B型肝炎訴訟で、除斥期間に関する逆転不当判決

2019年4月15日に、福岡高裁で、一審勝訴(2017.12.11。ブログでも報告しています)の、慢性肝炎被害者で、国から除斥期間の適用を主張されている被害者2名に対する逆転敗訴の不当判決が出されました。

2018.10.15の高裁の第2回弁論期日で結審し、いったん2019.2.18に判決期日が指定されましたが、2018.12.14に、「裁判体の都合」という理由で判決期日が延期されていました(集会会場代1万3200円がキャンセルで全額無駄になりましたが、一言の断りもお詫びもありませんでした。市民感覚とはかけ離れていると感じましたが、判決が人質に取られているので、何も言えませんでした。)。

判決文は「なんとなく分かったつもりで結審してみたものの、判決を書こうとしたらよく分からなかったから延期してみた。きっとこういうことなんでしょ?」という感じですが、プロの司法記者ですら「何を言っているのかよく分からない」というお粗末な内容です。

理論的にも実質的にも不合理で、過去の最高裁判例にも反しているので、最高裁で必ず逆転できるものと確信しています。

以下、原告団弁護団の声明です。

 

2019(平成31)年4月15日

全国B型肝炎訴訟原告団弁護団

声明

 

1 本日、福岡高等裁判所第5民事部(山之内紀行裁判長)は、慢性肝炎が再発した原告2名の請求を認めた原審・福岡地裁判決(平成29年12月11日)を破棄するという不当判決を下した。

2 原判決は、HBe抗原陽性慢性肝炎発症時に、再発したHBe抗原陰性慢性肝炎の損害がすでに発生しているとみるのは非現実的であるとし、賠償を求めることは不可能であるとした。

そのような正しい医学的理解をもとに、被告国の除斥適用の主張を排斥し、原告の請求を認容した。

3 しかし、本件判決は、以下の理由で原審の正当な法的判断を覆した。

すなわち、HBe抗原陽性慢性肝炎発症後、セロコンバージョンした後のHBe抗原陰性慢性肝炎は、例外的な症例であるとともに、先に発症したHBe抗原陽性慢性肝炎と比較して、より進んだ病期であることは認めた。ところが、慢性肝炎は、長期の経過の中で、肝機能が軽快、増悪を繰り返すことがもともと多く、これらはすべてHBVへの免疫反応に過ぎない。核酸アナログ製剤が登場した現在では、HBe抗原陰性慢性肝炎の病状が重いとは直ちにいうことができない。そのため、HBe抗原陰性慢性肝炎がHBe抗原陽性慢性肝炎とは質的に異なる新たな損害とはいえないなどとした。

 しかしながら、本判決も認めるとおり、HBe抗原陰性慢性肝炎は、例外的であることから、最初のHBe抗原陽性慢性肝炎発症時において、客観的にその損害賠償請求権を行使することはおよそ不可能である。また、本判決も認めるとおり、HBe抗原陰性慢性肝炎はHBe抗原陽性慢性肝炎より進んだ病期にあり、投薬治療が必要不可欠であるから、より進んだ新たな損害に他ならない。

3 そもそも本件は、被害者らは、何の落ち度もなく、誤った国の公衆衛生行政によりB型肝炎ウイルスに感染させられた者である。

具体的事実関係を見ても、むしろ損害発生から20年間という除斥期間が適用される被害者らは、それだけ長期に渡って苦しみ続けた人々である。

本件判決は、そのような社会的背景から目を背け、司法の役割として国民から期待されている紛争解決機能、被害者救済機能をも果たさずに、国の「逃げ得」を認める著しく不当な判決である。

4 原告らは、このような明らかに誤った判断に基づく不当判決に屈することなく、司法による当然の是正を求めて、ただちに上告することを決意した。

我々は、不合理な除斥の壁に立ち向かう被害者全員の救済を求めて、全国の原告団弁護団、支援者と一丸となって闘い続ける決意である。 

以上