地方自治研究全国集会

 10月21,22日の両日、福岡市内で、地方自治研究全国集会が開催されました。
 私は、22日の分科会「しのびよる監視社会」の助言者として、監視カメラや住基ネットを中心とした監視社会の進展と、その危険性について話をし、コメントをしました。
 自治体職員の方々の現場の声が聞こえたことで実りの多い分科会でした。
 一番驚いたのは、今なお自治体には、法的根拠の全く不明な前科情報が集積されており、企業等から、賞罰に際して問い合わせがあれば、従業員の前科の有無などを答えているという実態です。
 かつて、京都市中京区において、弁護士会照会に応じて、区役所が前科情報を回答したことが憲法13条で保障するプライバシー権を侵害する違法行為であるとして、国家賠償請求が認容されたことがあります。この判例は正当なものではありますが、そもそも、自治体が住民の前科情報を収集していること自体が問題ではないかという研究者の指摘がなされていました。
 国際水準では、必要もなく、公権力が市民の個人情報を収集して、それを勝手にふれ回ることは禁止されています。
 我が国でも、多くの自治体では、センシティブ情報(差別等に利用されやすい前科、宗教、政治信条等の情報)の収集禁止規定を置いています。前科情報は、自治体が保有する正当事由としては、選挙管理の際の、公民権停止に関するものなど、極めて限定的なものだけのはずです。
 しかるに、企業の賞罰のためだけに、前科情報を収集し、回答することはあってはならないことです。
 このようなことがまかり通りところに、「官に甘く民に厳しい」個人情報保護法制のいびつさと、行政機関個人情報保護法の根本的な欠陥が現れています。
 行政上必要のない個人情報を、勝手に公権力が収集したり、それを勝手に利用することを禁止する厳密な法制度が必要です。EUは、日本の個人情報保護法制について、「第三者機関によるチェックのない法制度など信用に値しない」としており、我が国では、早晩法改正が必要と考えられます。
 公権力に対してこそ、民間を規制するのと同様の、また、それ以上の厳密な規制が必要不可欠であるというべきです。