久保大さん講演

 7月14日の、福岡県弁護士会人権擁護委員会合宿で、「治安は本当に悪化しているのか」の著者である久保大さんから講演を頂きました。
 久保さんは、東京都が、治安政策を強化したときの治安対策担当部長だった方で「治安が悪化している」「特に少年犯罪と外国人犯罪が激増している」という東京都の認識に、統計学的な根拠がないことを明らかにしています。
 講演の中では、現在、監視市場において、カメラメーカー、電機メーカー、コンピューター産業が、しのぎを削っていること、そのため、数年前とは比較にならないほど鮮明なコンビニ監視カメラが登場しており、顔情報どころか、誰が何を買ったかについて、POSシステムによらず、カメラの映像だけでも追えるほど発達している現状などが報告されました。また、画像の蓄積と検索が容易になっており、イギリスなどを中心として、「不審者捜し」のための研究開発が進んでいる情報なども報告されました。
 また、監視カメラの有用性を前提として、公的機関が適切に管理するという枠組みが進められてきたにもかかわらず、警視庁成城警察署のように、一般市民が設置する建前になってしまうと、公的機関に対する市民による統制が聞かなくなってしまうのであり、誰もチェックできなくなる危険が増大するという指摘がなされました。
 また、短期保存を前提とした運用のチェックに対しても、長期保存と何かあったときの検索という枠組みが技術上容易になったことから、今後は適切な運用に対する歯止めが困難になるとの指摘がありました。
 御著書の中でも、警察庁が、予算獲得のために戦後数十年間、一貫して毎年犯罪が激増しているとか、治安が悪化していると言い続けたことが、突然近年になって具体的な検証もなくメディアにそのまま取り上げられ、それが世論になっていることに疑問を呈しておられます。私も、警察のような権力機関の言うことに対して、メディアが検証なしに鵜呑みにして宣伝を続けていく構図自体に危険を感じます。