歯科感染防止に関する塩崎大臣発言

 2017年7月3日16:00から、厚生労働省省議室において、B型肝炎訴訟原告団弁護団厚生労働大臣との大臣協議が行われました。
 これは、2011年6月28日に基本合意書を締結した原告団弁護団の活動として毎年行われているものです。
今回は、真相究明・再発防止に関して、昨年に引き続き、歯科の院内感染対策の促進に関する協議を行いました。
 事前に、昨年塩崎大臣に約束していただいた、歯科の口腔内で使用する医療器具の連続使用に関する現場の状況や、感染防止策を含む「歯科外来診療環境体制加算(「外来環」)」の届け出率が低い原因等の調査の結果を踏まえ、(1)歯科における院内感染防止を徹底するための環境整備をただちに行うこと、(2)外来環等による感染防止策の向上を図る場合、標準予防策の徹底を重視し、これがなされれば適用されやすいようにするなどして標準予防策がとられる医療機関が増加するような制度の改定を行うこと、(3)以後も定期的に現場の状況を調査し、感染防止策の向上を図る継続的な施策をとること、(4)国民向けに、院内感染対策の重要性を理解し、みずから医療機関の安心・安全を知ることができるよう情報開示を図ること、を求めていました。
 冒頭で、全国原告団の梁井朱美さんから、みずから、被害者でありながら子供たちに母子感染させてしまった苦しみから、加害者にはなりたくないこと、感染症の申告によってをさせて感染防止策を変えるというしくみが非科学的であり、すべての患者の血液が感染可能性のあるものとして感染防止策をとること(標準予防策)が徹底されるべきであることなどが訴えられました。
 つづいて、塩崎大臣から概要以下の発言がありました(ただし、弁護団の再現です)。標準予防策の徹底が科学的に必要であり、その問題は命に関わる重要課題なので、コストの課題があったとしても妥協が許されない問題である。口腔内医療器具の連続使用防止100%実施に向けて今後も継続的に調査し、その向上を図る。本年度の中医協において、診療報酬上の対応もしっかり議論してもらう等の方針が示されました。

大臣
 歯科での院内感染の可能性の排除の問題はたいへん重要な問題だと受け止めております。
 医療機関における院内感染の実態調査、意識調査につきまして、本年5月に明らかになった調査結果を見ますと、平成24年度の調査結果と比べると、若干はよくなっているわけではございますが、それは3割という数字から5割という数字で、到底満足できるような結果ではない、と思っております。
 今回やったような実態調査についても、定期的に継続的に実施をしながら、しっかりと把握をしていきたい、その改善方を図っていくと言うことをやっていかなくてはいけない。
 歯科の医療の現場にあっても、科学で感染症を排除すると言うことを徹底しなければならない。院内感染対策をさらに充実してより安全で安心な歯科医療を提供できる環境が整備されるように、今年末の診療報酬改定に向けて診療報酬上の対応について、中医協でよく議論してもらおうと思っています。
 この感染症対策は、本当に科学的にしっかりやらなくてはいけないので、中医協で、診療報酬での対応も含めてしっかり議論してもらわなければいけないと考えております。皆さんの声を保険局の方にしっかりと伝えていく、中医協の方にも伝えていく、議論してもらいたい。ことは、誰にでも起きうる感染症の問題だと思います。
弁護団:具体的に厚労省として目指している院内感染対策のための施策についてご説明を。
大臣
 講習会を厚労省予算事業でやっているけれども、歯科医師会を通じた歯科医療器具を通じた院内感染対策の啓発をやっているし、また、皆さん方団体主催の歯科の院内感染防止対策のシンポジウムにも厚労省から参加させていただいて、情報提供や共有のお話をしているわけでして、今後も、こういうシンポジウムなどを通じて、国民や患者の方々からのご意見を伺いながら、歯科医療関係者の講習会事業などの周知・啓発を、通知を出しながらしっかりと努めていきたいというのが第1点でございます。
 それから、施設基準などの届け出医療機関の実態の情報開示につきまして、厚生労働省の地方支部局である地方厚生局のホームページですでに都道府県ごとに医療医療機関の届け出状況がわかる医療機関名簿を公開しております。しかし、地方厚生局のホームページを見る人というのはよほどの人なので、各施設基準等について届け出た事項を、医療機関内の見やすいところに掲示をすることになっていまして、それを徹底して患者に対する情報開示をしっかりやってもらわないといけない。
 先ほど、診療報酬の話を申し上げました。ハンドピースを毎回換えると言うことは、感染症対策として科学的にやらなくてはいけない、政治的妥協などと言うのは許されるものではないし、財政的にも制約があるということが本来、基本的な感染症対策であるならば、それは受けて立たないといけないことだろうという風に思います。つまり、今、加算でやっておりますけれども、加算というものは、やってもやらなくてもいい、やったら少し差し上げますという考え方でありますから、それは考え方が違うんじゃないかと思っていまして、これは全員がやらなければいけないことであるので、それは加算ではなくて、むしろ診療報酬でちゃんと見た上で負担を全体でしょっていくということであった方がいいのではないか、そこを中医協で議論してもらう、そういうことを申し上げているわけであります。加算をとったところがやるだけ、という世界はいかがであるか、科学的ではないのではないか、というのが私の考えであります。
弁護団HIV事件が社会問題となる前の、患者に感染症の申告をさせ、仕分けをして滅菌をするというというあり方ではダメだと考えている。どこでもきちんと標準予防策がなされる必要があるとお聞きできてたいへん心強い。
大臣
 今回、骨太の方針という毎年閣議決定するものがあるんですが、その中に、口腔ケアが全身の健康につながると言うことを書き込みました。あまねく口腔ケアをきちんと行わなければならない、このことは、そうなれば感染対策をしなければならないのは当然のことですから、歯科でも出血をすることもあるわけですから、血液から感染が起きるわけですから、このことはあまねくやってもらわなければならない。コストはかかるもので、一つが30万くらいするハンドピースなので、1日20人患者さんが来られるとして、いくつか余裕を見て持たなければならないとして、コストがかかることは間違いない。命とコストを比べると、命の方が大事と考えるべきだと私は思います。