B型肝炎九州訴訟和解期日報告

 2010年10月18日16:00から、B型肝炎九州訴訟の和解期日が、福岡地方裁判所で開かれました。
 国は、キャリアを切り捨て、薬害肝炎救済法の基準を大きく下回る解決水準を示しました。
 このような賠償額を示す理由として、非公開の和解協議の中で、国の代理人は、「財源論が理由ではない。それは、書面で書いているとおりである。」と述べました。
 他方で、裁判所の外で、財務副大臣財務大臣、仙谷官房長官などが、繰り返し財源論について述べるとともに、増税論まで言及しています。
 しかし、裁判では、あくまでも、(1)因果関係があいまいである、(2)最高裁判決の基準をもとにするとこうなる、との建前論を崩していません(この点に対する反論は、10月12日に記載したとおりです)。
 にもかかわらず、国は、多額の財源が必要になり、国民に大きな負担をかけることになる、と被害者側に詰め寄っています。
 そもそも、国は、加害者として、償いきれないほどの過ちを犯しているのであれば、何はともあれ、すぐに被害者に謝罪し、許しを請うのが正しい姿なのではないでしょうか。
 「おまえたちは、国民のお荷物なんだよ。これ以上がたがた言うな!」と居直るのは、とても加害者の態度とは思われません。
 国は、原告らが被害者であると知っていますが、自分の責任と被害の大きさをごまかすために、被害者を被害者と正式には認めず、謝罪もしないままです。
 1年で4兆円以上かかる子ども手当の導入には、「増税が必要だ」とはいわず、国民に疑問の声が上がっても強行したのに、野田財務大臣が、「B型肝炎の賠償金が1年あたり1000億円かかるとしたら、増税が必要だ」というのは、明らかに不合理です。
 「コンクリートから人へ」「命を守る」と宣言した鳩山政権を継いだ菅首相は、「命の切り捨て」しか眼中にないのでしょうか。
 今日の和解期日には、薬害肝炎訴訟原告の小林さんが駆け付け、「B型もC型も、同じ肝炎の被害で苦しんでいる。国は早期全面解決をすべきだ。」と激励されました。

以下、九州原告団弁護団の声明です。

2010年10月18日
B型肝炎訴訟・国の「財源論」について
                        B型肝炎九州訴訟原告団弁護団

 本日、福岡地方裁判所の和解協議において、被告国から「和解金額に関する国の考え方」が示された。その内容が、薬害C型肝炎患者に対する救済法と合理的理由もなく区別していることの不合理性は、すでに指摘したとおりである。
 最大の問題は、被告国が、何ら根拠を示すことなく、莫大な「国民負担」が必要であると一方的に主張していることである。
 本件訴訟は、昭和23年から63年までの40年間、肝炎感染の危険性が明白だった予防接種の回し打ちを放置し続けた国の加害行為の責任の取り方が問われている。
 40年間にわたり、全国民に強制して回し打ちをし、その結果B型肝炎に感染した被害者が多数に上るのは、国が長きにわたって、国民の生命・健康を危険にさらし続けた責任の重さと大きさを物語るものである。
 この訴訟は福祉施策をお願いする訴訟ではなく、国の違法行為に対して謝罪と償いを求める訴訟であり、財源問題を理由に賠償額を減額できるものではない。長妻厚生労働大臣(当時)も、本年4月2日に「財政の枠組みありきではありません。」と答弁している。
 多数の被害者を出してしまった加害者であれば、「賠償すると大変なことになる」と居直る前に、まずは多数の被害者に対して直ちに謝罪すべきである。
国は、いまだに原告の誰1人も被害者と認めたことがなく、謝罪もしたことがない。このような国の姿勢は、自らの加害責任をうやむやにした上で、被害者の被害もうやむやにするものであって極めて不当である。
 このように国の責任を棚上げにして、国民に対して必要な説明も行うことなく、「国民の理解と協力」を口実に本件の早期全面解決を拒むことはとうてい許されない。