共謀罪は危ない!

(福岡県歯科保険医新聞3月号に依頼を受けて投稿した記事です。本日受領しましたので掲載します。)

 「濫用のおそれはありません。」政府が、悪い法案を出すときによく使う言葉だ。
 政府は、「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する改正法案を提出しようとしている(2月11日現在)。2003年に国会で承認された国連越境組織犯罪防止条約を批准するために必要だという。しかし、多くの国は国内法を作らずに批准しており、政府の説明には根拠がない。条約に従い、マフィアのように国境を越えた犯罪行為を規制したいのであれば、対象犯罪を600から300に減らすというレベルではなく、「越境性」犯罪だけに対象を絞ればいいのに、絶対に受け入れない。「国内だけで活動する」市民団体を監視したいからだ。
「テロ対策」を口実に加えたが、秘密保護法の審理中に、首相官邸前で政府批判のデモをする市民をテロリスト呼ばわりした自民党の重鎮がいた。我が国独特の「テロ対策」の狙いはまさに「デモ対策」だ。民主主義社会の為政者は、政府批判を行う主権者の表現を尊重しなければならない。弾圧すれば、独裁者と批判されるのが国際人権秩序だ。
 「組織的犯罪集団」にしか適用がないと言うが、構成員に関する前科その他の要件もないので、警察のさじ加減次第で、労働組合員3名でも、市民団体3名でも、濫用のおそれは否定できない。
 「将来犯罪をする合意」をしただけで犯罪が成立するので、捜査権限を付与された警察は、技術的に可能な限りの市民の行動(電子メール、インターネットの閲覧履歴、GPSや監視カメラ・顔認証装置でとらえられる市民の移動履歴を含む)を収集し、市民の表現や行動を監視するおそれがある。
 EUでは、自国内の住民が9.11テロに関与したり、難民のなかから海外に戦闘に出向くものが現れたりしたため、様々なテロ対策のための監視立法が進んだ。これに対し、裁判所は自由を守るため、過剰な監視法を制限する判決を出して、政策の手直しを求め続けている。
 日本は、ほとんど難民認定に基づく難民の受け入れを行っていないので、現実のテロ対策の必要性を主張する資格に乏しい。世界一安全・安心な日本で、感情的な「危険」「不安」に押された政策を支持すると、「自由にモノも言えないニッポン」が復活しかねない。共謀罪を断固阻止しましょう。