法と民主主義6月号

 法と民主主義という雑誌の2008年6月号で、「サミットと『テロ対策』」という特集が組まれました。目次は以下の通りです。

02 ◆特集にあたって…………………………………………………………清水雅彦
04 ◆グローバリズムのなかのサミットと「テロ」問題…………………小倉利丸
12 ◆洞爺湖サミットと昨今の政府・警察の「テロ対策」………………清水雅彦
17 ◆最近の「テロ対策」と刑事法…………………………………………新屋達之
23 ◆近時の出入国・在留管理体制の強化と国際的なデータ共有の現状
                   …………………………………難波満
29 ◆市民の自由奪う「監視」の重層的強化
 ──北海道における「テロ対策」の実態…………………………………安藤健
34 ◆アメリカ合衆国における「テロ対策」の動向………………………木下智史
38 ◆テロ規制と監視を強めるイギリスの動向……………………………田島泰彦
42 ◆ドイツのテロ対策法制について………………………………………武藤糾明

 最後に挙がっている私の文章は、昨年の日弁連人権大会シンポの成果としてのドイツ視察の結果について、改めてネット検索などの結果を付加して整理したものです。福岡大学名誉教授の石村善治先生に全面的にバックアップして頂きました。
 ドイツ連邦憲法裁判所は、その後もさらに有意義な違憲判決を連ねています。新たに発見して紹介した判決は、以下の通りです。
 ドイツでは、次々と違憲判決が出され、憲法の番人としての裁判所がその役割を十分に自覚しており、間違いなく法の支配が機能しているといえます。

* インターネット秘密監視違憲判決(石村善治仮訳)
連邦憲法裁判所は、2008年2月27日、州憲法擁護庁に対し、技術的手段を用いた貯蔵メディアに対する内密のアクセスなどのインターネットの内密の監視等を認めたノルトライン・ヴェストファーレン州憲法擁護法5条2項11号を、基本法2条1項、合わせて1条1項、10条1項及び19条1項2文に違反し無効とする判決を下した。
 その理由として、一般的人格権には、情報技術システムの信頼と完璧を求める基本権が含まれることを前提とし、情報技術システムの利用の監視や貯蔵メディアの探索が可能な内密のアクセスが憲法上許容されるのは、極めて重大な法益に対する具体的危険の現実的根拠が存在する場合だけであり、その場合も原則として裁判官の令状の留保のもとに置かれるべきであり、中核領域を守る予防措置がとられていなければならない等としている。
 * 自動車ナンバーの自動読み取り(スクリーニング捜査)違憲判決
 連邦憲法裁判所は、2008年3月11日、ドイツ版Nシステムともいうべき自動車ナンバーの自動読み取りを違憲とした。
その理由として、以下の点などが挙げられている(以下、實原隆志訳)。捜査記録と照合することを目的として自動車登録ナンバーを自動的に認識することは、その比較が即座に行われず、そしてナンバーがその他に利用されないにもかかわらずすぐに痕跡を残さずに削除されない場合には、情報自己決定の基本権(基本法1条1項と結びついた2条1項)の保護領域を侵害する。自動車登録ナンバーを照合する捜査記録について法律上詳しく定義することなく、単に目的を挙げるだけでは、規範の特定性の要請を満たさない。自動車登録ナンバーを自動的に認識することは、手がかりもなく行われてはならず、網羅的に実行されてはならない 。