住基ネット福岡訴訟支援集会

 午後1時30分から、早良市民センターで、住基ネット訴訟を進める会の集会及び総会が行われました。
 私は、昨年の日弁連人権シンポでの報告(このブログの2007.11.1に記載)に、若干その後の動きなどを付加したパワーポイントとビデオでのプレゼンテーションをしました。
 その後の動きとしては、昨年12月に制定された、福岡県安全安心まちづくり条例や、中洲への監視カメラの設置があり、また、この間公表されたものとして、イノベーション25があります。
 以下、実際に付加した原稿です。

 昨年6月に閣議決定された、イノベーション25という政策があります。これは、2025年に、日本が達成したい理想の将来を描いたものだそうです。
 3次元顔画像データベースによる照合システムや、通学する子どもの位置確認・不信人物の認知などのための技術開発が目標とされています。
 従って、ICタグによる子どもの登下校管理も、今後ますます公金が投入されて普及し、20年後には、ごく当たり前の風景になっていることでしょう。
この政策を進めると、「生活環境の随所で、センサによる自動認識・自動監視等が行われ・・・子ども、高齢者、障害者はあたたかい「みまもり」と「自助・共助」のあふれる社会」で、安全な生活を送れるそうです。
この政策は、安倍政権の所信表明演説に盛り込まれた公約のひとつだそうで、かけ声だけは、さすがに美しいですね。

監視社会化を防ぐための提言を示します。
心が恐怖や不安でたまらなくなったら、一呼吸置きましょう。不安な感情を、理性で検証しましょう。
「その対策が、今何よりも必要ですか。」
「その対策は、本当に有効ですか。」
 警察庁が平成18年に公表したデータでは、路上で子ども(13才未満)が殺された事件は、年平均約4件にすぎません。これに対し、子ども(13才未満)を、家族が殺す事件は、年平均85件です。その多くは虐待です。そして、子ども(15才以下)の、交通事故死亡者数は、最近は減っていますが、年平均363人です(「子どもが出会う犯罪と暴力」森田ゆり、NHK出版p14〜29)。
 登下校時に通り魔に殺される子どもよりも、虐待で殺される子どもが20倍多いのです。交通事故でなくなる子どもは、100倍近い数です。
 あなたの不安な気持ちは、これと同じ比率ですか。
監視カメラについては、ほとんどの人が有効だと考えています。今や異論を唱える人は少数かもしれません。でも、本当にそうでしょうか。
横須賀の米軍基地前の商店街では、米兵の強盗殺人事件をきっかけに、通報ボタンつきのスーパー防犯灯という監視カメラを設置しました。でも、近くの飲食店に勤める29才の女性は言います。「そんなカメラ、あるんですか?ボタンを押して数秒で警察が来てくれるならうれしいけど、そうでないなら、あまり意味ないかも。」
 2年間で通報ボタンが押されたのは33回で、うち訓練が3回、いたずらが29回、「近くに酔っぱらいがいる」という通報が1回で、これですべてです(東京新聞)。
全国に420万台の監視カメラを設置している監視社会大国のイギリスで、内務省が調べた結果によると、駐車場に設置した監視カメラは、車上ねらいなどの犯罪を減少させましたが、街頭の監視カメラは、犯罪場所を移転させているだけで、全体としての犯罪は減少させていません。
 子どもが通り魔に殺されることは、あってはならないことです。しかし、虐待で家族から殺されることも、交通事故で命を亡くすことも、あってはならないことです。
 今、160万人以上が、子どもの登下校を見守るなどの活動をしているそうです。でも、そのエネルギーは、家庭内の虐待や、交通事故の危険が大きい交差点の見守りなどの、もっと子どもの命を脅かすことに向けて考えられたことはあるでしょうか。
 通り魔という、ショッキングで恐怖という強烈な感情で心がいっぱいになることだけを、まちづくりの中心に据え、全国民をも巻き込もうとする大運動に発展させることのメリット、デメリットを、理性で再検討する必要はないのでしょうか。
 ちょっと、待て。感情を理性で再検討する、コントロールする方が、人間らしいのではないでしょうか。