝炎と同じような救済法を作ると言っていますが、そこでは残された課題である、発症後20年経過した被害者に対する手当をすることを強く望みます。

各地の弁護団からもコメントがありました。
柳澤東京弁護団代表:月に100名、200名というペースで和解を進めてほしい。原告は、今後2000人、3000人になっていくと思うが、国には迅速な解決を求めたい。
小宮九州弁護団代表:福岡地裁では22名の原告の資料を提出している。10月5日に和解協議が予定されているので、多くの和解を成立させたい。
長野大阪弁護団代表:9月30日に和解期日が予定されていて、4名程度の和解がなされると思う。基本合意後1ヶ月に1100名ほどの資料発送を行っている。8月以降は相談数も減っていて、200〜300件ほどしか送付していない。全国で1万件ほどの相談しかない。被害者の方々が弁護団にたどり着いているわけではない。現在慢性肝炎で治療中の3万人の方々に、国が周知徹底することが課題だ。
小野寺東北弁護団副代表:7月に弁護団をつくり、8月に電話相談を行った。260件の相談があった。今日、仙台で被害者説明会を行う予定にしている。震災で母子手帳がなくなったなどの相談も寄せられているので、国が求める立証をどうするのかが問われている。年内には提訴を行いたい。岩手、秋田、青森にも弁護団を配置できるようにがんばっていきたい。
佐藤全国弁護団代表:多くの被害者を救済するためには、国民に対して国が広く検査を呼びかけることが必要。