厚生労働大臣とB型肝炎原告団との面談

直接協議を求める谷口代表

 2010年5月18日午後8時から、衆議院第1議員会館民主党A会議室において、B型肝炎訴訟原告団と、長妻厚生労働大臣との面談が行われました(原告団25名、弁護団15名参加)。
 冒頭で、原告団代表の谷口三枝子さんが、B型肝炎訴訟の早期解決、すべての被害者への謝罪と償いを求めました。
 また、国が、札幌地裁で、和解協議入り以外に何らの具体策も出さず、因果関係の争点に対する国の考え方を説明するのにも2ヶ月かかると回答している状況が、ただの解決の引き延ばしにすぎないことを指摘しました。そのため、訴訟外に、政府と原告団弁護団との直接協議の場を設け、ただちに政府内の検討状況を明らかにし、具体的な和解案を提示し、実質的な協議を進めるよう求める要請書を厚生労働大臣に提出しました。
 続いて、長妻厚生労働大臣が挨拶をしましたが、その中で、政府としては、裁判所の仲介のもとに進める方針であるとして、暗に直接協議を否定するかのような発言を行うとともに、今後も政府として誠実に対応するという抽象的な答弁を行い、何ら具体的な進展は見られませんでした。
 その後、原告4名から、被害の訴えと早期解決への国の具体的行動を求める訴えがなされました。
 最後に、参加された、衆議院参議院厚生労働委員会理事(格)の議員の方々から挨拶がなされました。
 社民党阿部知子議員は、「協議機関の設立という原告の皆さんの訴えを強く受け止め、一刻も早い回答を促したい」と発言されました。
自民党大村秀章議員は、「協議の場を是非設けて頂きたい。政府は、札幌地裁で次回7月6日までに回答するという対応だが、そこまで行くことなく1日も早く解決策・救済策を作って、お示し頂きたい。」と発言されました。自民党からは、加藤勝信議員も出席されていました。
 公明党の古屋範子議員は、「現政権は、野党時代はこの訴訟について和解すべしと言っていたので、早急に結論を出すよう求めていきたい。」と発言されました。なお、公明党からは、山本博司議員も出席されていました。
 共産党高橋千鶴子議員は、「大臣から、謝罪の言葉がなぜでないのか。2006年の最高裁判決からすでに4年たっており、この4年分の解決の遅れを大急ぎで取り戻さなければならない。」と発言されました。
 国民新党森田高議員は、「原告の訴えを重く受け止めている。この問題に誠実に取り組んでいきたい。」と発言されました。
 長妻厚生労働大臣は、提訴後に肝臓ガンで亡くなられた匿名原告の遺族の訴えの際に、涙を流していましたが、それでも見解に全く変化は見られませんでした。
 原告らは、謝罪を聞くことなく被害者の原告が次々と亡くなっていく状況に対し、硬直した対応に終始する政府に、「命を切り捨てる政権だ」と厳しく批判しました。

 以下、原告団の提出した要請書です。

早期解決のための直接協議を求める要請書

厚生労働大臣  長妻 昭 様
2010年5月18日
全国B型肝炎訴訟原告団代表 谷口三枝子 
全国B型肝炎訴訟弁護団代表 佐藤 哲之 

要請の趣旨
 被害者認定基準と賠償額に関する直接協議を訴訟外においてただちに開始し、一刻も早くB型肝炎訴訟の和解解決を図るよう求めます。

要請の理由
 2010年5月14日、札幌地方裁判所において、被告国は、和解協議入りすることをようやく正式に表明しました。
 しかし、3月12日の裁判所の和解勧告から2ヶ月経過し、その間に2名の原告の尊い命が奪われているにもかかわらず、何らの具体的な解決基準も示されませんでした。
 しかも、争点に対する見解を示すためとして、さらに2ヶ月期日が引き延ばされました。
 裁判所の和解勧告は、2006年の最高裁判決で認定され、2009年11月に成立した肝炎対策基本法でも明記された国の加害責任を前提としたものであり、和解勧告に応じた被告国は、自らの加害責任を自覚し、誠実にその償いを行うべきです。
 最高裁判決で国の法的責任が断罪された後も、国は、被害者の実態調査を一切行っていません。加害者である国は、被害者を放置し、次々と亡くなるのを待ってきたのです。
 2008年3月の提訴後に、すでに全国で10名の原告が亡くなっています。謝罪も償いも受けないまま、被害者が亡くなっていくのを放置することは、解決の引き延ばしにとどまらず解決拒否そのものであり、国による新たな加害行為に他なりません。
 一刻も早く訴訟の和解解決を図るため、以下の枠組みで私たちとの直接協議を行い、「命を守る」政権としての責任ある対応をとるよう求めます。
 来る5月26日までに御回答下さい。
1 早期和解解決を目標とする政府と原告団弁護団との間の協議会を直ちに発足すること
2 協議会では、札幌地裁の「救済範囲を広くとらえる方向」との和解勧告指針に基づき、被害者の切り捨てを行わないこと
3 早期解決のため、札幌地裁における7月6日の和解期日には最終的な合意ができることを目標として、毎週1回、解決するまでの間協議を継続すること
4 行政の説明責任に基づき、本件に関して国の保有する情報は、すべて公開することを原則とし、この間6閣僚において協議されてきた経過と、現在の見解を、直ちに明らかにすること
5 協議内容については、その都度公開すること