グーグル社のストリートビューに関する弁明

 昨日の朝刊に、2月3日に開催された東京都情報公開個人情報保護審議会での、グーグル日本法人の担当者からの聴き取りの模様が報道されていました。
 記事を総合すると、グーグル側出席者の説明は、「我々の想像力が足りなかった。今後は各国の事情に配慮したい。」「事前に説明しておけばよかった。日本にはプライバシーを専門に扱う機関がないと判断した。詰めが甘かった。これからは積極的に説明したい。」などというものだったようです。
 ただし、具体的な改善策については、「社内で議論を進めている」、説明した自治体から反対された場合の対応については、「許可を求めるものではないのでは」と話すにとどまったようです。
 グーグル社は、日本以外では画像を公開する前に官庁や自治体に説明をしているのに、日本では事前説明をしていなかったことを明らかにしました(以上、日経、読売、毎日各紙の報道)。

 グーグル社は、日本に個人情報保護を図る第三者機関が存在しないことを、説明を省略した理由として掲げています。
 この部分だけを取り上げると、理があるともいえます。
 しかし、このような第三者機関はなくても、人権を保障する3権の一翼である裁判所の裁判例が多数存在するので、慎重に検討すれば、市民や議会から疑問が出てくることは予想できたのではないでしょうか。
 先進国で、アメリカと日本にだけは、個人情報保護のための第三者機関が存在しませんが、日弁連は、遅くとも1998年以来、第三者機関が必要であると訴えてきました。
 少なくとも、第三者機関の設立と、実効的な監督が速やかに必要だと思われます。
 しかし、それを理由に、ストリートビューサービスについて事前に説明しない根拠とするのは疑問です。
 個人情報保護法18条1項は、取得した個人情報の利用目的を通知または公表する義務を定めています。
 つまり、写真を撮られる(可能性のある)市民に向けて説明をしなければならなかったのです。
 「説明が足りなかったと反省している」(担当者談)のであれば、官庁や自治体の方だけを向くのではなく、勝手に撮影をした対象の市民に説明をすべきです。
 また、説明手続きを踏むかどうかに終始するのではなく、プライバシー保護に関してどのような検討を行ってきたのか、どういう根拠でこのような見解を持っているのか、検討内容をすべて公表すべきではないでしょうか。
 今後も、自治体に一応事前説明をし、仮に反対されても、「許可を求めるものではないのでは」という見解に基づき、市民の意見を調査したり、市民に対して説明をしたりしないまま、次々に公表が続けられてよいのか、みんなで考えて意見を述べていくことが大事だと思います。