世田谷区の防犯カメラは効果があったのか?

 2006年7月21日の毎日新聞東京版25面に、「侵入盗、世田谷で減、杉並で急増」「住民の防犯カメラ奏功」「杉並 補助金で設置促進へ」という見出しで、世田谷区の成城署管内での防犯カメラの効果に関する記事が掲載されています。
 記事によると、成城署は、昨年秋から住民に呼びかけて、住民の自己負担による街頭防犯カメラの設置を勧めており、7月20日現在で100カ所、205台が設置されています。そして、警視庁によると、世田谷区では昨年1月ないし5月の侵入等が809だったのに対し、今年の同時期は612件に減ったとされています。これに対し、お隣の杉並区では、同じ期間に508件から823件に増加しているとのことです。
 イラストでも描かれているとおり、窃盗犯人が、「カメラはごめんだぜ!!」と言って、監視カメラのある世田谷区から杉並区に移動しているだけの現象だと思われます。
この現象を受けてみなさんは、どう思われるでしょうか。「監視カメラはすごい。早速うちの地域でも設置しなきゃ。」と言うことになるでしょうか。杉並区は、早速6月、防犯カメラに補助金を出すことをきめ、620万円の予算を組んだそうです。
 確かに、短期的には、監視カメラがあるエリアでは、防犯効果が見られますが、これは、犯罪をその場所から他の場所に押しのける効果しかなく、周辺地域にも次々に監視カメラが設置されると、結局、見つかりにくいような形態の犯罪に姿を変えるだけだと言うのが、監視カメラ超大国のイギリスの結論です。
 最終的には犯罪は減らず、監視カメラに膨大な税金が投入し続けられ、誰もが、監視カメラに収められることなしに出歩くことのできない社会が、本当によい社会なのか、そのような社会は、富裕な地域(成城署から始まっていることも特徴的です)から出発する、地域社会の要塞化、今はやりの、「下流社会」を監視する社会につながって、住民が互いに監視しあう、相互不信の社会になってしまわないでしょうか。
 地域社会における犯罪の防止は大事な課題ですが、住民が互いに活発に挨拶しあう地域では、侵入盗が少ないとも指摘されています。無機質な機械ではなく、人の力で地域共同体を再生しながら、しなやかに防犯していく方法の方が、みんな生きやすい社会になるのではないでしょうか。