今朝の西日本新聞の社説で、B型肝炎訴訟の問題が取り上げられました。
加害者でありながら、被害者に対する解決策を誠実に提示しないばかりか、無理難題を要求して解決にそっぽを向く菅政権の姿を正確に捉えた社説です。
早朝から、原告さんの間で、この社説に励まされたとの声が上がっていました。
以下、引用します。
B型肝炎協議 国は救済の意思を明確に
被害者救済を目指す和解協議の意味を、国はどこまで分かっているのだろうか。集団予防接種をめぐる全国B型肝炎訴訟で、札幌地裁の北海道訴訟に続いて福岡地裁の九州訴訟でも、国は原告側にとって極めて厳しい救済案を示した。
乳幼児期の予防接種の際、注射器の使い回しでB型肝炎ウイルスに感染したとして、全国10地裁で患者ら452人が国に賠償を求めている。国は札幌、福岡両地裁の和解勧告を受け入れ、今月、初の和解協議が相次いで開かれたのだ。
国は従来、予防接種を証明する手段として母子手帳の提示を求めてきた。それを今回、母子手帳に代わる「合理的な代替証拠」でもいい、と提案した。戦後間もなく接種を受けた人もおり、母子手帳がない原告は約6割に上る。大幅な譲歩に見えるが、実はそうではない。
「代替証拠」の具体策がないのだ。国は考えとして「市町村が管理する予防接種台帳」などを例示したが、福岡地裁での協議では「検討中の段階」とも述べたという。この台帳自体、保存期間は数年であり、国側も「(原告らの台帳は)ほとんどないだろう」と言う始末だ。
また、これまで国は、出産の際の母子感染ではないことを確認するため、母親の血液データも要求してきた。今回は母親が死亡している場合に限って、年長の兄か姉のデータで認めるという。これには原告側は「本人が一番上や一人っ子の場合はどうするのか」と反論する。
ほかにも、輸血や手術などによる感染でないことを過去のカルテで確認することを求めるなど、厳格なのだ。原告の接種時期は最新でも20年以上前だ。そんな人に一つ一つ立証を迫るのは、どだい無理な話ではないか。原告団が「被害者切り捨てだ」と憤るのも理解できる。
実際に集団予防接種を受けた何らかの「証拠」があり、予防接種以外の感染原因を否定できる感染者−。国は、そんな救済対象者像を描いているようだが、これでは、これまでと主張は基本的に変わっていないと言わざるを得ない。
そもそも、予防接種は1948年から94年まで義務だった。注射器使い回しの危険性は早くから指摘されていたが、当時の厚生省が注射筒を含めて使い回しを禁じたのは80年代後半だ。この間に予防措置をせず感染を広げた国の責任は2006年の最高裁判決で確定している。
最高裁判決は、母子感染なども検討したうえで諸事情を考慮し、感染の可能性の高い感染経路は予防接種のほかにはなかった−という「可能性」に基づき、感染を認定した。100万人を超すとされるB型肝炎感染者のうち、何人が予防接種による感染者なのか、そのデータはないのだ。だからこそ和解協議は、この判決からスタートすべきだろう。
国は患者救済の意思を明確にして、より現実的な救済策を示す必要がある。そのうえで、原告と真摯(しんし)に向き合い、知恵を出す中で解決策を探るべきだ。
=2010/07/20付 西日本新聞朝刊=