B型肝炎九州訴訟第12回期日

原告竹井さん

 2010年11月1日11:00から、福岡地方裁判所で、B型肝炎九州訴訟の第12回口頭弁論期日が開かれました。
 今年8月5日に提訴した原告の竹井順一さんが、被害を訴えました。
 竹井さんは、赤ちゃんから大人まで、記念の手型・足型を作る仕事をしています。ソフトバンクホークス川崎宗則選手や、漫画家の長谷川法正さんの手型を作ったこともあります。
 竹井さんは、2009年3月、体がだるくなったため検査を受けたところ、B型肝炎を発症していることが分かりました。その1年前に、仕事仲間の西村さんが突然B型肝炎による肝ガンを発症して、大手術をしていました。
 竹井さんは、自分がB型肝炎と診断され、いつか肝ガンになるのではないか、という不安に襲われるようになりました。
 先月のエコー検査で、医師から「肝ガンの疑いがある。」といわれ、CT検査を受けなければならなくなりました。奥さんとも、万一の場合の話をしました。さいわい、肝ガンではありませんでしたが、いつ発症するのかという不安はとても大きなものになっています。孫ができたら、いっぱい手型を作ってあげようと思っていますが、その日がくるまで仕事を続けられるだろうかと不安です。
 病気のために仕事が思うようにできなくなり、今後一生不安が続く竹井さんは、国の対応が不誠実で、和解協議がいっこうに進まないことに憤りを覚えています。被害者のことを他人事と思わず、ちゃんとみて下さい、と訴えました。
 その後、佐川弁護士が、無症候性キャリアの被害が、C型肝炎の被害者と同じように人生を変えられること、母子感染が起こること、恋愛・結婚に障害が起こることであり、B型肝炎特有の被害として、突然発ガンする恐怖があることなどを指摘しました。
 最後に、小宮弁護士が、加害者である国が、財源論を持ち出すことにより、「負担を負う被害者である国民の代表」の様な顔をして被害者を攻撃する不当性や、国の試算が過大であることを指摘し、被害者を切り捨てたり、命の価値の切り捨てを行わない和解案を出し直すよう求めました。
 期日前の門前集会で、薬害スモン訴訟の原告の草場さんは、「ずっと以前のスモン病訴訟の時も、国は、『多額の税金がかかるから、国民が納得するはずがない。』と言って、和解解決を引き延ばしました。しかし、国の加害行為で被害を受けた犠牲者に、税金から償いのお金を払うことを怒る人が本当にいるでしょうか。私たちもこういう言い方で責められてつらい思いをしました。国の責任と、被害を知った人は絶対に怒らないはずです。負けないようにがんばって闘いましょう。」とおっしゃいました。
 期日後の記者会見で、薬害C型肝炎訴訟の九州原告団代表の出田妙子さんは、以下のように原告団を励まされました。
「最近の報道をみていると、国は、お金のことばかり言っていて、卑劣だと思います。3年前の私たちが闘っていたときと同じだと思います。私たち薬害肝炎の原告は、現在1800名で、お金はそんなにかかっていないのに、厚生労働省は、3年前、国会議員に対して『2兆円かかる』という嘘の情報を流しました。
 財源論や、増税を国民に向けて言うのは信じられません。
 今日の意見陳述でも、B型肝炎被害者の方の気持ちはよく分かりました。私も、慢性肝炎で、病気が進展する不安に責められていました。皆さんの被害・苦しみは私たちと一緒です。
 私たちは、『命の重さに差をつけるな』『1人も切り捨てるな』というスローガンで闘ってきました。
 私たちも、先が見えない中を闘ってきました。でも、自分たちは正しいことをやっている。いつか分かってもらえると信じてやってきました。気持ちを1つにすることが大事です。がんばって下さい。」

 今日も、天候の悪い中、たくさんの傍聴支援の方々に傍聴頂き、傍聴席がいっぱいになりました。どうもありがとうございました。
 厚生労働省は、薬害肝炎の時に、300億円規模の問題を「2兆円かかる」と触れ回って、国会議員をだました前科があります。
 現在の政府は、このような詐欺的な説明の原因を調査して、再発防止策を立てることができているのでしょうか。
 官僚の言いなりで、また過ちを繰り返していないでしょうか。
 そのような説明こそ、現在求められているのではないでしょうか。
 今日の国会で、菅首相は、「B型肝炎は、薬害肝炎と比べて因果関係があいまい」などという、最高裁判決で決着済みの問題を蒸し返す官僚の言いなり答弁を繰り返しています。官僚言いなりの「官政権」に、いったい、政治決着はできるのでしょうか。