札幌地裁で、国はキャリアへの対応を回答せず

t-muto2010-12-22

 2010年12月22日14:00から、札幌地裁で、B型肝炎訴訟の和解協議期日が開かれました。
 国は、3回にわたり、キャリア被害者に対する償いの方法を検討するよう求められていましたが、一部で報道されていた、交通費など、検査に組み合わせた政策対応も含め、何らの解決方法をも示しませんでした。
 裁判長は、27日16:30に次回期日を指定し、「和解に向けての裁判所の考えを提示することも視野に入れた双方の環境整備をなおご尽力いただきたい」と述べました。
 佐藤弁護団長は、「27日を受ける趣旨は、年内基本合意を目指したものであり、細川大臣もそうおっしゃっているので、そう私たちは理解し、信じて続けていきたい。しかし、前回、今回と、国には、我々が検討できる中身でない、手ぶらで臨まれたと言うしかない状況。27日に和解協議を持つ以上、具体的に私たちが検討できる案を持ってきていただくことが必要不可欠。」として、「1 キャリアの和解水準・内容、2 その余の和解水準、3 和解対象者の認定基準、認定方法、4 慢性肝炎の認定基準について27日まで検討いただきたい。」と述べました。
 以下、記者会見におけるコメントややりとりです。

北海道訴訟高橋朋巳代表
 全く進展がなく、国のやってるふり、見せかけに踊らされている。国が加害者であり、国の責任だと自覚していないと、改めてまた思いました。これだけ国民の命が関わっていることなのに、具体的な行動・言葉、何も示してきません。やってるふり、ぬか喜びはいい加減にしてほしい。和解協議の中で、国の代理人はこういいました。「国は原告のことをまだ理解できていない。」理解できていないで、ただずるずるずるずると時間がたっているだけです。理解できていないのなら、話を聞いて理解するべきです。
北海道訴訟高橋元一副代表
 菅内閣はまだ仮免許といわれているが、裁判長も、次回は毅然と臨んでほしい。
北海道訴訟清本太一副代表
 検査費用だけというのは、とても人を救える内容ではない。キャリアに対していい薬ができても、治療を受けられずに指をくわえるしかなくなる。医療費が無料化になれば救えると思う。細川大臣には、人を救える案を出してほしい。
全国原告団谷口三枝子代表
 最後の期日なのに何の提案もない、原告の気持ちを踏みつけられた。次回期日には、裁判長から一言がほしい。菅首相、首相になったら、権力が何より大事ですか。命よりも財源が大事ですか。キャリアも同じ被害者です。首相に政治決断をと、こころから願っています。
 政府は、すべてにおいて卑怯な手段を執っています。
 参考人質疑、超党派による解決要請に、原告を立ち会わせない、マスコミをシャットアウト、国民の理解をというのなら、私たちの苦しみをマスコミに報道させるべきだと思います。国に都合のいいことは報道させず、自分に都合のいいことだけ報道させるのは卑怯だと思います。加害者としての責任を果たしてほしいと思います。年内解決を勝ち取るぞと行ってきたけど、本当に悔しい思いです。でも、最後まであきらめません。613名、ひとり残らず償いを勝ち取るぞという思いです。
東京原告団岡田京子代表
 私たちは、少しでも和解が前に進むようにという思いで足を運んでいます。しかし、今年最後の期日で、開いた口がふさがらない、ただ、呆然、びっくりという思い。私たちは死にものぐるいで戦ってきましたが、その結果がこれですか、という気持ちです。裁判所には、和解が進むようリードしてほしい。国は、「裁判所には伝えている。手ぶらでは来ていない。」とおっしゃっていました。しかし、私たちは何も聞くことができない。裁判所から私たちに伝えられるような回答を国はしてほしい。首相に政治決断をしてほしい。道は険しいものとなりましたが、最後までがんばっていきたい。
大阪原告団久永信行代表
 私たちは年内に解決したい。細川厚生労働大臣と同じ思いです。今年最後の期日で何らかの回答があると思いましたが、何もありませんでした。期日の前にも首相が決断すべきことです。命もかかっている問題こそ決断すべきです。考えを改めていただき、年内解決していただきたいと思います。除夜の鐘を聞くまで戦っていきたい。
九州原告窪山寛さん
 今日、年内基本合意ができると信じてやって参りました。3年戦ってきた集大成ができるのではないかと思って北海道にやってきました。国は、何度会っても、ただ、もって帰るというばかり。メッセンジャーボーイと何回会っても話は進まない。この3回は無駄だった。
私は、次の4月には、医者が言った、余命のピリオドです。でも、キャリアの人たちも、私と同じ被害者なんです。一緒に戦ってきましたし、今後も戦っていきたい。
北海道訴訟37番さん
 私たち原告は、年内基本合意を目指し、12月22日を特別な日と思い、東京での行動に参加してきました。超党派の要請書を出していただくところまできました。国は同じ土俵に乗っていないと佐藤団長がおっしゃっていました。私は、和解協議に立ち会って、初めてそれが分かりました。私たちは、彼らの土俵で戦っていました。彼らは、私たちを見ていませんでした。自分たちが加害者だと思っていないし、私たちに賠償しようとも思っていなかったことが分かりました。そんな人たちに、キャリアの苦しみを分かってほしいと言っても、分かってもらえないのだと言うことも分かりました。人間の体にウイルスが入り込んで、何も変わらないなんて言うことはあり得ない。感染したことに対する責任を分かってほしいと思いました。重篤な方とキャリアの方の差を、切り捨てのないようにやっていこうという原告団の思いを崩すことはできない。
北海道訴訟原告木越さん
 匿名原告でしたが、実名公表した方が、被害者としての思いが伝わるかと思い、実名を公表致します。ここに貼っているのは、国会議員の先生方からの解決を求めるメッセージです。

Q:木越さん、感染判明の経緯、提訴の経緯を教えてください。
A:8年前の会社の健康診断で、東京で慢性肝炎といわれた。江別に戻って1ヶ月入院した。東京に戻らなくていい、札幌に配置転換といわれた。その半年後に会社を首になった。ゼフィックスをバラクルードに変えた瞬間、肝臓の数値が1000を超えた。そのときに、会社都合でいいからやめてくれと言われた。その後、インターフェロンを読んだ。新聞で裁判のことを知り、8月に提訴しました。
Q:27日の期日を入れた部分の趣旨は?
A:(弁護団)裁判所としても年内解決の可能性はあるという前提で、裁判所の考えも言えるならば言うということだった。
「原告の皆様は、何とか年内というお考えは強いと伺っていますので、来週にでも期日を入れたいと思います。27日だったら裁判所も対応できます。その27日にそれこそ和解に向けての裁判所の考えを提示することも視野に入れた双方の環境整備をなおご尽力いただきたい。」という発言だった。
 私たちは、ただ単純に期日を入れればいいというものではない。4点について検討してきてほしいと言うことを前提で期日を入れた。
Q:今の裁判所の考えとは、所見と言うことか。
A:そういうことを含むと考える。
Q:国側が歩み寄りをしない場合は、所見を示し、一定の解決の方向性を示すと言うことか。
A:あり得ると言うことだと思う。
Q:政治決断がないと年内合意はないという情勢か。
A:そうだ。
Q:明日以降の行動予定は?
A:明日全国の原告が集まり、あさって、クリスマスイブは、12:00官邸前、15:00銀座マリオン前、17:00も官邸前(キャンドル行動)の抗議行動の予定。
Q:次回16:30ということだが、30分で進展するのか。
A:エンドは区切っていない。17:00で終わりということではない。

佐藤弁護団
 国も、早期に和解をしたいということで和解協議がもたれているが、2度、3度と空転している。国が、裁判所を通じて、この問題の解決水準を切り下げようと考えているのであれば、言語道断といわざるを得ない。裁判所としても、そのような立場で和解を進めてもらっては困る。
 国はいろんな情報をマスコミの皆さんに流しているようだが、私たちは、和解の場で提案を受けていない。被害者が受けた被害に見合う解決が何なのか、その合意形成が必要だと思っている。しかし、国が、提案をなぜ公にできないのか、疑問だ。私たちの求めている解決水準が社会的に相当なものかが議論の場にでることが大事なので、4点の検討を求め、それを議論する場として27日の期日を受けた。
 和解協議は、社会的に相当な解決水準が何か、議論できる場であってほしいし、裁判所にはうまく仕切ってほしい。