監視カメラ画像の商業利用を違法とする判決

 報道によると、2008年5月19日のブログに書いていた、三浦和義さんの監視カメラ画像を、コンビニエンスストアが、報道機関に提供した行為等を違法と訴えた裁判の判決言い渡しが、昨日東京地裁で行われました。そして、報道機関への提供は違法ではなく、監視カメラメーカーが商業目的で画像を利用したことは違法であるとして110万円の支払を命じました。
 ブログで書いていたとおり、コンビニエンスストアから報道機関への提供に関して言えば、三浦さんの肖像権と、報道機関の犯罪報道の公益性(一般にわが国では犯罪報道は公益性が高いとされるが、無罪推定の原則を尊重する国民の意識や、陪審員の審理に偏見を与えるおそれを考慮して、広く制限を加えるイギリスのような考え方もあり得る)の比較の問題です。
 また、監視カメラメーカーによる肖像の利用は、三浦さんの肖像権と、防犯カメラが、宣伝目的で画像を利用する利益(商業的表現行為とも言える)の比較の問題です。
 判決文はみていないので、正確に評価できませんが、報道によれば、報道機関への提供については、間接的に防犯につながるという理由で公益性を認めたようです。
報道されている範囲の情報の中で考えられるのは、(1)監視カメラを設置しているコンビニエンスストアとしては、設置目的である防犯(または検挙)という目的の範囲内での利用しか許されない、という枠組みを前提として、それでもそのような効果としての公益性が間接的にはあると認めたのか、(2)単純に、犯罪報道は公益性が高いという、従来の考え方を当てはめると、厚生労働省の村木さんや、足利事件の菅谷さんに対するような審理なき制裁に近い報道を防ぎきれないこともあり、裁判員裁判における予断排除の必要性等を考慮して、簡単には報道行為の価値を優越するものとせず、比較的厳格に利益衡量を行ったのだと思います。
 他方、監視カメラメーカーが、放映された番組を編集してホームページに掲載したり、販売促進用DVDを作成・配布した行為については、公益性が欠けるとして違法としているようです。こちらは、従来の裁判例からしても、常識的な判断だと思われます。
えん罪事件が続々に見つかり、特捜検事が証拠の変造まで行う時代なので、単に捜査機関が逮捕しただけだとか、捜査機関が「被疑者は自白した」と発表しただけで大々的な報道を行うことに対しては、裁判所の目も今後は厳しくなる可能性があります。弁護側も、被疑者の防御権を第一としながらも、それに反しない限度では、説明を行って、「クロ」の報道を既成事実化しないように決断すべき場面を意識しなければならないのかもしれません。