高齢者の万引と、防犯カメラ(西日本新聞社説より)

 今朝の西日本新聞の社説で、「高齢者の万引 監視より声掛けで防止を」が掲載されていました。
 社説によると、2009年4月20日から6月30日までに万引きで摘発された高齢者への調査(警視庁が実施)で、犯罪動機は、24%が「孤独」と答え、「生きがいがない」が8%、「むしゃくしゃした」は7%だったそうです。収入についても64%が「ない」と回答し、19%は生活保護を受けていました。
 また、2008年版犯罪白書によると、1988年からの20年間で、高齢者人口は2倍に増えているが、摘発された高齢者は約5倍で、それを大幅に上回っているそうです。犯罪白書自体が、犯罪対策を根本から考え直す必要があると指摘しています。
 さらに社説によると、警視庁調査によると、「店員の声掛け」で全体の62%が万引きを断念したものの、「防犯カメラの設置」は2%と極端に低いと指摘しています。
 そして、「カメラの『監視』よりも店員らによる『声掛け』で防止をしたい。」としています。
 社説は、お年寄りを「孤独」にさせない社会的支援や、収入面からも、勤労意欲のある元気な高齢者が働ける仕組みを早急に整備することも必要だとしています。
 私は、全くこの社説の言うとおりだと思います。
 犯罪を防止するためには、その原因を科学的に調査する必要があり、単なる思いこみだけで対策を決定し、実行するのは、単に有効性がないばかりか、お金の無駄であり愚かなことです。
 防犯カメラ(監視カメラ)が有効な局面は、ごくごく一場面に限られています。
 私は、防犯カメラ(監視カメラ)が全部悪いとは思っていません。
 銀行のATMや、コンビニのレジなどに必要なことはよくわかります。強盗事件が発生する相当程度の蓋然性があるからです。駐車場などでは、防犯効果が科学的に認められています。
 しかし、やみくもに、町中を防犯カメラ(監視カメラ)で埋め尽くすことには効果がありませんし、費用の無駄です。
 万引きですら、よくよく調査したら、店員の声掛けの30分の1の効果しかありませんでした。
 地域での空き巣防止のためには、みんなが声を掛け合うまちづくりが最適です。空き巣を断念した理由の上位には、「地域の人から挨拶をされた」というものがあがっています。隣人との関係が希薄なところでは、物色中や逃走中に目撃されても、誰も注意していないから、目撃証言は得られないので、犯罪者には安心です。
 声掛けには、他人のプライバシーを侵害する危険もありません。
 一見効果的なように見えて効果の希薄な「機械の目」でなく、「人の声」で犯罪を防止し、それで、地域から孤立している人たちをつなぐ「人の輪」に発展させることが求められています。