パンフレット「安全・安心な歯科医療を目指して」を公表しました。

全国B型肝炎訴訟原告団弁護団で作成した、歯科の感染防止策に関するパンフレットを、全国B型肝炎訴訟弁護団のホームページで公表しました。

「患者に肝炎ウイルスへの感染を尋ね、その結果で口の中で使った器具の交換や滅菌の仕方を変える」という感染防止策は、1996年以降、安全ではないと認識されるようになり、「すべての患者に対し、等しく器具の交換や滅菌を実施する」という標準予防策がとられるべきことになりました。

医療器具の連続使用によってB型肝炎に感染した被害者団体として、自覚のない感染者の存在を前提とした、安全な感染予防策が100%実践されるよう、活動しています。

以下、ホームページ掲載文と、パンフレットへのリンクです。

https://bkan.jp/goal.html

https://bkan.jp/dental_pamphlet.html

 

真相究明及び再発防振のための活動 


「安全・安心な歯科医療を目指して」
2014年5月、新聞で、約70%の歯科でハンドピース(ドリルの柄)が患者ごとに交換(滅菌)されていないことが報道されました。まもなく、国は院内感染対策の啓発を求めました。
これ以上、医療器具の連続使用で新たな感染被害が生じることは許されないことです。
2016年には、歯科の医療現場における実態調査を求め、2017年に公表された結果でも、ハンドピースを患者ごとに交換している割合は52%にとどまったことから、その100%実施を求めました。
2018年度から、医療器具の患者ごとの交換(滅菌)は、特別な加算ではなく、基本診療料の要件とされ、原則としてすべての保険診療歯科において、標準予防策(患者が感染者であるか否かを問わず一律に実施する感染予防策)が実施されるべきことが制度の面からも位置づけられました。
今後も、現場での実施状況を見守る活動を行っていきます。

ペットの医療過誤訴訟判決

2018年6月29日9:50、福岡地方裁判所で、ペットの医療過誤訴訟の判決が言い渡されました(2016年2月16日提訴)。
被告獣医師は、当時8歳の秋田犬「こっちゃん」が、2014年7月当時、子宮蓄膿症にかかっていたことを否定し、診察時にも子宮蓄膿症ではないことを検査で確認していたと主張していました。
 しかし、判決は、当時、子宮蓄膿症であったにもかかわらず、なすべき検査を尽くさなかったためにこれを見落としたという獣医師の責任を認めました。
そして、こっちゃんを死亡させた被害として、慰謝料40万円と救急治療費15万5952円、ペットの葬儀費用3万8000円の合計59万3952円(及び利息)の支払いを命じました。
飼い主である福岡市内在住の63歳の女性は、「子どもがなく、夫婦二人で我が子のようにかわいがってきた。5時間と離れたこともない。額には納得できないけれども、ようやく責任が認められてよかった。」と話しました。
 民法では、ペットは「モノ」扱いであり、生命が絶たれても、当然に慰謝料(精神的苦痛を埋めるもの)が請求できるとはいえません。長い間、せいぜい3万円程度の慰謝料しか認められませんでした。この10年くらいの間に、30万円以上の慰謝料が認められる事例も出るようになりましたが、それでも、十分とは言えません。
 命ある、かけがえのないペットを失った精神的苦痛として、せめて人のけがと同じくらいの重みが認められてもよいのではないかという問題提起を含めて、慰謝料130万円を請求しました。
 責任を認めたことは正当ですが、明治時代に制定されたままほとんど改訂されない民法の大きな構造(海外では、人と物の間に、動物や遺体から取り出した人体の組織などを中間項目として独立の保護対象とするところが多い)と、ペットの飼い主の心情に生じた大きな隙間を埋めるには、まだまだ時間がかかりそうです。

 当日の日経新聞・読売新聞の夕刊、NHK,KBCの夕方のニュースで取り上げられました。
 翌日の西日本新聞朝日新聞毎日新聞の朝刊で取り上げられました。
 さらに、7/20,27合併号の週刊ポストでも取り上げられました。

監視カメラの現状

弁護士の団体から要請を受けて「監視カメラの現状」について原稿を書きました。

1 中国で広がる顔認証装置の活用
 2018年2月18日の朝日新聞記事では、上海市内のホームセンターでの、顔認証技術を使い客が手ぶらで来て手ぶらで帰れるシステムを紹介しており、概要は以下の通りだ。
 来店客は、まず顔を端末に読み取らせ、購入商品を決めるごとに、端末から商品を選択し、顔を読み取らせていく。出口の端末に顔を読み取らせると、合計額が表示され、電子マネーであるアリペイで決済される。
 2018年2月26日のNHKのウェブページのニュースも、中国の監視カメラ・顔認証技術を紹介しており、概要は以下の通りである。
 中国では監視カメラが1億7000万台以上設置されている。顔認証システムで個人を特定しており、例えば赤信号無視で横断歩道を渡ると400円ほどの罰金を課される。
 顔認証システム開発会社の担当者の説明では、このシステムで指名手配犯を3000人逮捕した実績がある。中国のATMでは、顔認証で出金でき、カードも、暗証番号入力も不要である。顔認証で、公衆便所の紙の使いすぎも見張っている。反体制派とみられる人物は、北京の地下鉄のカメラで見つかり逮捕された。反体制派とされる中国人作家は、自分たちが常に監視されていたという。神田外語大学の興梠一郎教授は、中国では、現実的に考えると、政治に関心を持ってもほとんど意味がなく、安全さや便利さを優先しがちではないか、そこで失われる自由やプライバシーとのバランスを考えていく必要がある、と指摘している。
2 顔認証データの収集・利用への歯止めを
日弁連は、2016年9月15日付けで「顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」を取りまとめ、2013年度から実施されている5都県警における顔認証装置を用いた犯罪捜査に対し、強制処分法定主義の観点から、法律により、どのような条件ならどのような捜査方法が許されるのか、あらかじめ定めておくことが不可欠であると指摘した。
現状、民間事業者による監視カメラ画像、あるいはこれをもとに生成可能な顔認証データの活用が、任意捜査の名の下で進められている。従って、民間における顔認証データの収集・利用も問題となる。
iPhone?では、本人確認機能が、指紋認証から顔認証に変更されている。アップル社によると、後者は前者の1000倍正確な認証が可能という。
2015年11月20日付日経新聞電子版によると、以下の通りである。
 ジュンク堂書店池袋本店では、2014年6月に顔認証システムを本格導入し、2015年7月中旬時点で500人の万引き犯及び、疑わしい行動をした人などの顔データを蓄積している。2カ所の出入り口に6台設置したカメラで、全ての来店客の顔を検知し、照合する。登録された顔データと似ていると、10秒ほどで保安員にメールが送信される。機械による類似度の判断は甘めに設定されており、保安員の目で同一性を確認する。
 2014年4月には、監視カメラシステムメーカーが、複数店舗間において、万引き犯人等の顔認証データを共有し合えるシステムを販売しているとの報道もあった。
 マイナンバー制度においても、個人番号カードの申請に当たって提出する顔写真から、その後顔認証データを生成し、機械的な一致度の認証をするために活用されている。
 今後、顔認証データはますます広く活用されるだろう。しかしながら、顔認証データは、指紋同様の高度なプライバシー性を有する点に十分な留意が払われているだろうか。「その監視カメラの前を通っただけで直ちに指紋を採られるのの1000倍正確な本人確認情報がとられるが、どう使われているかは分からない」ことを当然に許してよいのか、あらかじめ主権者がまじめに考えておかないかぎり、高度情報化社会においては、プライバシーは消滅するおそれがある。
中国でなされているような「政府批判の表現行為を行うもの」に対する監視に活用されないための歯止めが不可欠である。共謀罪等に対する国連からの意見表明に、政府が反対意見を出す時代において、このことを主権者が真剣に考えることが必要ではないだろうか。
3 盗聴カメラの普及と共謀罪捜査の危険
タクシーに乗ると、バックミラーの部分に、後部座席、助手席を含め、車内の乗客の動向を常時録画し、会話も録音している監視カメラがついていることが多い。
 今後、会話盗聴による共謀罪捜査のインフラとして機能する危険性が高い。
また、コンビニエンスストアでも、全店舗の店内監視カメラについて会話録音を目指すところがあったり、導入比率を上げているところもあるなど、利用客が必ずしも会話録音の状況を十分理解して同意していると思われない監視カメラが増殖している。
 同意のない会話録音は、盗聴という問題となりうるのであり、早急な法規制が望まれる 少なくとも、任意提供等で警察にデータが緩やかに渡されることには問題がある。2012年日弁連意見書でも立法の必要性は示されている。
 京都府では、民間事業者が収集した監視カメラデータを警察に提供する場合は、令状を求めるよう促しており、全国で参考にされるべきである。
4 警察権の無限定な拡大に対し、法律による歯止めを
日弁連は、2016年9月14日、大分県警別府署の隠し撮り捜査事件に対し、違法な監視カメラの設置に抗議する会長声明を公表した。
 警察庁は、2016年8月26日付けで、監視カメラを用いた捜査を任意捜査として、必要な範囲において、相当な方法であれば許されるという趣旨の「捜査用カメラの適正な使用の徹底について」と題する通達を発出した。
 上記通達は、憲法で保障されるプライバシー権表現の自由等を侵害する捜査方法を捜査機関の判断で自由に行うことを可能にするものであり、警察実務において人権侵害を日常化するおそれがあるから、撤回されるべきである。
 監視カメラ・顔認証装置、Nシステム等についても、最高裁違憲判断が出されたGPS捜査におとらない国民監視が可能である以上、適切な法の歯止めが規定されるべきだ。
 また、感情的な議論で安全のみを一方的に志向することなく、行政権特に警察権に対し無限定な拡大が望ましくないこと、民主的コントロールがなければ民主主義国家とは呼べないことなどについて、市民的な理解を広げ、実効性のある法整備が不可欠である。
 我が国の人権保護レベルは、すでに欧米から1段下がったものとなりつつある。政府ではなく私たちが主権者であり続ける努力が必要ではないだろうか。  

福岡地裁で、除斥を適用しない判決

 本日、B型肝炎訴訟で、福岡地裁は、慢性肝炎被害を受けた原告2名に対し、除斥期間の適用を排除し、請求全額を認容する画期的な判決を言い渡しました。

 原告団弁護団声明は以下の通りです。

2017(平成29)年12月11日
全国B型肝炎訴訟原告団弁護団

声 明

1 本日、福岡地方裁判所第2民事部(片山昭人裁判長)は、集団予防接種の際の注射器の回し打ちによって、B型肝炎に感染させられた被害者のうち、慢性肝炎が再発した原告2名に対し、被告国が慢性肝炎の最初の発症時点を起算点として除斥(民法724条後段)を適用すべきであるなどとして争っていた事案について判決を言い渡した。

2 判決は、以下の通り、被告国の除斥適用の主張を退けた上で、原告らの請求全部を認容した。
 判決は、
「最初の慢性肝炎発症時において、その後のHBe抗原陰性慢性肝炎の発症による損害をも請求することは客観的に不可能であったというべきである。したがって、原告らは、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症時に、HBe抗原陽性慢性肝炎による損害とは質的に異なる新たな損害を被ったものというべきであり、上記発症時に、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る損害賠償請求権が成立したものと解される。
そうすると、原告らのHBe抗原陰性慢性肝炎発症による損害賠償請求権に係る除斥期間の起算点はHBe抗原陰性慢性肝炎の発症時となるところ、原告らは上記発症から20年以内に本件訴訟を提起したものであるから除斥期間は経過していない。」
と認めた。

3 かかる慢性肝炎の再発時を除斥期間の起算点とすべきであるとする判決は、全国で初めての判決であり、同様の再発の慢性肝炎原告を含め、すべての除斥対象者に対して救済の道を広げるものである。
集団予防接種の際の注射器の回し打ちによってB型肝炎に感染させられ、何の落ち度もないのに、損害発生から20年間という長期に渡り被害を受けてきた被害者らに対し、時の経過のみをもって国の責任を免じるのは極めて不合理である。
国は控訴せずに本件判決を受け入れて、本件原告らはもちろん、再発問題に限らず、すべての除斥被害者の救済に向けて、直ちに我々との協議を開始するべきである。

4 我々は、不合理な除斥の壁に立ち向かう被害者全員の救済を求めて、全国の原告団弁護団、支援者と一丸となって闘い続ける決意である。    

以 上

監視カメラに法規制を 人権保障と自由な社会のために

 2017年9月19日、秋田さきがけ新報の朝刊に、原稿が掲載されました。
 秋田弁護士会主催の「監視カメラとプライバシーに関する市民集会」が30日午後1時半から秋田市文化会館で開かれ、講演する予定です。


 監視カメラに法規制を/人権保障と自由な社会のために


 2016年11月に、覚せい剤使用の疑いで芸能人が逮捕された。逮捕直前に乗車していたタクシーの車内映像がテレビ各局に提供され、報道された。「手前で降ろしてください」。自宅へ向かう車中の被疑者の声は、はっきり聞き取れる。皆さんは、多くのタクシーの中で、乗客の姿が録画され、会話も録音されていることをご存じだろうか。
 コンビニエンスストアでも、客の行動だけでなく会話も録音しているところが多い。
 現在、日本には約500万台の監視カメラが設置されている。そのほとんどは、すべての人を無差別に常時録画する。音声を録音するものも増えているが、法規制は特にない。
 14年度には、監視カメラのデジタル画像から人の「顔」を探し出し、あらかじめ警察が作成している「顔」データベースと瞬時に照合する「顔認証装置」が全国5都県の警察に導入された。顔の中から特徴点を解析し、顔を指紋のように検索して、探したい人をさまざまな時点、さまざまな場所の画像から瞬時に探しだすことができる。そのルールを定めた法律はなく、濫用(らんよう)をチェックする仕組みもない。
 16年8月には、大分で、選挙活動中の団体に向けた隠し撮り捜査が行われたことが発覚し問題となったが、警察庁は隠し撮り自体は問題がないとして今後も行う方針だ。


 自由に通行してよい街頭への監視カメラの設置について意見を聞くと、賛成が圧倒的だ。理由の多くは、「防犯効果があるから」。
 果たしてそうか。10年に川崎駅東口路上に設置された監視カメラによる防犯効果が警察庁ホームページに報告されている。犯罪が、カメラの設置場所からその周辺に移動しただけで全体としては犯罪は減らず、防犯効果がなかった可能性が指摘されている。
 監視カメラの画像が犯人検挙のきっかけになることはまちがいない。しかし、警察庁は「それで犯罪が減る」証拠を示せない。多額の税金を投入し、無数の罪のない市民の行動を記録し続け、その効果が、犯罪の場所が周辺に移動するだけで、全体として犯罪が減らないとしても、カメラは役に立っているといえるだろうか。
 共謀罪法案のように、「防犯」「テロ防止」と打ち出される政策は支持を得やすい。しかし、防犯目的なら、何でも「よい政策」だろうか。
 今年3月、最高裁は、広島の元アナウンサーの窃盗事件について逆転無罪判決を出した。銀行の監視カメラに映っていた画像を決め手として、地裁、高裁で有罪判決を2度も受けていた。捜査での活用拡大に伴い、監視カメラ画像によるえん罪も年々増えている。


 裁判所は警察捜査をチェックする役割を負う。憲法は、犯罪検挙だけを社会に有益なものと見なすことなく、常に捜査対象者の人権保障を図りながら捜査をするよう、警察にブレーキをかけている。逮捕や家宅捜索に裁判所の令状が要求されているのも、「強い」捜査方法を、警察が自由自在に行うことを禁止することでしか、市民の人権や自由な社会が守れないからだ。
 同じく今年3月、最高裁は、被疑者等の自動車に密かにGPS発信器をつけてその移動を継続的に把握するGPS捜査を、法律がなければ許されない強制捜査と位置づけ、法律なく実施した捜査で得た証拠を無効とする判断を裁判官名の全員一致で示した。
 監視カメラもデジタル化により、録画データの保存が大量かつ安価にできる。民間企業が撮影した監視カメラデータは、裁判所の令状によらず大量に収集されている。
 警察が、目をつけた人物の顔認証データを用いて、「過去から未来まで」その行動を捕捉することも不可能ではない。会話内容まで収集されれば、「よからぬことを計画していないか」と、共謀罪捜査を理由にした政府批判者に対する監視すら懸念される。
 日弁連は、2012年と16年に、監視カメラ、顔認証装置を用いた捜査手法に対し、ルールの事前明示と第三者の監督を法律であらかじめ定めるべきだと提言している。京都府は、民間事業者に対し、監視カメラデータを警察に提供する場合に原則として令状を求めるようガイドラインで呼びかけており、全国で参考にすべき取り組みといえる。
 大量監視型の新たな科学技術に基づく捜査方法に対して、民主主義的なコントロールを確保することが、人権保障と自由な社会を守ることを使命とする弁護士会、ひいては裁判所も含めた司法全体が市民に対して負う社会的責任であると考える。

パブリックコメント(顔認証ゲート先行導入について)

2017年8月3日、日本弁護士連合会情報問題対策委員会の有志9名で、下記の内容のパブリックコメントを提出しました。
 顔認証システムを、希望する日本人が帰国する際に、入国審査で利用して、職員の省力化を図ると言うことに関する省令改正に関連する意見です。
 希望しない人が勝手に使用されなければ問題はないといえますが、その任意性が守られるための運用上の条件があること、また希望する利用者が不測の濫用被害を受けないための名文規定が必要であるということがその骨子になります。


1 顔認証ゲートを利用しない者に不利益を課さないこと
 顔認証ゲートを利用した日本人旅行者の帰国手続の簡便化は、同ゲートの利用が任意であることが適切に告知されたうえで、同ゲートを積極的に利用したい者のみがあらかじめ同意して参加する限り、プライバシー権侵害の問題を生じないと思われる。
 顔認証ゲートの利用が任意であると言うためには、それを利用しないことを選択することで不利益を受けることがないようにする必要がある。
 それゆえ、たとえば、現状おおむねスムーズに行われている入国審査について、入国審査官の配置を減らした結果、顔認証ゲートを利用しない日本人旅行者の入国手続が著しく遅延し、顔認証ゲートを利用しない場合には事実上の不利益を受けるような事態に至ってはならない。
このことが、任意の利用と言える状況を確保するために最低限必要である。

2 装置の精度について、情報が公開されるべきこと
 空港の出入国審査を迅速化するための顔認証装置の実証実験の結果、2012年の実験では精度が低かったためいったん導入が見送られたが、2014年の実験で十分な精度が得られたため導入される予定という。
 顔認証装置の精度については、低ければ誤認が生じやすいが、高ければ高度な監視に応用でき、プライバシー権侵害につながりうる。
 したがって、今後も、顔認証装置の精度については、適宜、適切な情報公開が行われていくべきである。

3 省令による目的外利用・第三者提供禁止規定の明記
 パスポート申請者が持参した顔画像データ(顔写真)から生成される顔認証データが、指紋同様の精度を獲得する場合、単なる顔画像データ(顔写真)であっても、本人識別のための高度のプライバシー性を持ちうる。
 したがって、監視等他の目的で利用されないためには、顔認証データ及び顔画像データの目的外利用や第三者提供がなされないよう、省令において明確に定められるべきである。
                                以 上」

B型肝炎除斥事案に対する判決日の指定

2017年7月24日11:00に、福岡地方裁判所で、B型肝炎九州訴訟の口頭弁論が行われました。36名の原告の和解が成立しました。
 また、慢性肝炎の原告に対して、国が除斥期間の適用を主張している原告番号30番、403番さんに対する弁論が終結され、判決言渡期日が12月11日13:10に指定されました。
慢性肝炎の被害者のうち、最初に慢性肝炎を発症した後、セロコンバージョン(HBe抗原が陽性から陰性となり、HBe抗体が陰性から陽性になること)がおこったにもかかわらず、その後慢性肝炎を再発した方に対しては、再発時を除斥期間の起算点とし、それから提訴までに20年を経過していなければ、損害賠償請求を認めるべきだということが争点です。
 30番さん(2008年)も403番さん(2012年)も、弁護士に電話をして、初めて自分が被害者であるとわかり、裁判を起こしました。しかし、その時点では、慢性肝炎の「最初の発症」から20年経過しているので、国は、自分が加害行為を行った被害者である可能性が相当高いと認めながら、償う義務がないと主張しています。
除斥期間とは、不法行為B型肝炎訴訟の場合、国の不衛生な集団予防接種の実施)から20年たったら、損害賠償請求ができないという考え方(民法724条後段)です。不合理な場合が多いので、その後の最高裁判例で様々な修正が加えられています。民法改正案では、廃止される予定になっています。
 無症候性キャリアから、「慢性肝炎」、「肝硬変(軽度)」「肝硬変(重度)」「肝がん」「死亡」と、被害が重くなるたびに、除斥期間の起算点を繰り下げることが認められます。同じ肝硬変でも「軽度」と「重度」とで起算点が異なる様に、また、同じじん肺で「管理区分2」と「管理区分3」とで起算点が異なる様に、慢性肝炎でも「初発(HBe抗原陽性慢性肝炎)」と「再発(HBe陰性慢性肝炎)」とで起算点が異なることが認められてしかるべきです。
 全国のB型肝炎弁護団原告団が注目し、弁論のたびに各地の代表弁護士が意見を述べています。
 裁判所の判断にご注目下さい。