日経新聞社説「肝炎賠償で増税は筋が通らぬ」

 今朝の日経新聞で、B型肝炎に関する社説が出されていました。
 正鵠を射た論旨で、かつ、時宜を得たもので、さすがに日経新聞というべきです。
 全国民に回し打ちをさせ、多数の被害者を出した昭和23年から63年までの歴代の厚生労働省の担当者の天下り先での退職金や年金を削ったり、その関連の特別会計を見直すことが必要ではないでしょうか。
 余命宣告をされ、就労にも困難をきたすような被害者が自分で身を削りながら治療費を支払って闘病しているのに、国民の生命をもてあそんだ官僚が「どこ吹く風」で悠々自適の生活をしているというのでは不正義だと思います。
 加害者の特権を仕分けるのであれば真の「特別会計事業仕分け」ですが、手つかずなら、「事業仕分けという名のパフォーマンスによる、天下り先利権の温存による官僚主導セレモニー」にすぎないでしょう。まず、加害者から財源をとりあげることが政治主導の第一歩でしょう。

肝炎賠償で増税は筋が通らぬ

2010/10/19付

 集団予防接種の注射器使い回しが原因としてB型肝炎患者らが国家賠償を求めた訴訟で、政府が和解案を示した。訴訟原告以外の患者・感染者も賠償の対象に含めており、成立すれば今後30年間で2兆円が必要になる。この巨額賠償の財源確保と増税を結びつける発言が早くも政府から出始めたのはおかしい。

 政府案は、肝がんの患者や死亡した患者の家族に2500万円を支払うなどの内容。未発症の感染者は救済の対象外とし検査費を助成する。原告側はC型肝炎薬害救済法の給付金と同水準(最高4千万円)の賠償金と、すべての患者・感染者の救済を求めており、隔たりは大きい。

 B型肝炎は感染経路が多様で、予防接種が原因だと立証するのが難しい。だが4年前の最高裁判決は注射器の使い回しを放置した国の責任を認定したうえ、厳密な立証なしでも因果関係を認め、賠償を命じた。

 政府案は約3万3千人とみられる患者と、死者の遺族にまず約3100億円、病状の進行に伴い今後30年間に1.2兆円を払うことなどを見込む。2兆円は国民1人あたり1万6千円分の負担になるという。

 仙谷由人官房長官は政府案を示した12日の記者会見で「国民全体で救済策を分かち合う観点で国会で議論すれば解決できる」と話し、15日は野田佳彦財務相が「国民負担をお願いせざるを得なくなるのではないか。(増税は)あり得る」と述べた。

 予防接種で感染症にならずに済んだ多くの人が、不幸にして感染した人たちを助けるのは当然だという、社会福祉的な考え方をこの問題に当てはめる空気が現政権にある。

 政府案の賠償額が妥当かどうかはともかく、患者は助けなければならない。だが、これは行政のミスの後始末をする話。すぐに増税に結びつける議論の運び方は不適切だ。

 例えば旧厚生省の元責任者らが自費を提供するとか、国家公務員が自主的に福利厚生費を削り財源の一部に充てる。感染の危険に気づいていた医療界に負担を求める。それらがまずあって当然。必要度の低い歳出を削り、肝炎患者・感染者への賠償に回す発想も重要だ。仮にも、この巨額賠償を消費税増税の理由の一つに使うのは、納得できない。