謝罪なきままの財源論

 B型肝炎訴訟の解決について、日経新聞の今日の朝刊には、「和解金3兆円どう捻出」の見出しで、「巨額の財源をどう捻出するかが課題となるが、政府内では所得税の特別増税で賄う案なども浮上している。」「財源確保策として政府は増税の可能性も含めて検討する方針。ただ2011年度税制改革で高所得者向けの個人増税が相次いだのに加え、消費税率の引き上げ論議もこれから本格化する見通し。新たな負担増の理解を国民にどう求めていくのか。合意形成は難航が必至だ。」という記事があります。
 しかし、国は、11月の和解期日で、「政府案なら最大2兆円、原告案なら最大8兆円かかる」として、増税を匂わせました。その後、新聞では、厚生労働官僚からさえ、「えげつなかった」と振り返ったという記事が掲載されました。
 裁判所の和解所見が出て、またもや財源論ありきの様相を呈しつつあります。
 民主党政権は、国の過ちを認め、被害者に謝罪することなく、財源論の説明ばかりを報道陣に行っているのでしょうか。11月にも、原告団から、「私たちは、被害者なのに、国民に迷惑をかけるお荷物のように言われてくやしい。」と言われ、国会では、財務大臣は、「いい方がまずかった。」と謝罪したばかりです。
 国は、またもや、加害者の自覚もなく、被害者をお荷物扱いしようというのでしょうか。
 そもそも、そのようなやり方は、被害者に対するさらなる加害行為にほかならず、到底許されないものというべきです。
 毎日新聞の夕刊(福岡版)では、以下の記事が出されていました。
 民主党大会前の政治利用のためとは思いませんが、1月18日の和解協議期日は、突然1月11日に早められ、18日の期日は取り消されました。しかし、原告をお荷物扱いしながら、和解受け入れ表明を政権の支持率アップに利用しようというのであれば、矛盾しており、とうてい賢いやり方とは言えないでしょう。
 
B型肝炎訴訟:札幌地裁和解案 原告ら「一歩前進」 政府方針評価、救済の財源にクギ

 B型肝炎訴訟で札幌地裁が和解案を出した翌朝の12日、関係閣僚会合で政府として和解案を受け入れる方針が確認された。九州の原告たちは和解案や政府の動きに評価の声を上げる一方、政府に対して改めて謝罪を求めたり、和解案の問題点を指摘する声も出た。【岸達也】

 全国原告団の谷口三枝子代表(61)=福岡県筑紫野市=は「札幌地裁の提案した救済水準はある程度納得できる内容。それを国がのむなら一歩前進だ」と評価した。

 しかし、「キャリアー(未発症者)の救済水準が低い点は受け入れがたい。国はキャリアーの悲痛な訴えに耳を傾け、最終的には政治決断で水準を高めてもらいたい」と指摘した。

 九州訴訟の原告、窪山寛さん(64)=福岡市東区=も「国が迅速に対応し始めた点は評価できる」としつつ、「原告の中には肝臓がんの再発を繰り返し時間がない人もいる。国はもう和解のテーブルから逃げないでほしい」と訴えた。

 九州訴訟弁護団の武藤糾明事務局長は「今後は財源確保が課題になるはずだが、政府はまず謝罪し、国の責任を国民に十分説明した上で、財源の問題に取り組んでもらいたい。謝罪がないまま、増税論議などをすれば、被害者の原告らはいわれのない批判を社会で浴びかねない」と政府の対応にクギを刺した。

 全国原告団は今月22日に東京都内で集会を開き、札幌地裁の和解案の対応を検討する予定。