B型肝炎九州訴訟最高裁判決

 本日15:00から、最高裁第2小法廷で、慢性肝炎を再発した被害者に対し、最初の慢性肝炎発症時を除斥期間の起算点としてその請求を棄却した原審福岡高裁判決を取消し、差し戻す逆転勝訴判決が出されました。以下、弁護団の声明です。

令和3(2021)年4月26日

全国B型肝炎訴訟原告団弁護団

 

声明

1 本日、最高裁判所第二小法廷(三浦守裁判長)は、集団予防接種における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎を発症し、沈静化した後に再発した原告らに対し、最初の慢性肝炎発症時を起算点として除斥期間(旧民法724条後段)を適用した福岡高等裁判所の判決を破棄し、逆転勝訴の判決を言い渡した。

  本判決は、除斥期間という時の経過による権利の制限を形式的に適用するのではなく、客観的に損害賠償を請求できるかという観点から除斥期間の適用を制限したものであり、被害者救済のために最高裁判所が司法の職責を果たした画期的な判決であって、高く評価できる。

2 本判決は、「どのような場合にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症するのかは、現在の医学ではまだ解明されておらず、HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時点で、後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症することによる損害の賠償を求めることも不可能である。」から、「HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害は、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時に発生したものと言うべきである。」として、再発の肝炎による損害は、再発時が除斥期間の起算点となるとして、原告らの請求を認容した。

  あらかじめ請求できない損害についての請求をしていなかったことを、被害者の不利益に解釈してはならないという民法の本質から原判決を取り消したものであり、法理論としても重要な意義がある。

  本判決は、これまでの最高裁判例が、旧民法724条後段が除斥期間であることを前提としながらも、除斥期間の適用をできる限り回避して被害救済を行ってきた流れに即し、原告らの被害実態に向き合い、時の経過のみで国の責任を免じる不合理を許さないと判断した、まさに正義にかなった判決である。

3 さらに、裁判長の補足意見では、極めて長期にわたる感染被害の実情に鑑みると、上告人らと同様の状況にある特定B型肝炎ウイルス感染者の問題も含め、迅速かつ全体的な解決を図るため、国に協議を行うなどして感染被害者等の救済にあたる国の責務が適切に果たされることを期待するとされた。極めて的確な指摘である。

  上告人2名と同様の再発肝炎の被害者はほかにも111名、それ以外に除斥の肝炎を闘っている被害者も200名以上いる。これらすべての被害者に対し、国は加害者として誠実に向き合い、迅速に解決のための協議を行うべきである。

4 我々は、不合理な除斥の壁に立ち向かう被害者全員の救済を求めて、全国の原告団弁護団、支援者と一丸となって闘い続ける決意である。

以上