B型肝炎訴訟で、国が被害者切り捨ての所見

 2010年7月6日14:00から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 私たちは、被害者認定基準と賠償額をあわせた、和解案の全体像を示せと言っていましたが、国は、被害者の認定基準しか示しませんでした。
 しかも、その基準は、多くの被害者を切り捨てる内容でした。
 母子手帳がない6割の原告について、事実上存在しない自治体の予防接種台帳などの確実な証拠を代わりに提出するよう求めてきました。これは、事実上、母子手帳を持っていない原告は、集団予防接種を打ったことがあるかどうかわからないから被害者とは認めないという切り捨てを行ったものです。
 また、母親が死亡している被害者については、2名以上の兄、姉が生存していて、完全な血液データが提出できる場合に限定しており、ほとんどの被害者を切り捨てる内容です。
 その理由として、「90%の確率で被害者だろうという人でも、10%違う可能性があったら被害者とは認めない」という内容でした。このような基準は、判決ではとうてい通らない主張であり、なりふり構わず被害者を切り捨てようという国の強い姿勢を示すものでした。
 その他、札幌地裁では、不要とされた父親のデータやジェノタイプのデータの提出を今回国は求めてきました。また、除斥期間に対する考え方や、賠償額までの国の見解を示す期限も明確にされませんでした。
 およそ、加害者として、自分の責任に向き合い、被害者に早急に謝罪して償おうという姿勢は全く見られませんでした。
以下、札幌弁護士会館5階での記者会見での関係者のコメントです。
北海道訴訟高橋朋巳代表:具体的な話が聞けなかった。国の回答が、以前のことを蒸し返すようなことに終始して進展がない。いたずらに日にちだけが過ぎている。政府でもできないようなことを要求してきている。肝炎対策基本法には、B型肝炎は国の責任と書いてあるのに、この半年間何もしていない。具体的対策が講じられない政府には腹が立つ。
清本さん:集団予防接種を証明するところで、母子手帳がない人については、代替案を出す必要はないと思う。私もB型肝炎以外は全く健康で、集団予防接種を打ったおかげだと思う。早期全面解決をする姿勢を示してほしかった。
高橋元一さん:母子手帳に変わる他のものは、母子手帳以上に厳しい、無いものを出せと言っている。保健所にないものを持ってこいと言っているのは何を考えているのか。要するに被害者は切り捨てる、おまえたちは死んでもいいと言っているように聞こえました。民主党政権になって急速に進展するかと思ったら進展しない。菅首相薬害エイズのようにがんばってくれるかと思ったが、全く進まない。裁判所は幅広く救済と言ったのに、国はこれをどうとらえているのか聞きたい。菅総理は、いかん。一つ一つ解決していくという姿勢が見られない。何とか解決しようという姿勢が見受けられない。残念です。
全国原告団谷口代表:母子手帳がない人は、確実な証拠を持ってこいということだった。60年前の証拠はない。加害者である国が探してこいと言いたい。腹立たしい気持ちでいっぱい。和解案の全体像はいつ示せるのか、いつ解決できるのか。薬害エイズの協議は頻繁なのに、この和解協議は月に1回。
 2年間の戦いで、原告は病状が苦しくなっている。ガンが再発して入院する仲間がいる。
 断じて国の態度は許せない。
東京原告団岡田代表母子手帳で、立証不可能な、国自体も無いとわかっているものを変わるものとして求めてきたことに対して、とても腹立たしい思い。和解協議は、協力して議論するものだと思うが、このような無意味な国の言い分は、通らない。協議であれば、それに代わる案を国が出してくるべき。1ヶ月単位ということも、今までと何も変わっていない。
広島原告団山本代表:救済の範囲が狭すぎる。このトンネルをでられる原告はごくわずか。
 菅総理は、薬害エイズの時には個人の責任でなく病気に陥らされた被害者を救済するために政治ががんばる必要があるとして尽力したが、B型肝炎被害者は放置している。このような政治では、「最小不幸社会」は実現できない。